ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 四方山話します

QRS波形をベクトルで読み解く その2(正常心電図を見てみるかぁ)

心電図波形をベクトルで読み解きます

正常心電図のQRS波形から起電力ベクトル*を推測してみます

2誘導のホルター心電図では、CH1はCM5誘導でCH2はNASA誘導です

Q/R/Sに分けて見ます

①がQ波で、CH1は-0.05mv、CH2は+0.1mv(緑の細い矢印)

このベクトルを各誘導から垂線を(緑の点線)下ろすと、その交点が①の起電力ベクトルで各誘導に投影されたものとなります

心室興奮の最初は、心室中隔が左室から右室側に興奮するので、Q波のベクトルの中心は心室中隔辺りにあると考えられるので下図のようになります(①緑矢印)

②はR波で、CH1は+1.5mv、CH2は+0.7mv (赤の細い矢印)

この大きさを各誘導から垂線を(赤の点線)下ろすと、その交点が②の起電力ベクトルが各誘導に投影されたものとなります

R波のベクトルの中心は左右心室が同時に興奮し左室側がより強く興奮してるのでベクトルは中隔から心尖部に位置しやや左室方向よりとなると考えられるので下図のようになります(①赤矢印)

③はS波で、CH1は+0.1mv、CH2は+0.5mv (青の細い矢印)

この大きさを各誘導から垂線を(青の点線)下ろすと、その交点が③の起電力ベクトルが各誘導に投影されたものとなります

S波のベクトルの位置は心基部、左心室後方及び心室中隔上部の後興奮と考えられるので下図のようになります(①赤矢印)

起電力ベクトル(正常QRS)

ここでちょっと押さえておきたいのは、場所と時間と共に変化する起電力ベクトルの同定です

各波形セグメントでの起電力ベクトルは、基準点を房室結節付近に採って見ています

なので、実際のベクトルがどこにあるのかは時間と共に変化する場所を同定するのはあくまで推測することになります

それと、各誘導で発生するベクトルは、心臓に発生した起電力全体が各誘導に投影されたものであるということですね

 

*正常心電図のQRS波形から起電力ベクトル」については以下を参照しています

 「図解心電図学」M.J.Goldman著、 吉利・宮下訳 1988年 金芳堂刊 

  第5章 正常心電図 参照