ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 四方山話します

長い洞停止で終わる発作性心房細動PAfがありました(前回の続き)

前回の記事「発作性心房細動はこのように始まって終わる」を書いてる間に、解析したホルター心電図の中にPAfがあって、その終わり方が長いSinusArrest 洞停止で終わるのがありました

下図のホルター心電図は、3チャンネルで連続した1段7秒です

誘導は、CH1:CM5、CH2:NASA、CH3はCH2⊕極とCH1⊝極間誘導(なので、Ⅰ誘導のような感じでしょうかね)

 

f波ははっきりと見えませんが、P波は無いしRR間隔が不整で138BPMなので、心房細動と考えていいと思います

下図1段目で突然心房が約4秒間停止してます

間に細かいのや基線の揺れのアーチファクトが入ってたりしてるので、この停止はアーチファクトによるものかと一瞬疑いますね

これがホルター心電図の嫌らしい所(難しいところ)ですね

この場合は、基線の小さな揺れもあるしノイズが過大入力して基線が戻った状態でもないので、これは洞停止とみていいと思います

この停止の長さは、これもオーバードライブサプレッションというんでしょうかね?

なにか異なった機序が働いて洞調律が抑制された?

かなり長い状態もあるものですね

その間、補充収縮も起こらなかったようですが、洞停止後の最後ではP波のないR波に続きf波が乗った2拍のR波がでてます

停止後初のR波は、いよいよ補充収縮となって房室接合部から出てるようですね

(先行するP波がないしQRSは上室性のものだし・・・)

停止後3拍目は洞調律によるかどうか判然としませんが、ここでちょっと休んでこの後は洞調律に戻ってます

ただ細かく見ると。PQ間隔が一定ではありませんしPP間隔もやや不整ですね

これは、心房から刺激が出たとすれば房室結節の伝導時間が変化したか、または房室結節から刺激が

出たとすればその発生場所が動いたかな、と推測されます

が、実際のとこ分かりませんです

 

記録開始(午前9時頃)から既にPAfになっていて、約2時間後に停止しその後記録中には発作が出ることはありませんでした

72才、女性、Af時MaxRate 183BPM、MinRate 91bpmでした

PAf時間帯以降は、平均 67bpm でした

 



発作性心房細動はこんなふうに始まり終わるのかぁ

ホルター心電図では得意な適応である「発作性心房細動 PAf」について見てみましょう
なんで得意かって言うと、
先ず、発作性心房細動ですが、これは「発作性」というぐらいで、慢性でも持続性でもない心房細動でいつ、どのぐらいの間 起こるかわからないので安静心電図では捕まえきれない場合が多いと思います
なので24時間生活の中で心電図記録するホルターでこれを捕らえれば、どの時間帯で、どのくらいの継続で、どんな頻度で、どんな心身状態のときに起きてるかが比較的容易に捉えることができるので、得意な検査と言ってもいいのではないでしょうか
もちろん、24時間では捉まえきれない場合も多いとは思いますが、PAfが短時間で頻繁に発生してる場合被検者の動悸などの訴え(行動記録表或いは行動記録表などによる)も多いように見受けられので、発生してればかなり診断治療に有効かと思われます

 

慢性ではないのでホルター心電図記録中に心房細動を起こすわけですが、その始まりや終わり方にはさまざまあるようです

洞調律から突然細動が始まって洞調律に何事も無かったかのように終わる例もあれば、徐々にPAC単発や連発を繰り返しながら次第に細動になってゆくような事例など

 

では実際に記録したPAfの事例を見てみましょう

まずは、洞調律から突然PAfになって、突然洞調律に戻る例です

68才男性、記録中では夜中の0時頃から3時間ほど一回だけ発生しました

下図は、PAf始まりの心電図です

P波は見えなくなり小さなP波がぽつぽつと出てくるようです

細かなf波が基線上に現れてきました

RR間隔も不整になり心拍数HR125bpmほどになってる心房細動ですね

PAf開始 CH1:CM5、CH2:NASA

下図は、約3時間後のPAf終わりの心電図です

心房細動後には約1秒ほどの、休止期を経て何事も無かったかのように洞調律に戻ってます

この長い休止期は下で書いてますが、「オーバードライブサプレッション」という現象と思われます

リズムはこの後も安定的に洞調律でした

 

PAf終了

 

次の例は、24時間にPAfが何度か発生し、その始めと終わり方が色々と出てくる例です
被検者は、70才、男性、バイタル、既往歴など不明で、夕方16時頃から24時間記録しました
まず、24時間のトレンドグラフを見てください

ホルター解析のトレンドグラフの中でも、RRインターバルトレンドは、心房細動をや不整脈などの連結期の変化を端的に表してるので、特に心房細動のトレンドには特徴的なものが有ります

下図の2段目がRRインターバルトレンドです

インターバル検出の詳細なアルゴリズムはわかりませんが、RR間隔を縦軸に横軸に時間をプロットしていったものです

心拍数が大きくなればインターバルは短い方へ、心拍数が小さくなればインターバルは長い方へプロットされま、心拍数トレンドグラフと対応すると、プロットの上下関係がRRトレンドグラフとシンクロしてますね

PACやPVCが頻発すれば、インターバルは連結期は短く休止期は長いので、基本心拍数のインターバルの上下にプロットされます

洞停止や洞房ブロック、Ⅱ°房室ブロックなどでRRインターバルが延長すれば、基本心拍数のインターバルプロットの上方(このグラフの縦軸のとり方の場合)にプロットされることになります

では実際のものを見てみましょう

インターバル1秒の付近が太線状になってるので基本的には60bpmぐらいの心拍数ですね

その上方にある太線状のプロット、1.8秒ぐらいで推移してますが約30bpmの徐脈です

上下に、同様の太さと濃さのプロットは、30bpmと60bpmが交互に現れることを表してます

その下0.5秒ぐらいのところにあるプロットはPACに発生によります

(PAC単発のトレンドグラフとRRインターバルトレンドグラフを対応させてみて下さい)

