ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 心電図解析や四方山話します

ホルター心電図ブログ開きました

ホルター心電図のブログを開設しました

ホルター心電図の解析に携わって、日々心電図を見ているといろんな波形や症状やイベントに出くわします

一日中記録器を携帯して記録した心電図

それは貴重なデータです

それをできるだけ正確に精密に解析し報告書にまとめ医療者の診断治療等に供するのが、その役目だと考えています

しかしながら、その精度や信頼性を確認もできなければ、専門医師などからの指導を容易に受けることはかないません

そこで、今まで培った知識や経験をもう一度まとめて整理して検証したいことと、

ホルター心電図解析で日々疑問に思うことや悩ましいことなどについて、アウトプットして意見をいただき

ディスカッションなどできればいいなぁと思いブログ開設に至ったわけです

それと、

日々出会う心電図の中、そこにある貴重な心電図やホルターの話、それにまつわる四方山話を書いてゆきたいと思います

 

なんとなく(明確な根拠が示せない)こうかなって思うが、はっきりと判らない心電図の判読ってよくありますよね

でも、判らないままにしたくなくて、恐らくこうだろうってことでやや無理やり理由付けするような中途半端な解釈に対し、「いやいや違うね、これはこうだろう」と教示してもらういたい場合、当ブログのカテゴリーを「これなに!心電図」としました

 

このブログを通じて、多少でもホルター心電図を解析する、或いは診療に供する方々のお役に立てればと思い発信しています

 

 

RRインターバルグラフに現れたものはなに? (再びPACの3変化―これは様子が違う)

特定の時間帯、早朝午前3時と6時の時間帯でRR間隔が突然に且つ多様に変化し、

PACが形態変化しているホルター心電図があったので採り上げててみたいと思います

 

70歳、男性、ホルター心電図記録中に症状はありませんでした

基本調律は洞調律で、最大/最小/平均心拍数 135/57/85BPM 

単源性PVCが0.03%、早期収縮のNarrow QRS(PAC)が0.19%、さらに特定の時間帯に集中してPACと長いRR間隔が発生していました

以前の記事で「PACの三変化」としてPACが、心房性~変行伝導~Blocked に変化する現象を採り上げました

今回は同じようなPACの2変化ですが、ちょっと様子が違っていて、RR間隔の突然の延長なども紛れ込み、自ずとその原因も違うだろうと思われるので、RR間隔の変化をプロットしたトレンドグラフとローレンツプロットを探りどんな現象が起きてるか、その原因を前回同様検討してみたいと思います

以後使用するRR間隔に関する用語について下記のように決めておきます

・RRインターバル:RR間隔をプロットしたグラフの呼称

・基本調律:RR間隔の大きな変化が起こる前後の最頻出モフォロジーによる調律(通常は洞調律)

・RR間隔:隣り合ったR波間の時間間隔

・RR/RR’/(例)AB:記号で表された波形間の時間間隔及びその値

(RR:基本調律のRR間隔/RR’:基本調律Rと期外収縮R’のRR間隔/(例)波形Aと波形Bの間隔)

また、使用する表示記号、名称等について、参照する図中に表示されるのでそれらを参照してください

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目次

1.RR間隔をグラフ化すると? 

(1)RRインターバルトレンドグラフとは?

(2)RRインターバルトローレンツプロットとは?

2.RR間隔プロットのグループ化と心電図波形

㋑洞調律(Sinus Rhythm) 

1-どんな波形?

2-プロットの特徴

㋺Isolated PAC

1-どんな波形?

2-プロットの特徴

3-PACセグメントと先行RR変化の関係

㋩Blocked PAC

1-どんな波形?

2-プロットの特徴

㋥RR延長(RR Prolong)

1-どんな波形?

2-プロットの特徴 

3.先行RRの変化に伴うPAC形態の変化

(1)Isolated PAC-1~Isolated PAC-2グループへの変化

(ⅰ)通常のPACの連結期の変化は?

(ⅱ)Isolated PAC-1の連結期の変化

(ⅲ)Isolated PAC-2の連結期の変化

(2)Isolated PACからBlocked PACへの変化

(3)Prolong RR とPACの関係

4.先行RRと時間間隔セグメント変化の関係は?

5.心室性期外収縮のローレンツプロット

6.IsolatedPACとBlocked PACが交互に出てくるのは?

7.同じPAC三変化でもその発生要因は違っていた

 

1.RR間隔をグラフ化すると

RR間隔の不整の要因などを考えるためには洞刺激間隔(SS間隔)(延いてはPP間隔)を見る必要がありますがホルター心電図の解析装置にはその機能がない様です

(S波は波形がないので、またP波は電位が低く周波数成分も低いため検出できないと思われます

もしかして最近では検出機能を備えたものもあるかもしれませんが

なので、やむを得ずRR間隔からのアプローチということになってきます)

RR間隔をプロットしたグラフには、トレンドグラフ、ヒストグラム、レシオ、ローレンツプロットなどがあり其々の有効性がありますが、ここではトレンドグラフとローレンツプロットを採り上げます(この解析に使用した装置の仕様によってこの2つに制限されてしまいました)

(1)RRインターバルトレンドグラフとは?

下「図トレンドグラフ」の「RRインターバルトレンド」を参照ください

 

トレンドグラフは横軸に時間経過、縦軸に何をプロットするかで心拍数、RR間隔、PAC、Blocked PAC発生数の他に、PVC発生数、Pause、Afなどの表示機能を持つものもあります

 

RRインターバルの場合は縦軸にRR間隔 N をプロットしているので、その変化の大きさと時間関係(発生時刻や継続時間など)、RR間隔変化の推移が判ります

一般的な洞調律の場合(不整脈を除くと)、24時間全体で見ると心拍数は身体活動と共に緩やかに変化し、そのプロット数が多くなると太線様のラインができます

不整脈は縦軸の変化としてプロットされるので時間軸に対し数種類のグループが形成されます

また、心拍数とRR間隔は定数60の反比例関係にありますトレンドグラフ上は線対称をなす関係にあります(ただ、心拍数は移動平均値で、RR間隔は瞬時値で表現されていると思われます)

(2)RRインターバルトローレンツプロットとは?

