ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 四方山話します

ホルター心電図ブログ開きました

ホルター心電図のブログを開設しました

ホルター心電図の解析に携わって、日々心電図を見ているといろんな波形や症状やイベントに出くわします

一日中記録器を携帯して記録した心電図

それは貴重なデータです

それをできるだけ正確に精密に解析し報告書にまとめ医療者の診断治療等に供するのが、その役目だと考えています

しかしながら、その精度や信頼性を確認もできなければ、専門医師などからの指導を容易に受けることはかないません

そこで、今まで培った知識や経験をもう一度まとめて整理して検証したいことと、

ホルター心電図解析で日々疑問に思うことや悩ましいことなどについて、アウトプットして意見をいただき

ディスカッションなどできればいいなぁと思いブログ開設に至ったわけです

それと、

日々出会う心電図の中、そこにある貴重な心電図やホルターの話、それにまつわる四方山話を書いてゆきたいと思います

 

なんとなく(明確な根拠が示せない)こうかなって思うが、はっきりと判らない心電図の判読ってよくありますよね

でも、判らないままにしたくなくて、恐らくこうだろうってことでやや無理やり理由付けするような中途半端な解釈に対し、「いやいや違うね、これはこうだろう」と教示してもらういたい場合、当ブログのカテゴリーを「これなに!心電図」としました

 

このブログを通じて、多少でもホルター心電図を解析する、或いは診療に供する方々のお役に立てればと思い発信しています

 

 

リターンサイクルがちょっと延びたBlocked PAC

Twitterからのホルター心電図のBlocked PACで、リターンサイクルが少し延びる興味深いのがあったので紹介します

 

 

 

 

心電図は、回答でも多かったように、ちょっと見、P波がT波に重畳した Blocked PACと思われます

そこで確認のためにReturn Cycleを測ってみると、基本周期のPP間隔から推測される間隔よりちょっと長いようですね

では、ラダーグラムを見てみましょう

その前に、ホルターの誘導法ですがDr提示の心電図は大体が、CH1:V5、CH2:ⅡMod、CH3:V1となってるようです(ドイツではこういうのが一般的なのかな?)

下図は、CH2とCH3の2誘導でⅡとV1誘導と仮定しています

 

 

では心電図をラダーグラムで見てみましょう

 

 一番目の洞刺激Sが発生して洞房結節を伝導し洞房伝導時間SACT(SACT1)後にP波が出ます

そして、刺激は房室伝導し房室伝導時間を経て心室に到ります

次に、洞刺激が出る前に心房Atrialから早期刺激がでました

刺激は洞結節と心室の両方に向かって伝導します

心室に向かった刺激は、先行するR波の不応期にかかってるので伝導できず心室をには至らず、Blocked PACとなりました

一方、心房から洞結節に向かった刺激は洞房伝導時間SACT1を経て洞結節に到り洞刺激をリセットしてると考えられます(図の赤い点線矢印)

が、実際の洞房伝導時間SACT2(図の赤い実線矢印)は、SACT1よりちょっと延びて洞結節をリセットしてますね

この結果、基本周期のPP間隔から推測される間隔よりちょっと長いReturn Cycleになったようです

ではなぜ、こういうことが起きたのでしょうか

考えられることは、Blocked PACの連結期が短くて洞房結節の不応期に掛り、洞房伝導時間SACT2となったと推測されます

 

このように、単純と思われる Blocked PACでも、いろいろな機序が重なって出てくるんだという一例でした

 

また、波形が通常とちょっと異なるので、ベクトル図を書いてみると、始めに左室長軸に沿って興奮がありその後100°に左軸に向かいそのままゆっくりと180°以上に大きく向かってますね

これは、左から右へと興奮が進んでるベクトルでしょうから、右脚ブロックかなと推測します

PQ間隔も0.3秒ぐらいで1度房室ブロックもああります

脚ブロックのある場合は、PQ間隔が標準より延びてる場合が多いようですね

 

心房細動? 心房粗動? ー誘導で見え方が違ってる?