 

トレンドグラフのある時間帯で、基本となるインターバルに対しランダムに変化するプロットがあります

これが、心房細動のRRインターバルトレンドグラフのパターンです

基本となるインターバルがあって、かなりの頻度でランダムなインターバル変化が起こってることが分かりますね

その時間帯の心電図では、はっきりしたP波が無くて300BPM以上で不明瞭な基線の振動(細動波:f波)があり、心室性ではないQRSによるRRインターバルが不整になってます

f波と思しき波は比較的ゆっくり規則正しく出ており一見粗動波(F波)にも見えますが、f波間で基線に戻る様子も見えることから、粗動波F波の場合だったら基線に戻ることなく波が現れると思いますので、これは細動波(f波)と考えられます

    *細動波と推定しましたが、この知見にもしかして誤りや不足があればご指摘をお願いします

 

図のPAf1、PAf2、PAf3の時間帯で突然に、ある継続時間をもって心房細動が発生してるので、発作性心房細動PAfということになります

 トレンドグラフ

【 PAfの心電図 】

  下図の心電図は、2誘導記録でCH1:CM5、CH2:NASA、紙送り25mm/s

  1段当たり6秒で連続した24秒の心電図です

 

  ①時間帯PAf1の終わり

    16:45記録開始から約1時間でPAf1終わりの心電図

    80bpm位のHRで突然停止し(理由は?)、約2秒後に洞調律が再開してます

    この機序は、オーバードライブサプレッションという現象のようです

    これに関する知見がなくて正確なことはわかりませんが、f波(心房細動波)が洞結節に

    逆行して連続して刺激をリセットしたため洞機能が抑制されるためということらしいです

    洞結節が分極してるところに逆行性刺激が次々とに入りマイナス側に電位を引っ張っている間に

    刺激が突然停止したため、脱分極に向かうも少々時間がかかってるというイメージでしょうかね

    PAf終了後は、ほぼ洞調律に戻り(でもRR間隔が少しずつ短くなってますね)、

    偶にPACが出てますね

    f波は出なくなったけど、洞調律が不整のままだったり、PACが多発するような事例も

    多いようです

 

 

 ②時間帯PAf2 PAfの始まり

  下図の、就寝中4:30から2回目のPAfが始まってるように見えますね

  下図2段目、このPVC、1発目と2発目ともに洞調律のPP間隔でP波が見えてるので代償性休止期の

  PVCですね

  2発目のPVCの後にはR波が1拍出て、その後間隔の等しいR波が3拍続きます

  その間には間隔が一定のP波が3拍見え(3拍目だけは4つ)、PQ間隔が同じで3:1で

  伝導してるように見えませんか

  R波の4拍目以降はPQ間隔がランダム(不整)となって洞調律の体をなしていませんよね

  RR間隔だけ見ると、よく見かける心房細動 Afのような心電図となりますね

  P波の出方に着目すると、この後もP波は同一間隔(多少変化してますが)で出ているようで

  (下図4段目 「レ点」に注目)、このP波は等間隔で出て且つPP間は基線に戻ってるので、

  心房細動f波や心房粗動F波とは何か違うように思えませんか?

  そこで、こう考えてみます

  心房の調律はP波で、300bpm位ですね

  なので心房頻拍PATとは考えられないでしょうか

  PVC後の最初の4拍のR波は3:1伝導で脱落を有するPATで、その後は、3:1~2:1伝導のPATだと

  考えられませんか

  「レ点」の後は、P波は基線に戻ることなくf波となり、PQ間隔が不整となりRR間隔も不正になって

  Afに移行したのではないかと?

 

 

  ③時間帯PAf2 PAfの終わり

   2回目のPAfは2時間継続して終わりました

   PAfの終了から次の洞調律まで約1.6秒の洞停止がありますが、オーバードライブサプレッション

   ですね

   その後は洞調律に戻ってます

   でも、そのRR間隔がほぼ少しずつ短くなっていきPACで少し戻ってますね

   このことは、実はPAf1の終わり方と同じだったんですね

   そしてPAfの最後のR波は洞調律のR波と同じに見えてきませんか

   (P波形状、PQ間隔、QRST波形状が同じように見えます)

   すると、最後に洞結節からの刺激でAfを止めたと・・・?

   この機序はちょっと想像がつきませんですね

   Afで疲れた心臓を一旦休ませて、徐々に本来に戻してゆくってイメージでしょうかね

   *これについてもし知見のある方に是非ご教示していただきたいと思います

 

 

  ④時間帯PAf3 PAfの始まり

   3回目のPAfは11時近くで発生し記録終了まで続きます

   トレンドグラフによると、PACはぐっと減りPVCが増えてるようですね

   PAfになるとPVCが増える?

   ひょっとして、変行伝導の可能性はある哉もしれませんね、よく見てみましょう

   これについては後で詳しく見てみますが、今はPAfの始まり方に注目しましょうか

 

   下図では安定した洞調律に続いて、4拍目で異所性P波によるPACが起こります

   P波がT波に乗るぐらいのタイミングなので房室結節は不応期直後でPQ間隔が延びて、

   右脚が相対不応期に架かって右脚ブロック(RBBB)状で変行伝導の様です

   次の洞調律による5拍目のR波が出るとその後に異所性P波が続いてます

   そこでR波が出ると思いきやP波が2発連続で出てきましたよ

   でも今度は、R波はブロックされて2連発のP波となりました

   R波の6拍目、7拍目、8拍目(下図2段目)もこれと同様なことが起きていて、P波の連発数は

   違いますが、PP間隔が同じで形状も同じでPP間は基線に戻ってるので、

   心房頻拍PATと思われます

   この後から、同じPATと思われる3、4段目ではP波に何らかに対応したR波が見られますね

   このP波に対応したR波がないのとあるのではなにがどう違うのでしょうか?

