ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 四方山話します

心電図に混入するノイズの話 その2 (実際どうなの? アーチファクトと外部ノイズ)

「ノイズの話 その1」で、心電図に混入するノイズの種類と原因の概略を書きました

では、実際ホルター心電図で見てみましょう

いろんなノイズが出てきますね

「あ~ またノイズだ!ぁ」と嘆くこと勿れ!

それがどのように起こるかをできるだけ考えることが、ノイズ防止に役立ちますからね

 

まずは、実際の記録例(下図)を見てみましょう

2チャンネルで記録してますが、CH1にはノイズが混入して、CH2はきれいに記録されてますから、なんとかなりましたが、多くは、2(両)チャンネルとも同じようにノイズが混入するので、判読がなかなか難しくなります

 

それで、CH1だけがノイズでCH2はきれいですね

これはどんな状態なのでしょうか

CH1とCH2の両チャンネルに同じようにノイズがあれば、それは2チャンネルに共通したところに原因が考えられます

例えば、チャンネル共通である不関電極に問題あり、或いは不関電極のリード線が問題あり、とか・・・・

さてこの心電図の場合はどうでしょう

CH1だけにノイズがあるので、CH1に個別のところ、CH1の∔/-電極及びそのリード線、或いはその装着に問題があるということが分かります

 

さてここでは、1段目CH1だけに注目しましょう

交流(ハム)と思われるノイズが重畳した基線がゆっくりと揺れていますね

基線が飽和(基線が記録上の上下に振りきれること)せずに緩やかに揺れているノイズを基線ドリフトと呼びますね

このドリフトはこの後も繰り返し発生してるので、その周期を測ると約2.4秒、周波数に換算すると0.8㎐で1.5mvほどの波形が発生してるようです

判然としませんが、時刻は22時、1分間で約50回ほどの揺れなので、激しい呼吸若しくは体動による揺れが原因で、皮膚の変化、電極-皮膚間隔の変化などで電極インピーダンスがに変化が起こったのかもしれませんね

 

次に、約0.2秒幅で1.5mvほどの棘波が出てきました

けっこう早い周期で発生してるので、細かな揺らぎが起こってると思われます

要因としては、細かな振動で電極の浮きなど小刻みに起こり、電極インピーダンスの変化が起こりノイズが発生したのかもしれません

電極リード線の揺れやテンションが原因でしょうか

交流ノイズはこんな風に現れますが、人体や装置に外部から誘導されて飛び込んでくるノイズは弱いながらも結構ありますね

携帯電話やテレビ、ラジオ、wi-fiなど生活環境の中で多くの電波が飛び交って、ホルター記録装置に近く接触することもあるでしょう

でも、殆どが高い周波数帯で微弱なので影響を与えません

心電図は大体 0.5~200Hzの周波数帯域になってるので、この範囲内の電波や信号が強い場合には要注意となります

 

2段目を見ると、1行目よりも大きい振幅の基線ドリフトに、周波数が高そうな如何にも外部から飛び込んできたノイズが重畳してますね

この外部ノイズは、交流(ハムです)

拡大して見ると、周期は0.02秒=50Hzになってます

交流ノイズは同相ノイズですが、キャンセルできなかったのは、前回も書いたように

心電図電極の⊕と⊝側の電極インピーダンスが大きく異なっていたことに原因があったと思います

 

さて4段目前半は、基線が上下に飛んで記録範囲を超えてしまってますね。

これは、増幅器が出力飽和状態になってることですから基線飽和と呼びますね

 *増幅器の出力飽和とは

  増幅器に過大入力があった場合、正常の増幅ができずにその出力が飽和(この場合は電源電圧)してしまうことを言います

それだけ大きなノイズが加わったということですね

これは大体は直流成分の大きな変化が要因で、∔と-側に大きく揺れています

電極が剥がれてり、極端に浮いたり、また、電極リード線が断線気味など、増幅器の入力がオープンに近い状態になった場合に起こりやすいです

 

4段目後半には、基線ドリフトの最後の方で基線飽和が起こり⊕側に降り切れています

その後に、一旦基線状態に戻ってますね

もし2チャンネル共にこんな基線状態が数秒続いた後にR波が出てきたら、「ARREST(洞停止)」と間違っても当然ですね

これは、直流成分の多い過大入力がが続いて出力飽和してしまった場合、ある時間で基線を戻すようになっているんです

なので、基線状態が続いたとしても何らかの波形が出てくるまでは過大入力が続いているのですよ

アーチファクト CH1:CM5 CH2:NASA

【 次回は

 心電図に混入するノイズの話 その3

 (心電図と間違いそうなノイズ?)】

を取り上げてみたいと思います