ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 四方山話します

QRS波形をベクトルで読み解く その3 右脚ブロック波形

「QRS波形をベクトルで読み解く その3」 は、異常波形の中でも分かりやすい右脚ブロック波形の起電力ベクトルを推測してみましょう

 

図の2誘導は、CH1:CM5誘導でCH2:NASA誘導です

右脚ブロックは特徴的な形状していて、CH1ではRS波形、CH2では(q)RR'が一般的です

早速、Q/R/Sセグメントに分けてみて見ましょう

下図を見てください

 

 

まず、①の時相です

R波の立ち上がりで①時相のCH2はr波ピークで+0.3mv、CH1はR波立ち上がり始めで約+1mvですね
この大きさを各誘導にとり(各誘導に沿った緑の細い矢印)、それぞれの垂線(緑の点線)を下ろして交点をとり、基点からその交点までを結ぶと、そ大きさと向きがその時相における起電力ベクトルとなります

そして、このベクトルは基点に平行移動したものなので実際の起電力ベクトルの位置は、その時相で起きてる心室の収縮の最大値を取る場所と見なして推測します
この①の時相は、心室興奮の最初で心室中隔が左室から右室側に興奮したものと考えられ、CH1でr波のピーク、CH1ではR波の立ち上がり途中の心電図波形となります
この波形ではベクトルの向きが心室中隔の右から左方向に僅かに向いてますが、その方向は各誘導の電位差が大きいため電位の取り方で微妙に変わって電気軸で+/-10°位は誤差になるので、実際には中隔に平行位に見ておいていいのではないかと思います
理屈からすればベクトルの向きは左から右方向を向くんですがね・・・・
で、ベクトルは心室中隔辺りにあると考えると図の①の緑矢印のようになります

 

②の時相はCH1のR波ピークで、CH1は+2mv、CH2はr波ピークから少し下がったところで+0.2mv でこの大きさを各誘導に取り(各誘導に沿った赤の細い矢印)、①と同じように処理すると、CH1とCH2から下した垂線の交点と基点を結んだベクトルは②の時相の心室の起電力ベクトルとなります
R波のベクトルの中心は、通常なら左右心室が同時に興奮し左室側がより強く興奮してるのでベクトルは中隔から心尖部に位置しやや左室方向よりとなるとなりますが、右脚ブロックではこの時相では右室側はまだ興奮していないので左室側のみの興奮による起電力となり図の②赤矢印ようになります

なので、CH1のR波は大きくピークとなり、CH2はr波ピークからの立下り途中の波形となります

 

③はCH1のS波で+0.1mv、CH2はR'波で+0.2mv でこの大きさを各誘導に取り(各誘導に沿った青の細い矢印)、①と同じように処理すると、③の時相の心室の起電力ベクトルとなります

ベクトルの方向は、左心室から右心室へと方向が向いてるので、右心室から左心室へとの興奮が伝わってることとなり、ベクトルの最大の位置は心尖部付近と考えていいでしょう

 

④の時相は、CH2のR'波で+0.6mv、CH1のS波は0.5mvでこの大きさを各誘導に取り(各誘導に沿った紫の細い矢印)、この大きさを①同様に処理すると、④の時相の起電力ベクトルとなります

ベクトルの方向は左心室側から右心室方向で、左心室の興奮はR波が無くてS波なので右心室だけが興奮してることになります

なので、ベクトルの位置は右室壁と考えていいでしょう

 

各々のセグメントで①~④の時相を見てみましたが、見慣れた右脚ブロック波形の起電力を連続してイメージすると、波形と心臓の刺激伝導、興奮の関係がよりよく理解できますね

次回は、左脚ブロックの起電力ベクトルを見てみましょう