 

   それを考えるのに、先ずP波に対応したR波が出てる下図3、4段目のPAT(と考えられる)

   P波について見てみましょう

   3段目、4段目の図示を見てください

   「矢印」はP波が伝導したR波で、「×」はR波がブロックされたP波を表してます

   まず、洞性P波がでてそれに対応したR波(矢印)が出てます

   次に異所性P波P1がでてPQ間隔が相対的不応期により延びて、その先に対応したR波(矢印)が

   出てます

   このP1とR波の間にP2がありますが、房室結節(或いは心室側)でブロックされて

   これに対応するR波は出てませんね

   PATによるP3以降も同じような機序でP波~R波が繰り返されてます

   さて、話は前に戻って、これに対してR波の出ないPATはどういう機序でしょうか

   P波が出てるのにR波が出ないのは、房室結節でブロックされる場合が一番考えやすいですね

   であれば、3度AVブロック 又は 房室解離が突発的に起きたと

   同じPAT(と思われる)なのに、R波が出る場合とでない場合があるのは何故?

   途中で異なる2つの現象が起こる理由は、何故?

   この機序は、わからないというのが本当の所です

   *この機序について知見をお持ちの方があればぜひご教示いただきたいと思います

   

 

  ⑤時間帯PAf3 PAf途中

    PAfの途中としてますが、上図のPAf始まりと同じような動きですね

    洞調律に続く数発のPATの繰り返し、そして連続するPATによるランダムなRR間隔は心房細動に

    なってるといえるでしょう

 



  

リターンサイクルについて詳しく見てみる

前回、ラダーグラムを使って不整脈の出現機序を見てみましたが、今回は刺激のタイミング関係をもう少し詳しく、「リターンサイクル」についてみてみます

 

ところで、「リターンサイクル」という概念は心電図の教科書的な本などではあまり見かけない印象がありますね

自分にとっては期外収縮や変行伝導の出現機序やその判断を考えるのには必須といってもいいほど利用してます

不整脈を理解しやすくするので、是非とも積極的に使ってみてください

 

さて、今回の本題です

下図の心電図は、単発のPACですね

心電図上には、各波のタイミン関係を書いてみました

その下にラダーグラムを置いて、同じタイミングチャートを書き加えてみました

前にも言いましたが、タイミングチャートやラダーグラムに決まった様式はないので自己流で書いてますよ

 

ラダーグラムは、上からSinus:洞結節、Atrial:心房、AtrialーVentricular:洞房結節、Ventricular:心室の興奮領域のセグメントを表してます

下図の赤丸は刺激発生点(stimulus)で、Sは洞結節で発生する洞調律の刺激で、S′及びS''は心房から出た早期刺激です

刺激は心房に向かい、P、P’、P‘’はそれに対応した心房波でラダー図では青色四角図形で表してます

心房波から矢印は房室結節を通って心室へ達し心室を刺激します

心室波は黄色四角図形で表してます

矢印線は刺激伝導を表し、傾きは速度を表すことになりますね

Sinusセグメントの「リセット」マークは、心房からの早期刺激が、洞結節にチャージ(充電)された刺激電位をリセットすることを表します

 *以前に、「リセット」と「放電」を、”電位が無くなる”意味で同義語として使いましたが厳密に言えば「リセット」は、”強制(外部)的要因により電位が無くされる”ということであり、「放電」は、結果として電位が無くなる”という意味で今後は使いたいと思います

この現象は次のように疑似的に考えるとわかりやすいと思います

洞結節では、通常、刺激電位の充電がある程度上昇し閾値(放電閾値)を超えると外部に刺激を出して放電し電位が無くなると考えます

その後再び、次の充電が始まり電位が閾値を超えると再び放電します

これを繰り返して洞調律が行われると考えます

因みに、繰り返しの周期は充電速度と放電閾値によって決まると推測できますね

ここで、洞結節では刺激のチャージ途中(放電閾値に達する前)に外部から刺激が入ってくると、それまでチャージした電位を放電してしまいます

これを、「洞結節刺激のリセット」と呼びましょう

一度リセットされると、電位は無くなったものとなるので洞結節は再び刺激電位を、洞結節周期で決められた速度でチャージし始めます

 

さて、心電図上のタイミングチャートを見てみましょう

通常の洞結節刺激から遅れること0.1秒(洞房伝導時間)でP波が出てます

この値は後に書いてますが、リターンサイクルから計算してます

S~SとP~Pの各々の間隔は、SS間隔及びPP間隔です

3つ目のR波とその後に出たPACを見てください

3つ目のP波が出た後本来ならPP間隔を経て次のP波が出るはずでした

しかし、次のP波が出る前に、心房からS′が発生しP’となる一方S’は逆伝導して洞結節のそれまでチャージ(充電)していた刺激電位をリセットして放電させてしまいます

その後洞結節は再びSS間隔でチャージを始めます

しかしその途中でまたもや早期刺激S''が発生しp’’となり逆伝導して再び洞結節のそれまでチャージ(充電)していた刺激電位をリセットして放電させてしまいます

その後洞結節は再び刺激チャージをはじめますが今度は早期刺激がでないのでリセットされることなくS’’の後にSS間隔(=PP間隔)を経て次の洞結節刺激SによるP波、QRS波と続きます

これを見ると、最初のPACに続く次のP波(P’’)は通常の洞結節刺激によるものと一見見えますが、実はちょっと早く出てる心房性の早期刺激だということが分かります

 

前にも書きましたが、PACの早期刺激によるP波と次の洞性刺激によるP波の間隔をリターンサイクルと言います(本当は、SS間隔で言いたいところですが心電図上にS(刺激点)は見えないのでPP間隔にしてると思います)