今回は実際解析した心電図ですで、なにこれ的なホルター心電図を紹介します

CH1では心房粗動の様であり、CH2では心房細動の様であり誘導によって見え方が違ってるというものです

加えて、ある時間帯だけ、心拍数が倍ぐらい変化するものでもありました

 

24時間トレンドグラフは下の通りです

大体が130bpm位、それもほとんど一定ですね

普通だと、自律神経の異常を疑うようなトレンドです

そして、23時から24時と17時、20時に急激な心拍の変化がありますね

 

さて、急激な心拍数の変化があった時間帯の心電図です

130bpm位で一定のリズムだったのが、所々でR波が数拍抜けています

でも、期外収縮ではなさそうです

P波を探してみると、なんと、よく見えませんね

CH1誘導の心電図は、不規則な基線の揺れはなく、なんとなくP波らしいのが見えてます

CH2では、P波と言うよりは基線を含めた揺れ、心房細動波(f波)のようなのが見えてます

2段目のR波が抜けた部分の基線を見ると、P波ではありませんが規則的な揺れがはっきりと見れますね

P波がなく規則的で基線に戻らない波があって、そしてR波が規則的・・・とくれば、心房粗動が一番わかりやすいですね

基線の波は、粗動波(F波)だろうと考えます

そして、R波が抜けた間隔を見ると、3回のF波で1回のR波が発生してるので「3:1伝導の心房粗動(AFL)」

R波が抜けず一定リズムの所は、基線をよく見ると2回のF波で1回のR波、なので「2:1伝導の心房粗動(AFL)」と言うことができますね

 

以上の観点で、心拍数が低くなってる時間帯を見てみると

下図の心電図では、約130bpmのAFL中に、2:1~4:1伝導のAFLが多く発生してるということになります

さて、最初の方で疑問に思った、CH2誘導のP波擬きの基線はどう考えればいいでしょうか

f波擬きの波の間隔は一定でF波と同期してるように見えますよね

R波が抜けた部分の基線にCH1ではF波がはっきり出てくるので、これに伴ってCH2のf波擬きも見えてきますが、これはやはりF波と見ていいのではないでしょうか

(なぜ、CH2誘導でこういうF波が出現するのかわかりません⇒見識のある方は是非教えていただきたいと思います)

 

(AFL

最後に心房細動と心房粗動の略式の表記の仕方が以前と違ってきたようです

「心房細動」=「Atrial Fibrillation」=「Af」=「細動波:f波」

         ↓

  「Atrial Fibrillation」=AF」  

 

「心房粗動」=「Atrial Flutter」=「AF」=「粗動波:F波」

         ↓

  「Atrial Flutter」=「AFL

各々、「AF」と「AFL」が流通してるようで今後はこれに倣って表記します 

心房粗動(AF/AFL)

Twitterからの問題です

さて早速、過去問を見てみましょう

色んな種類のものが出てますがこれはどうでしょう

 

 

全体は心房粗動AF(2:1や3:1伝導)としたけど、F波を拾っていくと

PQ間隔が0.32秒でR波に対応するP波があるように見えた

これをⅠ°AVブロックと考えてみたが、ちょっと突飛過ぎてたまたま見えたようです

結果、AF又はAFLでしょうね

 

出題者の回答は以下のようでした

 

 

 

Twitterからの心電図をお届けします

遅ればせながら近頃、xTwitterを見るようになりました

関心ある記事を見てると

SNS、特にTwitterにアップされる心電図では、めったに出会わないものやどう見ても理解し難いような、かなり目面しい興味あるものを沢山見ることができます

それも「どう考える??」みたいな感じで投稿されてますね

それに対する応答や解釈は多種多様で、全世界(ちょっと大袈裟?)から飛び込んできます

心電図をより深く理解するのに、心電図の多様な解釈や推論が大変役立ちますね

その中で、これはぜひ紹介したいという心電図と記事を転載し、追っかけ解釈をしてみたいと思います

特に、多数の興味湧く12誘導心電図やホルター心電図を提供してくれている、Andreas Roeschl 先生 の記事をメインにTwitterなどSNSからのいろんな心電図を自己解釈と共に紹介したいと思います

 

 



R波が突然消えた~2度房室ブロック~

こういう心電図がありました

基線もきれいで波形セグメントもしっかり見えて、リズムもメリハリあってと、

こういう波形が24時間続けばホント解析しやすいですね

 

では心電図です

洞調律のR波が突然抜けて、その後に早期ではない期外収縮が出ています

一見、PP間隔が突然伸びて補充収縮のような感じですね

P波、R波とPQ、それぞれの間隔詳しく見ていきましょう

CH2:NASA誘導にP波がはっきり出てますね

(CH1:CM5誘導でかなり小さいのが気にはなりますが・・・)

P波は⊕で幅0.1S、PPレートが50bpmの洞調律です(下図 PP1)