下「図 RRインターバルローレンツプロット」を参照ください

ローレンツプロットは、横軸にある時点のRR間隔 Nをとり、縦軸にはそれに続く直後のRR間隔 N+1をプロットしてあります

そして、グラフは心室性調律(PVC)と心室性以外の調律(所謂洞性及び上室性)の2つに分られています(それが使用している解析装置の仕様になっています)

 

■PVC(心室性期外収縮)の場合は、

横軸「N」はPVCに先行する基本的な調律のRR間隔を、縦軸「N+1」はPVC直前とのRR間隔(つまり連結期)をプロットします

なのでPVCの連結期のグループが表示されます

 

■PVC以外(洞性調律、上室性調律)の場合は、

隣り合ったRR間隔が連続的にプロットされます

基本的調律はある程度の変動幅を持った1本の直線(y=x)で明確に示されます

RR間隔が変化数する場合は、例えばPACであれば、

RR間隔(先行)~ RR間隔(PAC連結期)~ RR間隔(PAC休止期) ~RR間隔(後行)が連続的にプロットされるので、

 

まず、横軸「N」にPACが起きる前の先行RR間隔、縦軸「N+1」にPACの連結期を、

次に、横軸「N」でPACの連結期、縦軸「N+1」でPACの休止期を、

次に、横軸「N」でPACの休止期、縦軸「N+1」でPACが起きた後の後行RR間隔を、

各々連続的にプロットします

不整脈などによるRR間隔の大きな変化があると、それらのプロットは基本的な調律から大きく外れて異なるグループを形成することになります

また、(後から検討することになりますが)RR間隔が変化して基本的調律に戻るまで2~3ステップを経るため小グループが形成されます(図中 (a), (b), (c))

念のためですが、グラフが表していることは、横軸は縦軸が直線近似し比例関係にあるものの、これが因果関係ではなく、パラメーター(横軸も縦軸もある同じ変数をもつ関数)の存在を示すものであるということを確認しておきたいと思います

2.RR間隔プロットのグループ化と心電図波形

この解析におけるRRインターバルトレンドグラフとローレンツプロットを観察すると、基本調律によるものと、RR間隔の大きな変化に対応した主な3つのグループが形成されています

各々を ㋑洞調律、㋺IsolatedPAC、㋩Blocked PAC、㋥RR Prolongと名付けておきます

グラフ上でのグループ分けとそこに属する実際の心電図(代表例)を以下に示しします

各々のグループについて、どんな波形でそれらの特徴について見ていきましょう

㋑洞調律(Sinus Rhythm)

1-どんな波形?

基本調律がこれで表されます

RR間隔(RR)が凡そ0.5~0.8秒(75~120BPM)のトレンドグラフのプロットで最も多く集合している太線で表され、比較的緩やかに変化し、生活活動と共にその大きさが変化する基本的な調律です

ローレンツプロットでは 、y = x 上に展開される最多のプロットグループで太い線で表されていて、その長さは最大~最小心拍数を表し、その太さは変動幅を表しており、これは整の調律を意味していて、波形形状からもこのグループが洞調律と言えるでしょう

PRは0.2~0.3秒位で1度房室ブロックとなっています

2-プロットの特徴

ローレンツプロットは隣り合ったRR間隔をプロットするので、心拍数の変動により自律神経活動を間接的に評価するものと言われています

日常生活の中で心拍数は活動の身体的あるいは精神的負荷などに応じて暫時変化し、基本的にはy=xの直線上にプロットされます

そして、短い時間でのRR間隔の変動はy=xの直交方向にプロットが膨れて幅を持ちます

また、RR間隔を長い時間でみた変動はy=xの最大値と最小値の間にプロットされます

RR間隔が短い方のエリアに比べ長いエリアでは副交感神経が優位となりその変動も大きくなるようで、垂直方向の変化は大きくなるのが通常のようです

㋺Isolated PAC

1-どんな波形?

波形については、「図 波形計測 Isolated PAC-1/,-2」を参照してください

PACは、RRインターバルトレンドグラフで凡そ0.4~0.8秒のRR間隔の連結期(RR’)を持つ期外収縮のグループです

経時的な発生頻度については、「図 トレンドグラフ PACトレンド」を参照してください

波形をよく見ると図に示したように、発生する時間帯によってはPACのRR’が長短2種類のものが有るようです

これを、「Isolated PAC-1」,「Isolated PAC-2」と名付けておきます

この違いがなぜ起きるかは後述3.で検討することにして、ここでは波形がPACであることを確認するため、図 Isolated PAC-2を取り上げてみます

波形を見ると、これはR’の前後に一見P波(P’)が見えなくてR’の形状が洞調律と同じなので接合部起源の上室性期外収縮(PAC)かなと疑いました

そこでPACのP’Pでもあるリターンサイクル(RC) を経験式で求めてみると、

PP 0.84秒 + PR 0.28秒 = 1.12秒 = RC

ではP’がどこにあるかと、PAC直後のPから手前に1.12秒戻って探してみると、ありました

T波の立上がり付近です

実測でP’P = 0.10秒でした(計測誤差範囲?)

P’の起源は、P’R’が先行のPR 0.28秒より短くないことと極性が正と見ると心房起源(形状がはっきりしていないですが右房かな?)と推測できませんか

また、P’R’が0.42秒とかなり延長している点が気になりますがこれは後で検討することにします

ここで、R’を伴うPACをR’のないPACと区別するために、単発の上室性期外収縮を「 Isolated PAC」と呼ぶことにします

で、この波形は2種類のPACのうちの一つで 「IsolatedPAC-2」としています

残り1種類のRR'が延長したPACについても上記と同じように見ると、RCが0.82秒でそこから推測するとP’はT波の頂上に位置しているようです

このPACを、「Isolated PAC-1」 としています

図のローレンツプロット上に、この2種類のPACが図中 破線表示でIsolated PAC – 1、Isolated PAC - 2に分けて表示しています

 

この2種類のIsolated PACは、

・Isolated PAC-1は、

  03時台と06時台以外の時間帯に発生

  先行RRが凡そ0.4~0.7秒以下ではRR’が0.3~0.5秒に変化

  PP’は0.4秒ぐらいでP’R’が0.3秒前後に延長

 

・Isolated PAC-2は、

  03時と06時台に特長的に発生

  先行RRは0.8秒位、RR’は0.6秒前後、

  PP’は0.4秒ぐらいでP’R’が0.4秒位に大きく延長

 

先行するRRの変化に伴う連結期(RR’)の違う2種類のIsolated PACは、ローレンツプロットグラフ上で、RRの0.4~0.8秒の変化に伴いRR’が凡そ0.3~0.5秒に変化するグループと、0.6秒台に変化する2つのグループに分かれて表示されていることが解りました

この発生機序については、後で検討したいと思います

2-プロットの特徴

Isolated PACのRR間隔の変化は、「図 RRインターバル ローレンツプロット」中の(㋺)Isolated PACプロットで表され、そのグループは

  ・RR(洞調律)~(a)~ RR’(連結期)~(b)~ R’R(休止期)~(c)~ RR(洞調律)

と変化して更に各グループを作り、(a) →(b)→ (c) とプロットが移動していきます

(a)と(b)は、y=xを中心とする線対称付近に集まりに近く、(ⅽ)は(a)の上方に直線に並行に位置する関係となることがわかります

3-PACセグメントと先行RR変化の関係

Isolated PACのPP’、P’R’、RR’などの時間間隔セグメントの先行RRとの関係を調べるために、それらを波形からサンプリングして、RRを横軸にグラフ化してみると、RRの変化に伴って各セグメントが直線近似できる比例関係にあることが判りました

但し、PP’だけは例外でほぼ一定であることも判りました

これが今回検討しているPACの連結期の変化にとって重要なファクターであることが後で解るようになります

㋩Blocked PAC

「図 波形計測 Blocked PAC」 を参照してください

1-どんな波形? 