このリターンサイクルの長さは、

PP間隔を””PP””、S’’とR2間隔を”S’’R2”、SとP間隔を””SP”” とすると

 リターンサイクル=PP+ S’’R2 +SP

となりますね

ここで S’’R2 とSPは、洞結節と心房の間を伝導する時間で同じものなので

 リターンサイクル=PP+2SP

SPはいわゆる「洞房伝導時間(SACT)」なので

 SACT=(リターンサイクルーPP)/2  で、リターンサイクルから洞房伝導時間が分かることになります

図の心電図の場合は、計算するとSACT:0.1秒ですね

これがタイミングチャートを作るときに仮定したSACTですね

 

このように期外収縮を見るときに、その出現機序をリターンサイクルのチェックで行うと刺激、P波、R波のタイミング関係が整然としてきて理解しやすくなることが分かると思います

 

さてここからが、経験則の話(エビデンスはまだありませんが・・・)になるのですが、

早期刺激による波形が洞結節のリセット現象を起こしてるかどうかをおおよそ見分けるのにいい方法があります

それは、「先行の(洞結節刺激による)PQRS波の、PP間隔+PQ間隔は後続する期外収縮のリターンサイクルに、大概の場合ほぼ同じ」と言うものです

何故なら、PQ間隔は正常値0.12~0.2秒で、中間値は0.16秒

その1/2は0.08秒でこれがSACTに匹敵してると思われます

SACTの正常値は通常0.15秒以下と言われてますから

すると、強ち間違った経験則というわけでもないと思うので、P波やR波の形状を含めて考えると早期収縮の刺激が心房なのか心室起源なのかの区別ができ、簡便に見分ける方法として重宝してます

 

ただ、ホルター心電図で多くの事例を見てると、上記の心房からでた逆行性刺激は、何故かわかりませんが洞結節に向かって逆行しても途中でブロック(刺激消失)されて、洞結節刺激に影響与えてないように見受けられる現象がたまにあります

ひょっとして、外部からの洞結節に伝導する刺激の強度に依るのかもしれませんね

つまり、洞結節の充電電位がまだ低い時にこれより高い電位の外部から刺激電位が入ってくると電流は高い電圧から低い電圧の方向に流れるので、低い電位の洞結節ではそれまで充電された電位がリセットされるのかもしれません

また逆に、洞結節に入ってきた外部からの時、刺激電位が洞結節の充電電位より低くければ電流は洞結節から外部刺激電位の方に流れるので外部刺激電位はリセットされ刺激がブロックされた様に見えますね

この現象が起こると、逆行性P波は洞結節に影響を及ぼしてないよう(なぜこのようなことが起こるかは、これに関する知見がないのでわかりません

   なぜこのようなことが起こるかは、これに関する知見がないのでわかりません                                                    どなたか、わかる方いればぜひご教示願いたいと思います                                                  また、後で改めてこれを取り上げてみたいと思ってます)

  

リターンサイクルのタイミング解析

もし良かったら、試してみては如何でしょうか

リターンサイクル+ラダーグラム_PAC  CH1:CM5 CH2:NASA

 

PVCを詳しく見てみる(その4 多源性VPC)

「PVCを詳しく見てみる」 その4は 多源性PVCについて見てみましょう

PVCはそのフォーカス(発生起源)が一つならR波の形状はほぼ同じになるし、複数であれば

その形状は各々違ってきますね

一つなら「単源性」、複数なら「多源性」と呼びぶようです

複数の場合、何種類から多源性と呼ぶのかは、その知見を持ち合わせてないのでわかりません

自分が考えるには、3種類以上で発生割合が最多の形状の拍数の10%位以上あれば、多源性と

呼べるのではないかと思ってます

(知見ある方に教えていただきたいところです!)

多源性PVCは各々に異なったフォーカスなので、それらに応じた刺激伝導系がありR波やT波の

形状が違ってきます

また、発生タイミングにより休止期も各々で違ってくる場合があります

 

では、実際の心電図を見てみましょう

 

A(A1~A3)は同一被検者の異なった時間に発生した単発のPVCです

B1はAとは違う被検者の心電図で、単発の多源性PVCも発生してますが、連発が多源性で発生した

ものです

 

Aは、24時間で10数回程の散発PVCで、A1のモフォロジーが半分以上で、A2、A3のモフォロジー

数発ずつでした

何れも代償性休止期を持つPVCで、洞結節によるP波が見え隠れしてますね

Aの特徴は、時間とともに波形変化があって、R波の波高が漸次減少しS波が深くなってます

そう、下方軸から上方軸へと変化していってるんですね

 

最初のA1のPVCは下方軸で両CHともR波だけのようで、V1誘導がないので判然としませんが、

R波のCH2:NASA誘導を見ると、起電力ベクトルは始めに左室側に向いていて、後半はダラダラと

下がってるので左室から右室にベクトルは向かってるようです

なのでフォーカスは左室流出路辺りが起源と推定します

(この考え方如何でしょうか?)

  *起電力ベクトル

    R波などの心電図波形の成り立ちを考える時、心筋で起きている起電力の大きさと方向を表す「起電力ベクトル」の

    考え方を用いると理解が進むと思います

    要は、ある場所とある時間に心筋で発生する起電力の大きさと方向です

    あとで詳しくご紹介したいと思います

 

次にA2のPVCはどうでしょうか

形状は右脚ブロックパターンですね

最初の波高値の小さなR波が両CHとも上向きで下方軸

ベクトルは左室側に向うようです

その後、両CHとも大きいS波となり上方軸で起電力ベクトルは上向きに大きく左室・中隔の方に

向かうように見えます

更にその後は、CH1:CM5誘導は緩やかに基線に戻り、CH2:NASA誘導はr′波がでて緩やかに右室側へと

向かいます

結果右脚ブロックのようなパターンとなるので、このPVCのフォーカスは左室心尖部付近あると

推定します

(この考え方如何でしょうか?)