R波はどうでしょうか

形状は、左軸偏位と見られる形状でT波が陰性なのはそのためと思われます

P波に対応してR波が出てますが、3拍目のP波後R波が脱落、4拍目のP波後洞調律によるR波が無くて幅広い期外収縮が出てますね

Pが洞調律でP波があるのにR波が時には脱落する現象は、2度房室ブロックです

で、PQ間隔を見ると1拍目のPQ間隔:PQ1と2拍目のPQ2を比べると、PQ2が伸びてますね

そしてその後2回続けてR波が脱落して、5拍目でPQ間隔がPQ1となり元に戻ってます

(下図 赤矢印の点)

とすると、Wenchebach型2度房室(AV)ブロックと言うことになります

では、PQ3で出現した幅広QRSは何でしょうか

P波に対応したR波と考えるとPQ間隔は他より短いし、形状的にも上方軸(ベクトルが下方から上方へ向かう)で幅広なので正常伝導したR波ではなさそうです

つまり、PQ3で出てるP波が房室結節を伝導中に(房室伝導時間が0.2S)、心室性期外収縮がでてP波に対応したR波をブロックしたと考えられます

なのでこれは、-120°位の電気軸で左から右へ、下から上へと向かう左室心尖部付近起源の心室性期外収縮と推測しました

 

2度AVB

2度AVブロックではR波脱落は1拍が通常と思ってましたが、脱落後に2拍目でPVCが出ることもあるんだ、と認識改にしました

・・・こういう心電図もあるんだなと

発作性上室頻拍(PSVT)を考えてみる ー AT?AVNRT? 将又Af?ー

発作性上室頻拍PSVTの機序を探るのは結構むづかしいですよね

今回はー AT?AVNRT? 将又Af?ーと題して考えてみましょう

 

同一被検者(78才、男性)の、ホルター心電図で午前から午後にかけての3種の時間帯のものです

誘導は3チャンネルで、CH1:CM5、CH2:NASA、CH3:ModifiedCC5(V5⊕と剣状突起間⊝)

 

先ず一つ目の心電図

RR間隔が早期収縮が短くなったところは3ヶ所ありますね(区間①に注目)

早期収縮の連結期が一定で、QRS幅や形状が洞調律と同じなので、P波がぽこぽこ連続してるけど(今は気にしないで)、取り敢えずは「上室性期外収縮(PAC)」のようですね

確認のため、PACのリターンサイクルを見てみましょう

基本調律は、1~2拍めのRR間隔

そこで予想されるリターンサイクルは、1拍目のP波立ち上がりから2拍目のq波までの間隔(黒い矢印でリターンサイクル▲)が、便宜的にこの調律のリターンサイクルに近似します

 

(これについては下のブログ「リターンサイクルについて詳しく見てみる」で詳細に書いています)

区間①の範囲で見てみましょう

最初のPは洞調律ですね

続く早期のP'はPと少し形が違ってるので異所性のPAC

その後にP''、最後にp'''がでてますがR波は追従しておらずブロックされています

その後長い休止期があって、区間②では再び洞調律のPによるR波が出ていますが、それに続く早期のP’はR波がブロックされています

これは、区間①のP’とP''及び区間②のP’はT波のピーク前後の不応期に出てるためR波がブロックされてますね

それでは、区間②の洞調律のPが発生するためのリターンサイクルの発生点はどこにあるのでしょうか

区間②のPから、先ほどの近似的なリターンサイクル(黒矢印の▲)の長さ分前に戻るとそこは区間①のP'''になります

つまり、P'''で発生した刺激は洞結節へと逆行伝導し洞結節の刺激をリセットし、洞調律の基本周期後に区間②のPを発生させたのです

区間②にあるP’もR波がブロックされてますが、リターンサイクルを経て次の区間①でPを発生させていますね

 

これが、これらの心電図が「ブロックされたR波を有するPAC」であると考えた理由となります

そして、P波が間歇的に数拍連続し周期は約0.2秒(300bpm)であることから、心房起源の頻拍で、R波ブロックを伴う発作性心房頻拍 PAT with Block と考えられますね

 

さて、2つ目の心電図が下図です

区間①はP’によるPACですね

区間②では、洞調律P波の後に、P’が4拍連続してるのが読み取れます

P’の最初の2拍はR波ブロックされずに変行伝導(右脚ブロック型)によるR波が出てきました

(なぜここだけ変行伝導になるかは、自分にはわかりませんので識者の見解をお待ちしています)

3拍目のP’はさすがにR波直後なのでR波はブロックされてますね 

4拍目のP’は不応期が過ぎてたため通常の伝導となってます

その後、リターンサイクルを経て区間③のPへと続きます

結果、区間②は4連続するP’のPATと言うことになりますね

 