洞調律のプロットから大きく変化して延長しRR間隔が凡そ1.4~1.5秒となるグループです

トレンドグラフでは03時と06時に特長的に発生していることが判ります

波形を見てみましょう

前後のR波はP波が見えていて洞性調律です

そこに先行RRより長く、またその2倍よりは短く、且つP波が(一見見えていない)ないとなればWenckebach型洞房ブロックや洞性不整脈あるいは呼吸性不整脈を疑いますが、先行及び後行のRRは洞調律で一定で変化してないことからちょっと違いそうです

そこで、

先行するPPが0.84秒でPRが0.30秒なので、0.88+0.28=1.16≒1.14秒

これを1.6秒のRRのなかに入れて見ると、どうも上記PACで出てきたリターンサイクルと同じようです

後続するP波の1.14秒前の時点をよく見ると、そこには早期のP’が見つかりR’が脱落してることが判ります

これは所謂 Blocked PACですね

P’があっても伝導出来ずR’を伴なわないPACです

ここで発生しているP’は、上記のIsolated PACと同じもののようですが、PP’が同じなのにも拘らずBlocked PACとなってています

これはなぜでしょうか?  後の6.で検討してみることにします

2-プロットの特徴

Blocked PACのRR間隔の変化は、「図 RRインターバル ローレンツプロット」中の(㋩) Blocked PACプロットで表され、そのグループは

  ・RR(洞調律)~(a)~ RR(Blocked) ~(b)~ RR(洞調律)

と変化して各グループを作り、(a) →(b)とプロットが移動していきます

(a)と(b)は、ほぼy=xを中心とする線対称に近い関係となることがわかります

㋥RR延長(RR Prolong)

「図 波形計測」中 「RR Prolong」を参照してください

1-どんな波形?  

RRが急激に凡そ1.1~1.3秒に延長するグループです

トレンドグラフでは03時~06時にだけ発生していることが判ります

また、時間軸で見るとこのイベントの始まりと終わりでBlocked PACが発生していることも特徴的です

波形を見てみましょう

RRが急激に延長しそれが数拍かけて次第に元に戻る変化が起きています

この時間帯でのRR間隔、特にこの間のP波、R波及びPRがほとんど変化しない洞性調律で、変化のタイミング的に洞房ブロックには該当せず洞性不整脈のように見えます

RRの変化の仕方は、それが突然延長した後徐々に元の間隔に戻る様な動きをしていることが判ります

圧縮心電図などでこの変化を見ると、深夜3時から6時の間、同一時間帯で4~6秒周期の規則性が観察できます

それは、

・変化の周期を、4秒とすると1分間では15回の変化

・心拍数が約75BPMの場合は、周期の比率 75:15 = 5

・RRの変化が0.84秒~1.18秒なので、変動幅は0.34秒とかなり大きい

・R波波高値はRRの延長~短縮によりその大きさが少し変化

上記の計測から、

洞調律でPR間隔一定、変化の規則性(周期)、変化の周期と心拍数との比率が5、発生が夜中から明け方(睡眠時間帯と想像される)、R波波高値変化などを勘案すると、これは呼吸性の洞性不整脈だろうと推測できませんか?

2-プロットの特徴

Prolong RRの変化は「図 RRインターバル ローレンツプロット」中の(㋥) Prolong RRプロットで表され、そのグループは

  ・RR(洞調律)~(a)~ ProlongRR ~(b)~ ProlongRR   ~(c) ~ RR(洞調律)

と変化してy=xの線対称としてこれをを取り巻くように各グループを作り、(a) →(b)→ (c)とプロットが移動していきます

(b)~ (ⅽ)は、呼吸によるRRの変化によっては複数のグループが作られ、y=xの水平と垂直方向の変動幅がかなり大きく表れます

3.先行RRの変化に伴うPAC形態の変化

ローレンツプロット上でグループ間の移行で起こる先行RR間隔の変化に伴うPACの形態変化について詳しく見てみましょう

(1)Isolated PAC-1~Isolated PAC-2グループへの変化

Isolated PACのグループは先行RRの変化に伴う2種類の連結期変化パターンが観察され、これをIsolated PAC -1と-2に分けました

先ず通常のPACで起きる連結期の変化と比べてみましょう

(ⅰ)通常のPACの連結期の変化は?

洞刺激間隔つまりRRが変化するとそれに伴って、上室の刺激伝導系の時間間隔セグメンである洞房や房室伝導時間、及び各々の不応期なども変化します

これは、洞結節及び上室の刺激伝導系が同時に副交感神経の影響を受けるので、各々のセグメントは影響の度合いが異なるもののそのコントロール下にあると言われています

(この件については、後で再掲します)

PACのローレンツプロットは基本的に、RRの変化に比例してRR’がほぼ直線的に変化し、その時の変化の程度は、近似直線の傾きの大きさとなります

これは通常、洞調律のPP間隔の変化に対し主にはPP’がそれに直線的に変化するためです

(P’R’も多少変化するはずですがPP’の変化がより大きいものと思われます)

(ⅱ)Isolated PAC-1の連結期の変化

Isolated PAC-1のグループの連結期のプロットが、上記(ⅰ)の通常の連結期変化に該当しています

但し、ここでは通常の場合とは少し異なること起きているようです

それは、上述したようにPP’はRRに拘わらず0.4秒のほぼ一定であることがわかっているので、このグループの連結期の変化は、主にRRに変化と同時に起こるP’R’の変化によるものであろうと推測されます

(ⅲ)Isolated PAC-2の連結期の変化

ところが、RRが0.8秒以上になると連結期の変化が少し違っているようです

(これらの計測のサンプル数が少ないため、以後は演繹的推測になっています)

Isolated PAC-2のグループがこれになります

グループ内のプロットはPAC-1同様に直線近似していますが、その傾斜が急に大きくなり連結期が大きく延びているように見えます

計測値で言えば、RR’が0.46秒から0.54秒に延長しています

 

これがなぜ起こるのかと考えてみると、

RR’の変化(この場合は急激な延長)は、PP’かP'R’が変化する必要があります

PP’はほぼ一定であることからIsolated PAC-1同様に、P’R’の変化(この場合は急激な延長)によるものだろうと考えられます

波形で見ると、RRが0.8~0.85秒になるとP’R’はそれまでの0.28秒から急に大きく0.40秒まで延長しています

 

では、P’R’のこの急激な延長についてはどう考えればいいのでしょうか

2通りの推測を考えてみます

(その1)

基本的にはP’R’の延長は、RRの増加と同時に起こる房室接合部での不応期の延長と考えられるので、それが急に大きくなった現象(その理由は?ですが・・・)とすることができるかもしれません

(その2)

しかし、もう一歩踏み込んで以下の推測をしてみます(ここからはほとんど実証のない推測となりますが)