 

次にA3のPVCはどうでしょうか

R波は両CHとも深いQSパターンの下向きで上方軸ですね

ベクトルは上側に向ってますのでフォーカスは心室側にありそうです

R波の変化はないので、起電力ベクトルは左室右室同様に刺激伝導してるように見えます

なので右室下部から左室に上方に向かう沿ったようなこのPVCのフォーカスは右室心尖部付近にあると

推定します

(この考え方如何でしょうか?)

 

さて、B1の心電図はどうでしょうか

3連発PVCで、フォーカスの異なるのが3連続してますね

形状的には、漸次R波高が減少しS波が深くなってゆくR/S比が変化するパターンです

因みに、PVCのP波を見ると逆行性P波があり、3連発の最後のV波による逆行性P波はリターンサイクルを

有する非代償性休止期のPVCですね

1拍目のV波の起電力ベクトルは緩やかに上方から左室へと向かってます(なんか、Δ波のように

見えてきますね)

その後、左室を横切るような方向にベクトルがあり、左脚ブロックパターンですね

なので右室流出路がフォーカスのPVCと推定します

ここで、別な見方もできますね

CH2:NASA誘導のr波が低いので起電力が小さいので、これは右心室内で発生した起電力と考えると、

心室心尖部がフォーカスのものとも考えられますね

(この考え方如何でしょうか?)

 

2拍目のV波は、ほぼ右脚ブロックパターンですね

R波が大きく出て起電力ベクトルは左室に向かってます

その後CH1:CM5誘導は緩やかなS波でCH2:NASA誘導は緩やかに基線に落ちてますね

これは左心室から緩やかに右室側に起電力ベクトルが向いてるのを表してます

なので、これは左室流出路にフォーカスを持つPVCと推定します

 

3拍目のPVCはどうでしょう

2拍目よりさらにR/S比が小さくS波が深くなってます

最初の低いR波が左室側にベクトルが向いて、次に大きいS波で上方軸となり右室方向に起電力ベクトルが

生じます

これは、左室心尖部にフォーカスがあるものと推定されます

 

3連発のPVCは、何らかの原因で異なった心筋から連続して刺激が発生したものです

 

multifocalPVC CH1:CM5 CH2:NASA

 

ラダーグラムを使うと、不整脈の出現機序が解った気がする! 

不整脈の出現機序を考えるとき、ラダーグラムという方法を使うと、「この心電図はこうだったんだなぁ」などと意外にすっきりと分かったような気がすることが多いです

実際の心電図を基にタイミングチャートのようなものを作るので、時として知識不足で無理やりこじつけみたいなこともありますが、まあ大体あってるのではないかと思って使ってます

 

ラダーグラムの書き方には、これだって言う決まりはないそうです(と、不整脈の先生が言ってましたから)

なので、

自分の都合よくわかりやすい図を作ってみます

下図を見てください

基本は、縦方向に、刺激伝導系の順番の構成ですが、伝導時間発生する場所は縦軸に幅を持たせます

洞結節(Sinus) → 心房(Atrial) → 房室結節(Atrial-Ventricular Node)

 → 心室(Ventricular) 

横方向は、時間軸となります

 

心電図を用意し、心電図の各要素のタイミングに合わせてラダーグラムに、洞結節、心房、房室結節、心室の伝導する時間関係を書き込んでいきます

洞房伝導時間は、初めからわからないので何らかの方法で推定します

(その方法は後で紹介したいと思います)

すると、下図のようなチャートが出来上がりますね

Sinusは洞結節で、赤い丸は洞結節からの刺激です

Atrialの青い四角は心房の興奮、P波を表します

Ventricularの黄色の四角は心室の興奮、QRS波を表します

矢印は刺激の伝導を、傾斜は伝導時間を表します

不応期を考える必要がある場合は、それも入れておきましょう

 

では心電図をラダーグラムで見てみましょう

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先ず、上段の2連心室性期外収縮PVCです

始めからの3拍は、洞結節から出た刺激が心房へと進みP波が出ます

洞房伝導時間として0.1秒を仮定してます(話が前後逆になりますが、このPACのリターンサイクルを計測し洞房伝導時間が分かります)

刺激は心房を通り房室結節を経て心室へと到ります

房室伝導時間は、PQ間隔 0.2秒ですね

さて、洞結節の3拍目の後に早期収縮の心室v波が発生しました

すると逆行性の刺激が心室から房室結節を逆行し心房へと到ります

伝導時間は順行時と同じく0.2秒と仮定します

一方、最初のVの後から4拍目の洞結節刺激によりP波が出てます

心室からの逆行性刺激が心房に到達する時点では、すでに心房が興奮してるためこの刺激はリセットされ上位では影響を受けません

続いて後続のⅤ波が発生しました

これも、心室からの刺激が房室結節を逆行しようとします

しかしながら、これもリセットされてしまうでしょう

その理由は2つ考えられます

①1つ目の心室からの逆行性刺激によって発生した房室結節の不応期のため逆行できなかった

②房室結節の不応期を過ぎてたとしても、心房の不応期になっていた

(この何れか或いは両方なのかもしれませんが、更なる知見を持ち合わせてなくてはっきりしたことは言えません、推測なので悪しからず!)