区間③では、最初のP’に続いてP’が出てますが、これはR波ブロックされていますね

その後、リターンサイクルを経て洞調律P波となりますが、心房性PACは同じ関係で繰り返してました

 

3つ目の心電図です

心拍数150~300bpmでQRSは幅広くなくPP間隔やPQ間隔はランダムではなく

一見、発作性心房細動PAfか房室/房室結節リエントリー(回帰)型頻拍:AVNRT、或いは発作性心房頻拍PATのようにみえませんか

 

先ずよく見ると整然とP波があってPQ間隔が各々一定のようで、f波ではなさそうですね

と言うのは、f波は大きさやタイミングがランダムにでるP波で、基線に戻らないのが殆どで、PQ間隔やRR間隔は不整になりますが、この心電図はちょっと違うと思います

 

房室/房室結節リエントリー型頻拍(AVNRT)と見ると、RP間隔が長いので非通常型房室結節リエントリーでしょうかね

或いもう一つは、心房頻拍も考えられますね

では、P波を詳しく見てみましょう

P波を凝視すると、何種類かのP波があるようです

どこかに違いはないかなと、その形とタイミングをCH1とCH3に注目しましょう

よく見ると下図の心電図には3種類のP波があるように見えませんか?

(私には、そう見えます!)

CH1では形の違うP波 ⇒洞調律と思われる幅広めのP(黒字)、T波に重なった2峰性ようなP''(緑字)、低くて幅の狭い、前の2つとは違うP'(青地)

CH3では極性の違うP波 ⇒ 洞調律と思われるP(黒字)、少し形に違う⊕向きのP''(緑字)、⊝向きのP’(青字)

CH1で2峰性のようなP’’は、細かく見てみると実は⊝のP’’がT波に重なって(最初のピークがP'頂上、次のピークがT波頂上)いると推測できます

CH1とCH2を合わせて考えるとP波は、洞調律のP、区間①にP’、 区間②にP''、区間③にはP’とP’’が見えますね

 

次に考えることは、これらのP波が出るタイミングとどこから出てるか(起源)です

洞調律のP波は約75bpm

区間①のP’は後半300bpm位でR波のブロックを伴っているので心房頻拍ATで、⊕極性なので右房起源と考えます

区間②のP’’は、150bpm位でPQ間隔が一定の0.2秒でlongRPほどではないので、心房頻拍ATか非通常型のAVNRTと考えてもいいと思います

極性を見た場合、CH2とCH3でP’’は⊝極性なのでベクトルは下から上へ、且つ左から右に向かってるので、左房起源或いは逆行性興奮のはずです

先ずATと考えた場合、直前のリズムがは300bpmだったので、左房起源になったとしても急に半分に落ちるのはちょっと?な感じがしませんか

それと、上記「一つ目の心電図」の所で書いたように、ATの直後は殆どの場合リターンサイクル位の休止期があると思いますがここにはありませんね、これもちょっと?

 

では、非通常型のAVNRTと考えてみましょう

区間①の最後のP’はブロックされずに房室結節を通りR波を生じてます

そのPQ間隔は区間②の頻拍のPQ間隔と同じなので、区間②と同じ房室結節の伝導だということが推測できます

区間②は、長めのRPでP波が⊝極性なので、房室結節(のSlow Pathway)を逆伝導していると考えられます

そして、区間②の終わり方を見ると、区間②の最後のP’’はR波がブロックされてその後にP’が出ています

これはどういうことでしょう?

次のように考えることができませんか?

区間②が非通常型AVNRTであれば、心房からの興奮の房室伝導はFast Pathwayを順行してR波発生し、R波興奮の刺激がSlow Pathwayを逆行して心房を興奮させP’’となり、その繰り返しが頻拍となります

ここで、頻拍の途中で、Slow Pathwayを通った順行性刺激がブロックされR波を発生しないと、逆行性の刺激がなく心房波 P’’は生じません

つまり、頻拍がブロック(停止)されることになり、この後に区間③でP'が発生してます

区間③でR波ブロックされたP’は、リターンサイクルを経て洞調律のPに戻ってます

 

以上の点から見ると、区間②はATではなくて非通常型のAVNRTによる頻拍と考えた方が妥当だと思います

 ・・・ 如何でしょうか?