それには房室結節の、FP(速伝導するが不応期は大きい)とSP(遅伝導するが不応期は小さい)の2重伝導路という考え方を引っ張り出します

通常は、心房からの刺激がFPから先に心室に伝導し、SPからの伝導はブロックされます

RRの延長と共にFPの不応期は大きくなり、PACのP’R’も大きくなります

ここで、FPの絶対不応期にP’が来るとFPの伝導はブロックされてしまいます

そうなると、SP(は不応期を脱していると仮定)からの伝導が起こり急激に伝導時間が大きくP’R’が延長することになります

この後はPACの休止期を経て通常の伝導に戻ります

・・・ 以上のような2通りのメカニズムを推測してみました

(2)Isolated PACからBlocked PACへの変化

「図 波形計測」の連続した12秒のなかで、Isolated PAC-2とBlocked PACが同一時間帯で交互に発生しています

ローレンツプロットで各々のグループを見れば、先行RRの違いであることは明らかで、先行RRが0.85秒位まではIsolated PAC-2で、それ以上はBlocked PACに変化しています

 

この変化については次のような現象を考えます

副交感神経の支配により、先行RRが大きくなるに伴い洞房や上室の刺激伝導系の時間ファクター、洞房や房室伝導時間、不応期などの各々が延びます

一方PP’だけはほとんど変化せずほぼ一定になっています

このことから、先行RRが0.85秒以上大きくなると房室結節の不応期がより延びて心室への伝導が途絶してBlocked PACとなると考えられます

(また、仮に房室伝導して心室でブロックとも考えられますが、心室の不応期はそれほど影響受けず延びないと思われるので心室でのブロックはなさそうです)

(3)Prolong RR とPACの関係

RRインターバルトレンドグラフで見ると、これらのグループの発生している時間帯(03時30分~06時30分頃)では時刻の経過と共にRRが徐々に大きくなっているので、ローレンツプロットの横軸(先行RR)がこの時間帯では時刻経過と見なせますね

ローレンツプロット上ではRRの連続的な延長と共にP’R’の大きな遷移は、

Isolated PAC ⇒ RR Prolong ⇒ Blocked PAC ⇒ Isolated PAC-1

へと変化しています

先行RRとRR Prolongグループ発生の間には何か関係があるのでしょうか

これを見ると、先行RRの変化に伴う各時間間隔セグメントの変化のような感じがしますね

ところで、RR Prolongの波形は、上記「1.  (3) ㊁ RR延長(RR Prolong)」で検討したように、洞調律の呼吸性変化と考えました

なので先行RRの変化とは直接的には無関係だろうと考えたいところです

これをどう考えればいいのでしょうか?

4.先行RRと時間間隔セグメント変化の関係は?

上述で見てきたように、上室の刺激伝導路の各時間間隔セグメントの変化(間隔や時間、期間など)は、先行RR間隔の変化とは因果関係になく比例関係にありそうです

そのため、各セグメントの時間変化が起こるためのパラメーターの存在が示唆されます

それは何なのでしょうか?

RRインターバルや心拍数のトレンドグラフで見られるように、生活の時間経過と共にRR間隔が変化していることと、RR間隔と各セグメントが同時に比例関係で時間が変化することから、

変化を起こす第一の要因は、今問題にしているRR間隔が安静時と思われる凡そ0.85秒(70BPM)以下で顕著になる「副交感神経の支配」によるものだろうと推測します

 

*「副交感神経」の理解について

(副交感神経が洞房及び上室のセグメントにに対する支配及びその影響のメカニズムについて詳細は持ち合わせておりません

なので、ここで言う「副交感神経の支配」という概念は抽象的意味合いで使用しており、またその「影響」とはその範囲と強度によって各セグメントの時間間隔、伝導時間、不応期などが時間変化を起こす程度を意味しています)

 

これを踏まえて、先に検討したRR Prolongの要因について、副交感神経の影響をベースにして以下の様に考えてはどうでしょうか

・房室接合部の伝導時間増加(P’R’)の増加  Isolated PAC-1 ~ Isolated PAC-2

・房室接合部の伝導ブロック  Blocked PAC

・RR増大によるPACの抑制

・深い呼吸の発生による副交感神経影響大で洞調律変化の顕在化 RR Prolong

・PACの発生に伴うBlocked PAC ⇒ Isolated PAC-1

 

これで、Isolated ~ Blocked ~ RR Prolong ~ Isolated PAC-1 へと続く一連のRR間隔の急激な変化の要因について理解することができるのではないでしょうか

また、今回のちょっと不思議な感じの現象、

「PP’が先行PP(RR)の変化に拘わらず一定である」ことについて見ると、副交感神経の支配(影響)が余り及ばないためと考えることもできそうです

5.心室性期外収縮のローレンツプロット

図 RRインターバル ローレンツプロットの「心室性」のグラフを見てください

 

先行する洞調律のRRが0.45秒~0.8秒と変化するのに対し連結期(RR’)は0.4秒~0.5秒と余り変化していないように見えます

直線近似では、傾きが約0.3と小さくなっています

単源性PVCの場合は大体が、傾きはもっと小さく殆ど変化しない直線的になるようです

これがPVCのローレンツプロットの連結期表示パターンの特徴と言われています

その理由は、上室性の刺激伝導系の時間ファクター、例えば洞調律のRR、洞房や房室伝導時間などは、副交感神経の影響を受けやすく洞調律のRRが大きくなると他の伝導系も同様に影響を受けて各々のファクターは大きくなります

ところが、心室は自律神経、特に副交感神経の影響を受けにくいのでRR間隔が大きくなってもその影響が殆どなく、連結期は延びること無くほぼ一定になることが多いと言われています

(多源性や副収縮、他の状態により一定にはならずに特有のプロットパターンを形成することもよく観察されます)

このようなことから、PVCのローレンツプロットは、変行伝導や心房細動のwide QRSが上室性か心室性かを区別する一助となる有力なツールにしています

(PVCローレンツプロットの詳しい話は、別途後日行うこととしましょう)

6.IsolatedPACとBlocked PACが交互に出てくるのは?

先に「図 波形計測」でIsolated PAC-2とBlocked PACが交互に発生する現象を見ました

「2. (2) ② Isolated PAC からBlocked PACへの変化」で検討したとき、Isolated PAC-2 ~Blocked PACの変化は先行RRの延長に伴うP’R’の延長と房室結節の不応期の延長によりこの現象が起きると判りました

Blocked PAC~Isolated PAC-2 に戻る時は、その逆の現象となり、交互発生が起こると考えられ、その要因は先ほど見たように「副交感神経」の影響によるものと思われます

そのため、ホルター心電図では昼間にIsolated PACが、夜間にはBlocked PACが頻度が高く発生することは多く経験されているとの報告もありました

7.同じPAC三変化でもその発生要因は違っていた

PACの形態変化と言えば、

以前のブログで取り上げた「PAC三変化」は、PP’が変化して心室(接合部)での不応期に対するP’の位置する時点が変化して、IsolatedやBlockedのPACに変化しています

今回取り上げたPACの形態変化の原因は、PP’が一定でRRが変化したため房室結節の不応期に対するP’の位置する時点が変化して、IsolatedやBlockedのPACに変化していました

同じPACの形態変化でもその発生要因が異なっていることが判りました

 

 ーーーーーーーーーー END ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

QT延長について考えてみる

目次

1. どんな波形が​? 