そのため、後続のVも上位には影響を与えず、代償性休止期(連結期と休止期間隔は先行する洞結節刺激間隔の2倍)を有するPVCとなる出現機序が分かりますね

 

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次に、下段、2段目の2連上室性期外収縮PACを見てみましょう

始めから4拍目までは通常の洞結節刺激です

洞房伝導時間として0.1秒を仮定してます

(話は前後逆になりますがこの心電図でリターンサイクルを計測し洞房伝導時間が分かります)

5拍目の洞結節刺激が出る前に、心房の何処かで早期に刺激が出てP波が発生しました

心房以下の刺激伝導経路は通常通りです

ここでいつもと違うのは、上位方向に対してです

心房から出た刺激は下位へ向かうのと同時に洞結節へ逆行し、其処で5拍目としてチャージ中だった洞結節刺激をリセットしてしまいます

この時点からまた洞結節刺激はチャージを始めるのですが、続けてPAC2発目が発生してます

この時の逆行性刺激がまた洞結節に向かい刺激をリセットし、そこからまた洞結節は刺激をチャージし始めます

そこから、先行する洞結節の刺激間隔を経て、5拍目の洞結節刺激がでて心房へと到ります

PAC2発目によるP波と次の洞結節刺激によるP波の間隔を「リターンサイクル」と呼びます

リターンサイクルと、洞結節刺激によるP波の間隔(PP間隔)の差は、期外収縮の刺激が洞結節に到る時間と洞結節刺激が心房に伝導する時間(の合計)となります

この差の半分の時間が洞房伝導時間(SACT)と言われます

この心電図の場合計算すると(s:秒)、リターンサイクル 0.88s ー PP間隔 0.68s

= 0.2s  洞房伝導時間 0.1s となりますね

 

出現機序がなんとなく見えてきましたよね

おやこれ??っていう心電図を見たら迷わず コレで!

 

ラダーグラム CH1:CM5 CH2:NASA



PVCを詳しく見てみる(その3 間入性期外収縮の場合)

PVCをその発生するタイミングで分類すると、代償性、非代償性、それと今回の「間入性」があります

間入性は呼称そのままで、RR間隔の間に割り込む期外収縮です

RR間隔は洞結節の刺激間隔となります

下図の心電図は2段目と3段目に同じフォーカス、同じ形状のPVCがあります

最初は、間入性で次は代償性ですね

面白いことにこんなことが起きるんですね

今回は間入性についてみてみます

 

下図のラダーグラムで見ると、期外収縮で発生した心室の刺激が房室室結節を逆行して、心房へ向かおうとしますが、期外収縮直後に発生した洞結節からの刺激が心房から房室結節を伝導して不応期となっており、期外収縮の逆行性刺激は房室結節でリセットされてしまいます

タイミングで見ると、洞結節刺激によるRR間隔の間に割り込んだようになって、先行するT波の不応期より後に出現することになります

 

おや!期外収縮の後に続くR波に先行するP波をよく見てください

PP間隔は一定だけど、PQが延びてますね

これはなぜでしょうか

こういう風に考えられませんか

つまり、直前に期外収縮の逆行性刺激が房室結節を伝導して心房の興奮でリセットされました

この直後に洞結節刺激は心房を刺激して房室結節を伝導するわけですが、不応期直後のため伝導時間が延びていると考えられます

このため、PQ間隔が延びたと思われます

このVPCのフォーカスは

CH1のCM5誘導が上向きでCH2のNASA誘導が下向きなので、左軸に少し偏移してるので右室から左室に向かって刺激が行ってるので、右室心尖部辺りからの刺激でしょうかね

話は変わって、

実際の心電図ではPVC直後の洞結節刺激によるP波が、先行のPP間隔より少し延びてる場合をよく見かけます

何かの記事で、連結期が短いR波の後のPP間隔は先行よりも少々長くなることがある、

と見たことありますがこれが関係してるのでしょうかね

その機序はまだ理解できておらず不明ですが・・・・・

分かる方居られたらぜひともコメント待ってます

 

もう一つ、最初に見た同じフォーカスのVPCでも代償性だったり間入性だったりする理由

それは、期外収縮の連結期に関係してると思います

ラダーグラムを見るとよくわかりますが、期外収縮の逆行性刺激が房室結節を伝導する時点が、後続する洞結節刺激が房室結節を通過する前か後かに依りますね

通過する前であれば逆行性刺激は房室結節を結節を逆伝導して代償性/非代償性洞PVCとなるし、通過後であれば間入性PVCとなると考えれますね

 

間入性PVC CH1:CM5  CH2:NASA

【 次回は、PVCを詳しく見てみる その4で、

多源性VPCを調べて見たいと思います 】



VPCを詳しく見てみる(その2 非代償性休止期の場合)

VPCでも、前後の洞性RR間隔との関係で、休止期が代償性をもつ場合とそうではない非代償性、それと間入性がありますね

今回は、非代償性のVPCです

分かりやすくするために、記録紙上に直接色分けしたラダーグラムで書き込みました

見やすいでしょう!

SはSinusで赤丸が刺激発生、AはAtrialで心房興奮=P波で青色領域、AVは房室結節の伝導、VはVentricularで心室興奮=R波で黄色領域

Sから刺激発生してAに伝わると心房が興奮する、と同時に刺激はAV結節を通ってVへ至り心室が興奮します

さて、期外収縮はどうなってるか?

早期に心室が興奮すると同時にその刺激はAV結節を逆行し心房へ至り興奮させP’波が見えますね

刺激はそのまま洞結節に至ります

その時、洞結節が次の刺激としてまだ放電してなければこの逆行性刺激は洞結節のチャージを放電しリセットします

そしてここからまた、洞結節の本来の間隔で刺激チャージが始まります

結果、期外収縮を挟む前後のPP間隔は、洞結節リズムのPP間隔の2倍にはならず、この場合は2倍より短くなります

所謂、非代償性休止期をもつVPCと呼ばれるものですね

期外収縮によるP'波から次の洞性P波までをリターンサイクルと言いますよ

このタイミングは、上室性期外収縮に多く見られるパターンです

(「リターンサイクル」は上室性期外収縮の場合に用いられてるようですが、VPCの場合もそう呼んでいいんでしょうかね??)

非代償性PVC CH1:CM5 CH2:NASA

  次回は心室性性期外収縮(間入性)のタイミングを見てみます

心電図に混入するノイズの話 その2 (実際どうなの? アーチファクトと外部ノイズ)

「ノイズの話 その1」で、心電図に混入するノイズの種類と原因の概略を書きました

では、実際ホルター心電図で見てみましょう

いろんなノイズが出てきますね

「あ~ またノイズだ!ぁ」と嘆くこと勿れ!