 

上室性期外収縮(PAC)を詳しく見てみるーリターンサイクル

以前にリターンサイクルという不整脈解析の便利なツール(?)を紹介しました

P波がはっきりしなくてQRS幅が広く、上室性の変行伝導か心室性なのか判然としないような時、リターンサイクルの概念を使えば、P波が見えてきてはっきりさせることができるなど活躍するはずです

ここでは、上室性期外収縮PACの出現機序をラダーグラムで詳しく見てみます

 

PACというと、3連発以上を含めて言うこともあるかと思いますが、3連発以上はPSVTといった方が通りがいい印象を持ってますね

ここでは、単発と2連発のPACを取り上げます

下図A1~A2は、同一被検者の連続した12秒間の心電図です

最初の6秒間A1には単発PACと2連PACがあります

次の6秒間A2には2連PACに続いて単発PACが出てます

目面しいですね、また2連PACは各々R波の形状が違ってますよ

興味の惹くところですね

 

ではまず、A1の心電図から見てみます

最初にPACがありますね

ラダーグラムでは、

心房からの刺激によりP波が発生すると同時に逆行性で洞結節に到り洞結節の刺激チャージをリセットします

ここから、洞結節の刺激サイクル(刺激インターバル)時間を経て、洞結節から

再び刺激が出ます

この時、

「洞結節の刺激間隔+心房から洞結節に逆行する時間+洞房伝導時間」の合計値がリターンサイクルとなります

よく見ると、PAC波形形状が他の洞結節刺激によるR波と少し違ってますね

先行するP波、R波のベクトル、QRS幅、T波方向、リターンサイクルを有してるということから見て、PACということが言えますね

洞結節刺激の場合は、心室心尖部方向に刺激の後に、S波があるので心室上側に刺激が行ってるようですが、心房から刺激の出たPACの場合は心室心尖部に刺激だけとなってS波はでないようです

これは、連結期が短くなったため(再分極直後)かなとも思いますが

良くわかりません

  どなたかこの機序が分かればぜひともご教示願いたいと思います

5拍、6拍目の2連PACも同様に、心房刺激によるP’、P‘’波の逆行性刺激により洞結節刺激はリセットされ、2連目のP波の逆行性刺激によるリターンサイクルにより7拍目の洞性刺激によるR波がでてます

 

 

次に、A2の心電図を見てみます

これの5,6拍目は2連のPACですね

まず目につくのは波形形状が違ってるし、右脚ブロックのような形状ですね

これは、T波直後で不応期を脱してないため起こった現象でしょうか?

(8拍目のR波も同様な状態ですがこれほどの波形変化は見当たらないので、こういうことが言えるかどうかは定かではありませんが)

次に、2連PACのタイミングをA1と同じように見てみると、2連目のPACから始まる7拍目までのリターンサイクル(P'' -P間隔)がちょっと短くなっていますね

そして、7拍目が発生するタイミングのリターンサイクルを見ると開始点は5拍目、つまり2連PACの1拍目になってますね(P’-P間隔)

とすると、6拍目のPACは7拍目のリターンサイクルに影響していないことになります

つまり、6拍目における心房からの刺激は洞房結節を逆行して洞刺激をリセットせず、途中でブロックされたと考えることができるでしょう

そして、8拍目でまたPACがでて、これはリターンサイクル(P’-P間隔)を経て洞刺激による9拍目が出てますね

 

このように、リターンサイクルをラダーグラムを使って見てみることで、期外収縮の発生機序がより理解しやすくなり、結構分かり難い心室内変行伝導や心室性期外収縮の区別などに用いることができると思います

 

 

アーチファクトを減らそう 次に~インピーダンスと心電図増幅器の関係~

前回は、ホルター心電図で混入するのアーチファクト発生要因を理解するために、皮膚・電極インピーダンスと等価回路についてみました

今回は、心電図信号やアーチファクトを一緒に増幅する差動増幅器のことを知ってた方がよりアーチファクトを理解できると思いますので、インピーダンス増幅器の関係について見てみましょう

 

差動増幅器の特性の概要については以前のコラムで書きましたので、そちらを参照ください

 

ここでは、インピーダンス増幅器の関係についてみて見ます

 

生体信号を測定する時にノイズを少なくするために、一般によく言われることに

増幅器の入力インピーダンスは、皮膚・電極インピーダンスに比べて十分大きいこと

② 皮膚・電極インピーダンスはできるだけ小さいこと

③ 皮膚・電極インピーダンスはそれぞれの電極で同じような状態になること

と言うのがありますね

 