(1)波形パラメーター 

(2)QTcの計測 

2. QT延長の種類 

(1) 原因別

(2) 波形別 

3. QT延長の発生機序

(1)QT延長はどのように発生するか 

①T波時間の延長 

②ST部分の延長 

③ST部分とT波時間の延長

(2)この心電図はどうでしょうか 

(3)QT延長によるトルセード・ド・ポアンツ(TdP)

①現象 

②発生機序 

(4) 低Ca血症のQT延長 

 

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QT時間が延びているかな?と思われる心電図波形を見ることは稀ですが、それでも何かしら重要な心電図変化を感じます

そのような心電図でも、平低T波、2峰/2相性T波、TU波などがありでT波終点がはっきりしないことも多く??となってしまいませんか

今回、QT延長が顕著と思われるホルター心電図でその計測とQT延長について検討し、更には「QT延長症候群」を疑う必要があり、それらについても検討してみました

「QT延長症候群」は各方面でいろいろなアプローチから研究されていて臨床的にもガイドラインがあったりとより多くの資料が参照できるので、ここでは専門的な事項は引用/参照としてリンクさせて頂きました

 

QT延長症候群(LQTS)は、早速ですが以下の様な定義となります

「先天性または後天性の心筋イオンチャネルの機能または調節異常(チャネル病)に起因して心室筋細胞の活動電位持続時間が延長する病態であり,心電図検査では心拍数で補正したQT間隔の延長として現れる。患者にはトルサードドポアント(torsades de pointes)と呼ばれる多形性心室頻拍が発生するリスクがあり,この不整脈は自然に治まることもあれば,増悪して心室細動に移行することもある。診断には臨床基準と心電図検査のほか,ときに運動負荷試験および/または誘発試験による。治療では誘因の回避,β遮断薬のほか,ときに植込み型除細動器が用いられる。」

(MSDマニュアル プロファッショナル版より抜粋)

 

これでは、QT延長が疑わしい場合はより注意深く心電図を観察する必要がありますね

同時にその知見も深めなければ疑うことすらできませんね

 

QT時間が延びる心電図の診断としては「QT延長症候群(LQTS)」があり、先天性や2次性(薬剤、心疾患などによる)又はその合併が要因となるようです

先天性LQTSの診断は、そのリスクスコア(Schwartzスコア)等により行われていてQTcが0.5秒以上で確実、2次性のものについては薬剤、心疾患等の外的要因によりQT延長が0.45秒以上あったものと定義されているようです

 

*「QT症候群とは何か」について症例と共にその要因や発生機序、診断から治療までについて明解な説明がされている資料がありますのでぜひ参照してください

   ↓

QT延長症候群

https://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-fujita-221213-5.pdf

       「Clinical Question 2022年2月14日

       藤田医科大学 救急医学・総合内科学 五島隆宏 日比野将也」 より

 1.どんな波形が​?

QT時間が0.68秒あり、明らかにQT延長しているホルター心電図(QTc=0.58秒)が以下です

  

 (1)波形パラメーター

   波形パラメーターは、

   PR間隔 1.20秒(50BPM)、ST部分 0.28秒(顕著に長い)、QT時間が0.68秒、T波時間 約0.3秒(ちょっと長めか)、T波波高 0.8mV (やや高めか)です

   波形を見ると、洞性調律ですが、RR間隔に比してQT時間がと特に長くみえRR間隔の半分以上となってるので明らかにQT延長が疑われます

   S波部分はスラーかノッチかが判然としないJ波のようになっています

   その後のST部分は平低に低下して延長し、T波は立上がりが急峻でやや先鋭化しているいるように見えますがQT延長のためでしょうか、これが特徴的に見えませんか?

 (2)QTcの計測

   QTcはQT時間から経験式を用いて計算されます

 

   まず、QT時間は、Q波又はR波開始点からT波終了点までを測ります

   T波終了点は以下の2つの方法で計測されています

     ・微分法:T波下降の変化がなくなる点

       活動電位の3相が終わる点、T波が基線となる点なので再分極の終了点となります

     ・接線法:T波下降変化が最も急峻な接線と基準線の交点

       3相の電位変化で、変化速度の最大点からその後直線的に電位が低下すると仮定して基準線との交点がT波終了点と見なす考え方でしょう

   多くが接線法を用いての計測のようですね

     ・基準線:P~T波を結ぶ線は変化を受けやすいため、T~P波を結ぶ線が用いられます

 

  実際の波形を計測してみましょう

  次に、QTcですが、補正式は3種類ほどあるようですが、

  診断スコアの推薦通りにBazettの補正式を用いると、

  QT:QT時間   RR:RR間隔

  QTc(Bazett補正式) (秒) = QT(秒) / √RR(秒) 

                      = 0.64 / √1.20 = 0.58秒

  となります

2.QT延長の種類

 (1)原因別

   QT時間が延長するその原因としては上述のように、

    ・先天性

      遺伝子の変異によるQT延長症候群で遺伝子の型は17以上あるとされるが、LQT1~LQT3が殆どをしめています

    ・後天性(2次性)

      薬剤、電解質、心疾患、

      先天的な要因が潜在していて後天的に発症

   の2つに分けることができます

 (2)波形別

   QT延長は、心電図波形の延長する部分によって、

    ①T波時間の延長

    ②QT部分の延長

    ③T波平低化(QT時間全体が延長)

   の3種類が主で、原因によって変化します

3.QT延長の発生機序

 QT延長の発生機序を考える前に、ST部分~T波の心筋活動電位による心電図波形の成因について復習しておきましょう

 以下の過去記事を参照してください

         ↓

himonzy-papa.hatenablog.com

 (1)QT延長はどのように発生するか

   QT延長を波形別にみると3種類あったので、これを心筋活動電位の変化からその機序を見てみます

 

   QT延長とその活動電位の変化について分かり易い説明なので下図を参照してください

先天性QT延長の活動電位

   ①T波時間の延長

    2相(プラトー相)は変化せず、3相(再分極相)が延長します

    3相自体が延長することでT波時間が延長します

    再分極の開始付近でで外向きK+イオンの緩徐成分が減少して再分極時間が長くなります

    これだけでは分かり難いので補足してみると、

    心内膜側と心外膜側の再分極の活動電位(時間)差がT波を作るので、再分極時間が各々長くなればそれに伴ってT波持続時間も長くなると考えられます

    また、再分極の時間が心内膜側と心内膜側で各々異なっていてもこの現象が起こることも推測できます

    T波時間の延長は、先天性ではLQT1、後天性ではK、薬剤、自律神経などの影響によるようです

 

  ②ST部分の延長

    3相はほとんど変化せず2相(プラトー相)が延長することでST部分の延長となります

    プラトー相で内向きのNa+が増えること、またCa2+イオンの流入が増えK+イオンの流出が減ることでプラトー相が長く継続することになります

    ST部分の延長は、先天性ではLQT3、後天性では低Ca、カテコールアミン、心拍数などの影響によるようです 

  ③ST部分とT波時間の延長

    2相と3相での延長があり、平低T波となります

    再分極の開始後外向きK+イオンの急速成分が減少して再分極時間が長くなります

    これだけでは分かり難いので補足すると、

    T波が平低化するには、3相で心内膜側と心外膜側に電位差があるか、各々の活動持続時間の近似(再分極開始時間の近似)と再分極速度の違い(3相の傾斜角)が必 要となることが推測できます

    これにより、T波平定化とT波にノッチが生じることがあります

    先天性ではLQT2がこれに該当します

 (2)この心電図はどんなでしょうか?