それがどのように起こるかをできるだけ考えることが、ノイズ防止に役立ちますからね

 

まずは、実際の記録例(下図)を見てみましょう

2チャンネルで記録してますが、CH1にはノイズが混入して、CH2はきれいに記録されてますから、なんとかなりましたが、多くは、2(両)チャンネルとも同じようにノイズが混入するので、判読がなかなか難しくなります

 

それで、CH1だけがノイズでCH2はきれいですね

これはどんな状態なのでしょうか

CH1とCH2の両チャンネルに同じようにノイズがあれば、それは2チャンネルに共通したところに原因が考えられます

例えば、チャンネル共通である不関電極に問題あり、或いは不関電極のリード線が問題あり、とか・・・・

さてこの心電図の場合はどうでしょう

CH1だけにノイズがあるので、CH1に個別のところ、CH1の∔/-電極及びそのリード線、或いはその装着に問題があるということが分かります

 

さてここでは、1段目CH1だけに注目しましょう

交流(ハム)と思われるノイズが重畳した基線がゆっくりと揺れていますね

基線が飽和(基線が記録上の上下に振りきれること)せずに緩やかに揺れているノイズを基線ドリフトと呼びますね

このドリフトはこの後も繰り返し発生してるので、その周期を測ると約2.4秒、周波数に換算すると0.8㎐で1.5mvほどの波形が発生してるようです

判然としませんが、時刻は22時、1分間で約50回ほどの揺れなので、激しい呼吸若しくは体動による揺れが原因で、皮膚の変化、電極-皮膚間隔の変化などで電極インピーダンスがに変化が起こったのかもしれませんね

 

次に、約0.2秒幅で1.5mvほどの棘波が出てきました

けっこう早い周期で発生してるので、細かな揺らぎが起こってると思われます

要因としては、細かな振動で電極の浮きなど小刻みに起こり、電極インピーダンスの変化が起こりノイズが発生したのかもしれません

電極リード線の揺れやテンションが原因でしょうか

交流ノイズはこんな風に現れますが、人体や装置に外部から誘導されて飛び込んでくるノイズは弱いながらも結構ありますね

携帯電話やテレビ、ラジオ、wi-fiなど生活環境の中で多くの電波が飛び交って、ホルター記録装置に近く接触することもあるでしょう

でも、殆どが高い周波数帯で微弱なので影響を与えません

心電図は大体 0.5~200Hzの周波数帯域になってるので、この範囲内の電波や信号が強い場合には要注意となります

 

2段目を見ると、1行目よりも大きい振幅の基線ドリフトに、周波数が高そうな如何にも外部から飛び込んできたノイズが重畳してますね

この外部ノイズは、交流(ハムです)

拡大して見ると、周期は0.02秒=50Hzになってます

交流ノイズは同相ノイズですが、キャンセルできなかったのは、前回も書いたように

心電図電極の⊕と⊝側の電極インピーダンスが大きく異なっていたことに原因があったと思います

 

さて4段目前半は、基線が上下に飛んで記録範囲を超えてしまってますね。

これは、増幅器が出力飽和状態になってることですから基線飽和と呼びますね

 *増幅器の出力飽和とは

  増幅器に過大入力があった場合、正常の増幅ができずにその出力が飽和(この場合は電源電圧)してしまうことを言います

それだけ大きなノイズが加わったということですね

これは大体は直流成分の大きな変化が要因で、∔と-側に大きく揺れています

電極が剥がれてり、極端に浮いたり、また、電極リード線が断線気味など、増幅器の入力がオープンに近い状態になった場合に起こりやすいです

 

4段目後半には、基線ドリフトの最後の方で基線飽和が起こり⊕側に降り切れています

その後に、一旦基線状態に戻ってますね

もし2チャンネル共にこんな基線状態が数秒続いた後にR波が出てきたら、「ARREST(洞停止)」と間違っても当然ですね

これは、直流成分の多い過大入力がが続いて出力飽和してしまった場合、ある時間で基線を戻すようになっているんです

なので、基線状態が続いたとしても何らかの波形が出てくるまでは過大入力が続いているのですよ

アーチファクト CH1:CM5 CH2:NASA

【 次回は

 心電図に混入するノイズの話 その3

 (心電図と間違いそうなノイズ?)】

を取り上げてみたいと思います

心電図に混入するノイズの話 その1(ノイズの種類と原因)

 ホルター心電図には、ノイズやアーチファクト(この辺の定義はすごく曖昧ですね)が嫌というほど、特にここ一番波形を詳しく見たいというところで、ぐっといろんな種類のノイズが混入してくるってのは、「ホルターあるある!」ですよね

例えば、Ⅱ°/Ⅲ°ブロックのP波を確認したいのに、基線に緩やかで細かなポコポコしたノイズが混入してP波のように見えるとか

更に悪いことには、そのノイズのような波形がShortRunように見えたり、波形をゆがませてWideQRSになったりSTレベルが上下したりと、心電図自体なのかノイズなのか、区別できないことって多々ありますよね

例えば、いわゆる「歯磨きVT」のようなガチャガチャノイズや、基線がゆるやかなに上下する振動「Torsades de Pointes」に見紛いそうな波形など

はたまた、あるべきところにP波やR波が何もなくて基線のまま揺れて数秒間、それも全チャンネルともですよ

アレスト(洞停止)と見間違いますね

そういうノイズ(この場合はアーチファクトと言った方が適切かも)もあります

 

このように、本来の心電図以外の信号が混入したため、ないものが有ったりあるものが無くなったり、本来の形をゆがませたりと心電図解析精度を悪化させる原因となります

 

この後、いろんなノイズ/アーチファクトを紹介したいと思いますが、その前に簡単に

用語の定義(かなり私的な見解かもしれませんが)をしておきましょう

 