ではその理由を考えてみます

まず①の増幅器の入力インピーダンスについてみて見ます

下図は、心電図信号が皮膚・電極インピーダンスを経由して記録装置の増幅器までの電気回路を模式的に示したものです

増幅器の重要な特性の一つに、信号側から入力側を見たときに「入力インピーダンス」という交流抵抗成分(入力周波数でその値が変化します)があります

これは言い換えれば、入力側にどれだけ電流が流れるかということで、入力側の被測定系に変化を及ばなさないかの性能になります

これを詳しく見ていきましょう

下図を見てください

生体からの心電図信号の電位Esは、図からわかるように、増幅器に対し皮膚や電極インピーダンスZdでの電圧降下と増幅器の入力インピーダンスZiによる電圧降下に分散されます

増幅器の入力に加わる入力電圧Eiは、信号源の電位に対し図の計算式にあるように(オームの法則から)、各インピーダンスの大きさに比例して発生します

つまり、EiはEsに対してZiに比例することになります

 

 

ここで仮に、ZiがZdを無視できるぐらい十分大きい(Zi>>Zd)とします

Ei = Zi/Zi × Es = Es

となり、Esがそのまま増幅器の入力に加わることになります

逆に、ZdがZiを無視できるぐらい十分大きい(Zd>>Zi)とします

すると、Ei = Zi/Zd × Es ≒ 0

となり、Esはほとんど入力には加わらないことになります

また、Zi=Zdの場合は

Ei = 1/2 × Es

となり、心電図信号の半分の大きさしか入力に現れないことになります

増幅器は、Esを何千倍にも増幅するのでそれに伴って増幅器で発生する雑音も同時に増幅されるので、入力に加わる信号の大きさが大変重要だということになります

つまり、増幅器の入力インピーダンスは信号源のインピーダンスに対し、大きい程有利だということが言えるのです

具体的には、

通常、皮膚電極インピーダンスは約2KΩ位なので増幅器入力インピーダンスは通常2MΩ~10MΩとなるように設計されています

 

次に「② 皮膚・電極インピーダンスはできるだけ小さいこと」についてみて見ましょう

 

下図は、ホルター心電図の記録装置入力部分を単純化したもので、アーチファクトだけについて考えるため、心電図信号はゼロ(なし)としてます

ノイズ電圧Enは皮膚・電極で発生するアーチファクト信号

固定インピーダンスZfは皮膚・電極の等価回路のインピーダンスで変動しない成分

変動インピーダンスZvは、変動する成分

入力インピーダンスZiは、差動増幅器の入力インピーダンス(入力抵抗)です

入力電圧EiはZvにかかる電圧で、差動増幅器の入力電圧となります

 

次に②の問題、皮膚・電極インピーダンスの大きさについて見てみます

上図の回路では、増幅器の入力電圧Eiは、計算式のようになります

変動インピーダンスZvに対し固定インピーダンスZfが極端に小さいと仮定します

すると、Ei = Zv / Zv × En = En

となり、ノイズ電位がそのまま入力に現れてきます

これに対しZvに対しZfが極端に大きいと仮定します

すると、Ei = Zv / Zf × En ≒ 0

となり、Enはほとんど入力には加わらないことになります

また、Zf=Zvの場合は

Ei = 1/2 × En

となり、ノイズ信号の半分の大きさしか入力に現れないことになります

 

皮膚・電極インピーダンスは、変動インピーダンス成分が大きく占めまるので、インピーダンスは小さい方が心電図信号増幅には有利だし、ノイズの入力電圧が変動しないようZvの変動も少ない方がいいということになりますね

これが、できるだけ皮膚電極インピーダンスは小さいほうがいいといわれる理由です

因みに、皮膚・電極インピーダンスは乾燥状態で数10kΩ~数100kΩと言われています

そのうち、固定インピーダンスは数10kΩです

 

最後に③の理由については、差動増幅器の特性による要因が大きいです

差動増幅器は⊕入力と⊝入力(入力の極性を反転させる)があり加わった2つの信号の差分を増幅します

心電図信号であれば、⊕と⊝の大きさが異なるのでその差分が増幅されて信号出力されます

ノイズ信号は⊕と⊝入力で概ね同相同信号で入力するので、その差分はゼロとなります

皮膚電極間で発生するノイズや外部から誘導されるノイズは同相同信号なので、差動増幅器によりノイズ抑制ができるのです

これが、⊕と⊝入力で位相差が有ったり大きさが極端に違ってたりすると、信号入力の差分はゼロではなくなってそれが増幅されて出力されてしまいノイズの原因となります

この原因は、⊕と⊝入力の信号源のインピーダンスが違うことに起因します

なので、各々の皮膚・電極インピーダンスは同じ値(同じ状態)になるようにする必要があります

 