   以上のことから、先に示した心電図はQT部分のみの延長としては先天性LQT3か低Ca血症、或いは薬剤性によることが疑われますが、症状や病歴、背景が不明な状況では何とも言えません

ここで、「低カルシウム血症は急性心筋梗塞を模倣したST変化やT波異常を伴うことがあり、これらの心電図異常は、冠動脈の痙攣に起因すると推測されています」という知見により、STレベル低下も見られることからこの心電図では低Ca血症も疑うことができないでしょうか

 (3)QT延長によるトルセード・ド・ポアンツ(TdP)

  ①現象

    QT症候群には、トルサードドポアント(torsades de pointes : TdP)と呼ばれる多形性心室頻拍が発生するリスクがあり、

    「これは、QT延長を呈する患者でみられる特殊な形態の多形性心室頻拍である。速く不規則なQRS波を特徴とし、心電図の基線を中心にねじれたような形を呈する

    この不整脈は自然に治まることもあれば,増悪して心室細動に移行することもある

    有意な血行動態不良を引き起こし,しばしば死に至る

    診断は心電図検査による。治療はマグネシウムの静注、QT間隔を短縮する処置、および心室細動の可能性が高まっている場合は電気的除細動による」  (MSDマニュアル プロフェッショナル版より抜粋)

    ・・・・ということが言われていますので、QT延長の検査を目的としたホルター心電図の解析には特に注意が必要になってくると思います

    TdPは、心室頻拍の一種でR波の振幅が周期的に変化し基線に対しねじれて変化する多形性の心室頻拍です

    また、QT延長時に発生するためR on Tとなり、心室細動(VF)へ移行しやすい不整脈です

    

    TdPがどのような波形でどのような現象なのかについて分かり易くまとまった下記を参照してください

        ↓

torsade de pointesとは? | 心電図.com

  ②発生機序

   TdPの発生機序については、QT延長により+イオンが再活性化して流入するのでプラトー相に対して細胞内電位が上昇し脱分極状態を呈すると考えられます

   これを「早期後脱分極(Early After Deporlaization):EAD」 といいます

   時に、この用語は難しいですねぇ

   「脱分極の後(あとに!)に早期に脱分極する」??

   だったら、「再分極の前に脱分極する」=Deporlaization Before Reporlaization か

   「脱分極の後に再び脱分極する」 = 2nd Deporlaization After 1st Deporlaization

   と呼んだ方が直感的に分かり易くないですか?

 

   ま、それは措いておいてその原因はというと、

    (ⅰ) 再分極を促すKチャンネルの喪失

    (ⅱ) 脱分極を促すNaチャンネル又はCaチャンネルの亢進により再分極が止まり脱分極が起こる電位まで上昇しEADを生じます

    (ⅲ) この時の状態は心筋によって異なり、EDAだったり再分極中だったりと、所謂不応期の空間的分散を生じています

    ここで発生したEDAは心筋を伝導し再分極中にR on Tを発生します

    このR on Tは心筋の不応期の空間的分散によりリエントリー回路を形成し、多形性心室頻拍のTdPを発生するということになります

 

「早期後脱分極」についての分かり易い説明は、下記を参照してください

    ↓

早期後脱分極とは? | 心電図.com

https://sindenzu.com/early-afterdepolarization/

 (4)低Ca血症のQT延長

   ST部分の延長はCa2+イオンの増加が原因しているということでしたが、低Ca血症でもST部分の延長が起こるというのはなぜなのでしょうか

   低Ca血症はCa2+イオンが少ない状態です

   これはどういうことなんでしょうか?  

   以下の2点が考えられるそうです

 

     「 低Ca血症でQT延長の理由 」

   (ⅰ)カルシウムチャネルの影響
     電位依存性カルシウムチャネルが開きにくくなることで、心筋収縮のトリガーとなるカルシウム流入が遅れ、心電図上でST延長が生じます 

   (ⅱ)細胞膜の興奮性変化
    低Ca血症では細胞膜のナトリウム透過性が上昇し、心筋や神経の興奮性が高まります。これにより、心筋の再分極が遅延し、QT延長が顕著になります

          「知識の卵」ホームページ 低Ca血症でQT延長する機序」より

 

  これを分かり易く考えれば、

  低Ca血症は細胞外膜にCa2+イオンが少ないので電位勾配も少なくなり、Ca電位依存性チャンネル(細胞膜内外の電位差に依存するチャンネル)があまり開かないためCa2+イオンの流入速度が遅くなるためプラトー相が長くなり結果としてST部分の延長が起こること

  加えて、Na+イオンがプラトー相でも活性化するため活動電位時間が持続しST部分の延長が起こること

  というような理解となります

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ホルター心電図では、QT延長を疑ったとしてもその症状や病歴、背景などが不明な場合には、QT(QTc)時間をまず正確に計測しQT延長症候群の知見を基に波形変化を把握することが重要だろうと考えます

 

 

P波は消えているがどうしてそんな調律に?

通常RR間隔0.8秒ぐらい(70BPM台)の規則正しい調律が、時間帯によってはその間隔が凡そ倍ほどに急に延びたり、元に戻ったりの変化を起こす心電図がありました

RRインターバルトレンドグラフを見ると、0.8秒と1.8秒~2秒の間を行き来して、何か規則性があるようですね

そして、記録開始辺りの心電図を見ると、P波が見当たらないじゃあありませんか

一体この波形はどんな変化をしているのか・・・・?

1.この波形は?

図各代表波形に特徴的な3種類の波形を示します

   RRインターバルトレンドグラフ上には、各々の波形に特徴的なプロットを見ることができます

 

(1)通常時調律

70~80BPMの規則正しく、如何にも洞調律と思われるのですが、P波が見当たりませんね

となると、接合部調律で逆行性P’波はR波に隠れている??

T波を見るとちょっとデコボコして2峰性にも見えますね

期外収縮(PVCのような)の直後のR波の前にはP波のようなものがあります

ひょっとして、P波はT波に重なってるのでは??