心電図が、体表に貼った電極から記録されるまでの経路で混入し、本来の心電図以外の信号(起電力)によって直接・間接的に心電図波形に影響を与えるようなその信号を「不要な雑音」という意味でノイズと呼びましょう

発生する原因を場所の観点で分類してみると次のようになると思います

     ーーー ①アーチファクト:導出・記録系で人工的に作られるノイズ

              :接触/電極インピーダンス変化、リード線不良 

ノイズ  ーーー ②外来ノイズ:導出・記録系以外から誘導されるノイズ

              :交流障害、電磁誘導ノイズ

     ーーー ③生体ノイズ:生体から発生するノイズ

              :筋電図、生体信号、皮膚インピーダンス

 

 インピーダンスとは

  生体現象や物理現象を等価的に電気回路を形成できるとして考えた場合、直流抵抗、キャパシタンス

  (静電容量)、インダクタンス(誘導係数)を持つ電気素子で構成されます

  これをインピーダンスと言います

  インピーダンスは、周波数によってその値を変える、周波数依存の抵抗成分となります

 

①アーチファクト

 人工的に発生するノイズということです

 生体や電気回路、外来から誘導されるノイズ以外のものをいいます

 ほとんどがこのノイズが占めます

 ノイズ発生源は、インピーダンス(簡単に言えば抵抗)があるところに起電力が生じると電流が流れて電圧が発生し且つ時間的に変化してそれがノイズ源となります

 では、どこにインピーダンスが発生するのでしょう   

 通常、心電図記録する時は必ず、皮膚上に心電図電極を貼り、電極リード線でつなぎ、それを記録器のコネクターに差して接続します

 (最近では、ディスポ電極と電極リード線が一体化したものが多いです)

 この構成を疑似的に書くと下図のようになります  

 ここでは心電図電極インピーダンスと皮膚間の接触インピーダンスを便宜上まとめて電極インピーダンスとしています  これが主なものとなります

 他には、電極リード線が心電図電極と接続する時の接触抵抗、リード線自体などで抵抗が発生します

 これらのインピーダンスや抵抗が極端に変化したり、異なる伝導体での境界面で起電力が発生したりするとアーチファクトなって心電図に重畳してきます

 

②外来ノイズ

 生体や測定系以外の所にノイズ源があり、それが生体や測定系のインピーダンスの高い部分に、静電誘導や電磁誘導によりノイズの混入となります

 高い周波数(心電図増幅器の周波数特性以上の周波数)では、強度が強くなければ影響は受けないと思われます

 交流ノイズ(電源周波数)、いわゆるハムが主なものとなりますが、強い動力(モーター)の近傍、交流使用機器の至近距離からの混入があります

 

 外来ノイズは、下図の差動増幅器の+/ー入力に同時に(同振幅、同相)心電図信号に混入するので(このようなノイズを同相ノイズと言います)、使用されている差動増幅器の特性(下記の数式参照)により同相ノイズは打ち消されて出力にはほぼ出てきません

 しかし、+/ー入力に加わる同相ノイズの大きさが極端に異なっていると、その差分 が信号に重畳されて出力してしまいます

 

 *差動増幅器の特性

   差動増幅器は、⊕と⊖の2つの入力を持ち、その差分を増幅します

      Eout = Ecg⊕ ー Ecg⊝

   仮にEcg+とEcg-信号に共通に同相ノイズEnが混入すると

      Eout = Ecg⊕+En ー (Ecg⊝+En)

         =  Ecg⊕ ー Ecg⊝

   となり、ノイズはキャンセルされ信号差成分だけが増幅され出力されます

   (但し、⊕入力と⊝入力に重畳するEnが同じ大きさの場合は同相ノイズはキャンセルされるが、

    大きさが異なる場合はその差分が信号差成分に重畳し増幅されて出力される)

 

 ③生体ノイズ

  生体内で発生する筋電図や各種の生体信号は同相ノイズとなります

  皮膚も電気的にはインピーダンスを持つのでノイズを発生します

  生体内発生ノイズは同相ノイズなので、交流ノイズと同じ処理がされ出力にはほぼ出てきません

  上にも書きましたが、差動増幅器の⊕入力と⊝入力で、同相ノイズの大きさが極端に違っているとその差分が増幅され信号に重畳し出力されてノイズとなります

 

ここで知っていた方がいいのは、同相ノイズの影響です

外から飛び込んでくる同相ノイズは心電図電極の⊕電極と⊝電極では同じ大きさです

しかし、電極インピーダンスや皮膚インピーダンスが⊕電極と⊝電極で異なっているとそこで発生する同相ノイズの大きさが異なるので、差動増幅器の⊕入力と⊝入力の大きさも異なり、増幅器の出力は心電図信号に同相信号の差分が重畳したものとなります

なので、皮膚インピーダンスや電極インピーダンスはできるだけ小さく同じようになるよう前処理することがノイズの少ない心電図を記録するポイントとなります

 

 

ノイズ源

【心電図に混入するノイズの話その2

   (実際どうなの?)・・・・・に 続く 】

 

 

 

 

ホルター心電図ブログ開きました

ホルター心電図のブログを開設しました

ホルター心電図の解析に携わって、日々心電図を見ているといろんな波形や症状やイベントに出くわします

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それをできるだけ正確に精密に解析し報告書にまとめ医療者の診断治療等に供するのが、その役目だと考えています

しかしながら、その精度や信頼性を確認もできなければ、専門医師などからの指導を容易に受けることはかないません

そこで、今まで培った知識や経験をもう一度まとめて整理して検証したいことと、

ホルター心電図解析で日々疑問に思うことや悩ましいことなどについて、アウトプットして意見をいただき

ディスカッションなどできればいいなぁと思いブログ開設に至ったわけです

それと、

日々出会う心電図の中、そこにある貴重な心電図やホルターの話、それにまつわる四方山話を書いてゆきたいと思います

そして、多少でも、ホルター心電図を解析する、或いは診療に供する方々のお役に立てればと思います