心電図をよりよく採るために必要な皮膚・電極のインピーダンスに要求されることをまとめると

 ・皮膚・電極のインピーダンスはできるだけ小さいこと

 ・もちろん、増幅器の入力インピーダンスが無視できるほど小さいこと

 ・+/-電極間のインピーダンスに差が少ないほどいい

 ・皮膚・電極インピーダンスの変動要因は少ないほどいい

 

・・・・と言うことになります

 

ここまでで、皮膚・電極インピーダンスと今回の心電図増幅器の関係の基本的関係が理解できたと思いますが、次回、インピーダンスとアーチファクトの具体的な関係について実際例で見ていきたいと思います

 

 

 

アーチファクトを減らそう ~先ずは皮膚・電極インピーダンスを理解しよう~

ホルター心電図では、混入するノイズによってはアウト!!という事態も起きかねませんね(せっかく24時間も装着してたのに至極残念な結果となることもあります)

何とかノイズを低減したいものですよね

ホルター心電図では、混入してくるノイズのうち中でも、人工的なノイズ所謂アーチファクトは容易に発生する構成だし原因が分かり難く結構厄介ですね

これまで、当ブログではアーチファクトについて「心電図に混入するノイズの話 その1~5」まででその種類と実際例を見てきました

これから、ノイズ低減のためにどう対処すればいいかをまずは、測定系の皮膚や電極周辺で発生するアーチファクトの成因を基本的なところから取り上げてみます

心電図を導出電極で発生するノイズなので、これは避けては通れませんね

如何にこれを低減するかという話になるので、発生する原因をぜひ理解したいところです

大まかに言って、測定したい心電図以外の信号はすべてノイズ=雑音として見ていいですよね

そして、人工的な要因で発生するノイズをここでは「アーチファクト」と言いたいです

なので、生体自体から発生する信号である筋電図、脳波、眼振、などはここでは考えません

 

ノイズを考えるためには電気的な知識として、インピーダンスと差動増幅器について基本的なことを知っておかなければ理解が進まないと思いますのでこれから数回に分けて取り上げてみたいと思います

 

 

さて、ホルターで使用される心電図電極はディスポーザブル電極です

その形状、材料等により種類がありますが、ここでは、下の模式図のようなごく一般的な心電図ディスポーザブル電極を見てみます

 

構成は、フォームバッキングに導出電極として銀-塩化銀電極を取り付け、皮膚との接触面を導電性ゲルで満たしたものを皮ふに貼り付けたものを考えます

 

アーチファクトと謂えどもある種の電気信号なので、測定系を電気的に考える必要があります

皮膚や電極を電気的に考えるにはどうするの?? って話ですよね

そこで登場するのが、等価回路という考え方です

これは、皮膚や電極の測定系の電気的特性を計測し、それと特性が同じようになる抵抗成分、容量成分、電磁誘導成分を持つ素子で電気回路を構成し、これを等価回路と呼びます

等価回路を構成する容量及び誘導素子は、周波数をもつ交流信号を回路に加えたときに抵抗値を持ちます(交流抵抗と呼ばれます)

もともとの抵抗成分(直流抵抗と呼ばれます)と、交流抵抗成分を合わせてインピーダンスと呼びます

 通常はインピーダンスの容量成分(容量インピーダンスと呼びます)、電磁誘導成分(誘導インピーダンスと呼びます)は、加わった周波数によって変化します

例えば、容量インピーダンスの大きさは周波数に反比例し、誘導インピーダンスは周波数に比例して大きくなります

一方、直流抵抗成分は周波数にかかわらず一定の値を取ります

 

皮膚や電極を信号源に対する等価回路は、その系の電気的特性により何通りかが考えられていますが、そのうちの一つで下図のような回路*を考えてみます

 インピーダンス等価回路(「星宮 望氏:「生体用電極の問題点」,心電図 Vol.4 No.1 1984」より抜粋)

 

皮膚・電極の模式図に対応して、下図のように皮膚・電極インピーダンス等価回路が考えられます

皮膚には皮膚インピーダンス、電極側には電極インピーダンスを構成します

インピーダンスは、直流抵抗成分と容量成分の並列回路で構成され、増幅器の入力に対し直列につながっていると考えられます

また、電極側には「分極電圧」と言う直流成分があります

分極電圧とは、金属電極と電極ペースト間で発生する直流成分です

そして、皮膚側には心電図の信号源があり、電極導子側にはホルター心電計の入力が接続されます

ホルター心電図の記録をする場合、この等価回路を使って測定系を見てみると下図のようになります

下図は、1つのチャンネル(1つの誘導)についてみたものです

測定回路

1つのチャンネルには、誘導したい部位にECG⊕信号入力とECG⊝信号入力用の電極が貼られ、さらに基準電位用に(言ってみれば、ニュートラル信号のようなもの)不関電極を貼ります