では、RR間隔が一定で変化していない他の時間帯の波形を確認してみましょう

(2)安静時調律

ほぼ安静時と思われる安定した洞調律の心電図です

すると、RR間にはT波とその後に形が類似しているP波が見えてますね

そのPP間隔は一定でやはり洞調律なので、どうも、1度房室ブロック(AVB)のようですね

そして期外収縮の後のR波の前にもP波が見えています

とすると、(1)の心電図は洞調律の上昇によりP波がT波に重なった1度AVBということがわかります

期外収縮の直後のR波の前には一定間隔のP波があるので、代償性PVCということになりますね

(3)徐脈時調律

40BPM以下の時間帯の心電図です

こちらもP波とT波は重なっています

 P波に対応するR波が脱落してRR間隔が延びているところは、他の間隔の2倍ほどになっているので2度AVBということになります

それが交互に出現しているところは、P波の2回に一回R波が脱落しているので2:1AVBということになります

2:1AVBが継続する長さは最大で8回ほどでした

この時のAVB前後でのPR間隔を調べると、2度AVB では0.08秒のWenckebach型減少があり、2:1AVBでは変化なしでした

Wenckebach型とMobitz型ではAVブロックの発生場所が異なるといわれていることから、これは、AVBの発生している場所が各々A-H間とH-V間となり各々異なっているということなのでしょうか(疑問です)

(4)PVC

殆どが代償性休止期を持つPVCです

0.5秒以下のプロットは連結期が表されています

2.RR間隔変化の程度と頻度をどのように把握できるか

24時間心電図の実波形からRR間隔変化のパターンや発生頻度などについて全貌を知ることはほぼ困難なことと思われます

そのために記録を通して、RR間隔変化の経時的変化とその程度を見るのにはRRインターバルトレンドグラフ(上記で既に見ています)、変化のばらつきや程度と発生頻度についてはヒストグラム、変化のパターンはローレンツプロット(及びRRインターバルレシオ)を見ることでおおよそ把握することができます

どのような形式で出力されるかをちょっとだけ見ておきましょう

或るホルター心電図解析装置では以下の図のように表示されます

(各社解析装置によって各々少し違った形式で表示されると思います)

各グラフは、R波モフォロジーによって洞性・上室性と心室性に分けられます

洞性・上室性心拍のヒストグラムは1拍ごとのRR間隔(N,N+1)をプロットしていくと、その長さによるグループ分けができ発生頻度が示されます

この場合、約0.8秒と約1.8秒を中心とする正規分布様の2パターンありその発生頻度が分かります

1.8秒はAVBのRR間隔でその頻度を表します

心室性心拍の場合は、連結期(N+1)の間隔をだけをプロットします(ここには表示していませんが)

洞性・上室性心拍のローレンツプロットは、連続する1拍ごとのRR間隔(N,N+1)を縦軸と横軸にプロットしていくと、RR間隔の長さによるグループ分けと同時に、前後のRR間隔の相関を見ることができます

この場合、4つのグループが見られ、洞性調律、2度AVB、2度AVB直後、2:1AVBのRR間隔を表しています

心室性心拍の場合は、先行するRR間隔(N)と連結期(N+1)の間隔を縦軸と横軸とにプロットしています

すると、連結期に先行するRR間隔に対し連結期が殆ど一定になることが判ります

 

このようにRR間隔の解析は、24時間の不整脈に関して容易にその変化と傾向を把握することができ心電図解析には強力なツールとなると言えるでしょう

そして、この機能についてはかなり奥深いと思われるので、次の機会で改めて考えてみたいと思います

STトレンドの変化に現れたのは異型狭心症?

ホルター心電図ではその検出が難しいとされている虚血性心疾患

その中でも、有用であるとの意見が多い異型狭心症があります

労作とは無関係に生じる胸部症状は狭心症ではないことが多いと報告されていますが、ホルター心電図で無症候性の異型狭心症を見つけることができるのは大きなメリットでしょう

特にSTレベルトレンドグラフ(STトレンド)などの直感的、視覚的に捉えることができそうな機能がホルター解析装置には備わっています

特段の症状もないと思われる(行動記録表に症状の記載がなかった)被検者で異型狭心症の疑われる心電図が記録されたのでそれを検討してみたいと思います

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目次
1. STトレンドに見える変化  
 (1) STトレンドの表示方法  
 (2) STトレンドの変化  
2. 波形のSTレベル変化 
 (1) 波形表示の方法 
  ① 実波形表示 
  ② 重畳(スーパーインポーズ)波形表示
 (2) どんな変化が起きているか?
  ➀ 5時台の変化 
  ② 15時台の変化
  ③ 6時台の変化
  ④ 7時台の変化 
3. STレベル変化の要因は?
 (1) ST上昇 
  ① 5時台 
  ② 6時台  
 (2) ST低下  
  ① 15時台 
  ② 7時台

4. まとめ

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1. STトレンドに見える変化

先ず、下図の24時間のSTトレンドを見てみましょう

 (1) STトレンドの表示方法

STトレンドでは各CHにSTレベル、心拍数とSTスロープのトレンドがともに表示されていてます

STレベルの計測点は、ここではPR間の平坦な点を基準として、ST接合点(J点)から60mSの点のレベル差を測っています

また、心拍数トレンドの右側の目盛りが付いてるように運動強度(確認はしていませんが、数値的に恐らくMETSと思われます)

グラフの最下段には、体位(姿勢情報)も含まれています

このグラフから、STレベルの変化と心拍数や運動強度、体位の関係によりある程度の変化要因を推測することが可能となります

(ホルター解析装置によっては、STスロープ、運動強度、体位情報の表示がないものもあります)

 (2) STトレンドの変化

STトレンドのCH1ではベースが-0.05㎷程なので相対的に±0.1㎷を越える変化、つまり0.05㎷を越える上昇と-0.15㎷を下まわる低下を「顕著な変化」と捉えこれに着目します

15時頃で―、05時頃で+、06時頃に+、07時頃で―側に発生しています

 

何れも散発的に短時間で急激な変化となって表れています

主に05時から07時にかけて発生し、特に05時台の急激なSTレベルの上昇は注目に値します

とりあえず他の時刻の変化については後で検討するとして、顕著に異常上昇している05時台に着目してみましょう

2. 波形のSTレベル変化

 (1) 波形表示の方法

   ① 実波形表示

図2 STレベル変化実波形を見てください 

 

顕著な変化があった時間の実波形(記録速度25mm/s)のです

その前後の時間帯で波形がどのように変化したか?

   ② 重畳(スーパーインポーズ)波形表示

それを経時的に観察するのに便利な重畳(スーパーインポーズ)表示という機能がホルター心電図解析装置に備わっています

(このような機能が備わっていない解析装置も多々ありますが、あればなお有効でしょう)

 

    図3 STレベル重畳表示を見てください 

2分毎に各CHのR波のトリガー点を合わせて(R波のピークと見ていいでしょう)波形を重ね書きしたもので、波形の形状や大きさの変化が直感的にわかるようになっています

 (2) どんな変化が起きているか?