⊕⊝電極は、心電図信号源から先には皮膚と電極によるインピーダンス等価回路Zs⊕とZs⊝を各々通り差動増幅器の⊝入力と⊕入力に接続されています

(ここで、不関電極の皮膚・電極インピーダンスについては、基準電位として各入力共通の電位なので、考慮しなくていいと思うので省略します)

 

ここまでで、インピーダンスについての基本的な理解は進んだと思いますが、アーチファクトの発生について考える場合に、もう一つ心電図信号を増幅する差動増幅器の特性についても知っておいた方がいいと思いますので、次回それについてみて見ましょう

 

 

ホルター心電図の誘導法については、下記ブログ参照してください


himonzy-papa.hatenablog.com

 

次回は、これらのインピーダンス変化が心電図信号を増幅する差動増幅器に対しアーチファクトに関してどういう影響を及ぼすかについて見ていきたいと思います

 

 

QRS波形をベクトルで読み解く その4(左脚ブロック心電図)

「QRS波形をベクトルで読み解く その4」 は、前回が「右脚ブロック」とくれば、左脚ブロックですから(?)今回は左脚ブロックの波形から起電力ベクトルを推測してみましょう

図の2誘導は、CH1:CM5誘導でCH2:NASA誘導です

左脚ブロックも特徴的な形状していて、CH1ではRR'波形、CH2ではrS波形'が一般的です

早速、Q/R/Sセグメントに分けてみて見ましょう

考え方は前回と同じですね

各時相において、波形の大きさを各誘導にとり(各誘導に沿った緑の細い矢印)、それぞれの垂線(緑の点線)を下ろして交点をとり、基点からその交点までを結ぶと、そ大きさと向きがその時相における起電力ベクトルとなります

そして、このベクトルは基点に平行移動したものなので実際の起電力ベクトルの位置は、その時相で起きてる心室の収縮の最大値を取る場所と見なして推測します

 

下図を見てください

まず、①の時相です

CH1のR波の立ち上がりがCH2よりも早くで、①時相のCH2は0mv、CH1はR波立ち上がり始めで約+0.3mv位ですね

方向は、殆ど電気軸0度あたりですね

これは、左心室側が右心室側よりも早く興奮してることを表してますね

正常ならこの時相では、中隔は左室側から右室側に興奮するのですが、左脚がブロックしてるので中隔の興奮は、右室側から左室側向くことになります

で、起電力ベクトルは心室中隔辺りにあると考えると図の①の緑(太線)矢印のようになります

そのため、左室側で誘導する波形は中隔興奮のQ波がありません

もしあったら、それは左脚ブロックではないと考えていいようです

 

次に②の時相です

CH2のR波ピークで、CH1は既に立ち上がってるので+1mv、CH2は+0.3mv

先ほど同様、各誘導での波形の大きさをそれぞれの誘導にとり心室の起電力ベクトルを推測すると、R波のベクトルは下側、右室方向に向かってるのが分かります

ブロックでなければ左室側に向くのですが、左脚ブロックでは先に右室側が興奮するので、この時相では右室側興奮による起電力となり図の②赤矢印(太線)のようになります

なので、CH1のR波は立ち上がり途中、CH2はr波ピークの波形となります

教科書的な左脚ブロック波形であれば、この時相でのCH1のR波はもう少し右室側に向き大きさが小さくなりrR’のノッチがよく見られるのですが、ここでは現れてきてませんね

 

③はCH1のR波ピークの時点で、+1.5mv、CH2はS波で+0.8mv 位

この大きさを各誘導に取り同じように処理すると、③の時相の心室の起電力ベクトルとなります

CH1のR波ピークで、CH2のS波もピークだということは左軸偏位が起こって、なおかつQRS幅が広いので作業心筋を伝導して左室側に向いてることが推測されます

興奮は右心室から左心室へとの興奮が伝わってることとなり、ベクトルの最大の位置は左室側と考えていいでしょう

 

各々のセグメントで①~③の時相を見てみましたが、見慣れた左脚ブロック波形の起電力を連続してイメージすると、波形と心臓の刺激伝導、興奮の関係がよりよく理解できますね

下図に、QRS波形の起電力ベクトルの時間変化とCH1:CM5誘導での波形を図形化したので参考にしてください

 

LBB起電力ベクトル動画