STレベル変化について、STトレンドや実波形により心拍数、体位、運動強度などのパラメーターとの関連に注目して見てみましょう

  ➀ 5時台の変化(図2 ㋑、㋒、㋓、㋔、㋕)

STレベル最大上昇前後の波形です

STトレンドからは次のことが読み取れます

STレベルが0.05mVを越えて顕著に変化する上昇は、05:38:30から始まり約1分後には最大値 0.51㎷、その後下降して05:40:30に0.05㎷に戻り、05:40:50には-0.15㎷まで低下しています

STスロープは、上昇始めはややアップスロープで急激上昇中は水平スロープ、下降はダウンスロープとなっています

約2分間での変化でした

そして心拍数は60台で1METS以下、体位は伏臥位で安静時と思われます

STレベル値だけを見ていると上昇から下降の変化だけですが、重畳波形や実波形には下降と共にT波が陰性化していく様子が見れます

そしてT波が陽性に戻るまで約30分ほど経過しています

他の時間で発生する、STトレンドの相対的な0.1㎷以上の顕著な変化を見てみましょう

15:30に―、06:51に+、07:36で-側に大きく変化しています

  ② 15時台の変化(図㋐)

15:30では急激な変化に見える1~2分間の大きなST低下があり最大-0.2㎷で、T波陰性化も伴っています

この時は、3METSの運動強度(日常生活中の動作、歩行など)で心拍数80台となった10数分後で起きた変化です

  ③ 6時台の変化(図㋖)

05時台(図㋑~㋕)の顕著な上昇の後には元のに状態に戻った後、06:51に+0.1㎷に再び1分ぐらい上昇しています

この時、運動強度は0METS以下から2METSに上がり心拍数も80台となります

体位の変化も臥位から座位/立位となっています(起床時でしょうか)

  ④ 7時台の変化(図㋗)

その後、07:36~7:50にかけて低下があり最大-0.15㎷で、T波陰性化も起きています

運動強度は1~2METSの変化です

3. STレベル変化の要因は?

波形のSTレベル変化を時間帯ごとに見てきましたが、どういう要因によるものなのかについて見てみましょう

 (1) ST上昇

  ① 5時台

05時台の変化は、臥位で安静時に2分間の急激なSTレベル上昇で0.5mVを越えて、その後T波陰性化して元に戻っています

STレベルの異常上昇は一般的に、心筋梗塞の数時間以内で起きてその後異常Q波の出現、T波陰性化を見ますが、今回の波形変化はそれには該当せず何れも1~2分の変化発生でその後通常状態に戻っています

また、一般的に虚血性のSTレベル変化であれば、大きく低下(非貫壁性虚血)しその要因が取り除かれれば元に戻る可逆性変化となりますが、今回はむしろ大きく上昇(貫壁性虚血)していて且つ可逆性変化をとるところが一般的な心筋梗塞や虚血性心筋症とは異なると思われます

所謂、異型狭心症がこれに該当すると思われます

ホルター心電図の誘導からは、CH1とCH3だけに変化が見られCH2には殆ど見えません

つまりCM5誘導とCC5誘導だけに変化が起き、NASA誘導には変化が起きてないので、左室側壁側で発生していると思われます

  ② 6時台

6時台のSTレベル上昇は離床時と見られ軽負荷状態なので労作性というよりは異型性そのものと見てよいのではないでしょうか

 (2) ST低下

15時と7時台のSTレベル低下は、どうでしょうか

STレベル低下は主に労作性狭心症で発生しますが、異型狭心症においてもその前後でSTレベルの低下(及びT波陰性化)が起こることがあるとのことです

これは、攣縮が不完全で心内膜側だけに変化が起こる非貫壁性虚血なので労作性狭心症と同じST低下が起こることになるのでしょう

又、労作性と異型性が併発することもあるとのことで、その区別も確認しておいた方がよさそうです

以下の波形では、労作性狭心症との関連はどうでしょうか

  ① 15時台

2~3METSの軽負荷から10数分遅れて、最大-0.15mVで1~2分間のST低下です

これは通常の労作性からすると負荷とは関係なく短時間で発生してるので異型性と関連があると思われます

  ② 7時台

1METSの安静時による最大-0.15mVで5分間のやや長めのST低下ですが、心拍数が70BPM位で発生してるところから、これも異型性と関連があると思われます

STレベル低下が0.1mV以下で起きている他の時間をみると、殆どの運動強度は1METSであるところを見ると、異型狭心症と関連するSTレベル変化(低下)と考えられないでしょうか

4. まとめ

顕著なSTレベルの上昇及び下降の変化は、無症状で身体活動としては労作時ではなく比較的安静時で(1~3METS)体位としては臥位が殆どでした

特に顕著なSTレベル上昇は(起床前の)6時前に発生していましたが、他の顕著な変化は散発的に数回起きています

急激な上昇或いは下降の変化は2分ほどで元に戻る可逆的な現象であることから、非貫壁性の虚血性でありながら心筋梗塞と同じ貫壁性のST上昇となる、異型狭心症であろうという推測となりました

たかがアーチファクト されどアーチファクト

目次
1.いろいろなアーチファクト
(1)連続波で周期性のアーチファクト(図A)
(2)パルス状アーチファクト(0.6Hz) (図B)
(3)パルス状アーチファクト(0.2Hz) (図C)
2.パルス状アーチファクト(0.2Hz)(図C)は何でしょうか 
 (1)どんな波形が見える?  
 (2)どのような波形か 
  ①基線にはドリフト 
  ②パルス波  
  ③心電図波形への重畳  
 (3)パルス波形がPVCではなくアーチファクトと考える理由
 (4)アーチファクト発生の原因は?
  ①基線ドリフト
  ②パルス波
  ③アーチファクトはどのように起きたのか?
3. 心室性期外収縮(図D)
4. アーチファクト(ノイズ)をどう捉えるか

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24時間ホルター心電図は生活中の心電図記録なので、本来の心電図波形に加えて行動中に発生する生体からのノイズや生活環境、行動によるノイズが多く混入してきます

ノイズは時としてその中に重要な波形を隠していたり、重要な波形であるフリをしたりと色々な姿を見せます

 

それをどのように取りだし区別するか・・・・

今回は、アーチファクトと本来の心電図波形の区別をどのように考えるかということを中心に検討してみたいと思います

 

ホルター心電図のアーチファクトに関する過去ブログは、当ブログカテゴリー「アーチファクト」を参照してください

 

言葉の定義になりますが、

取り出したい(解析に必要な)心電図波形以外の波形をノイズと呼びましょう

その中でも人工的に発生する、生体起源以外で発生するノイズをアーチファクトと呼ぶことにします

周期性はあるが連続的に変化しない波形をパルス状波形、周期性を持たないランダムに発生する波形をスパイク状と呼ぶことにします

 

さて、下図は 同一被検者で異なる時間帯で発生した数種類のアーチファクトの波形です

図中に、ホルター心電図の電極の誘導位置(CH1,CH2,CH3)を示します

 

1.いろいろなアーチファクト

(1)連続波で周期性のアーチファクト(図A)

約5Hz周期の連続波形でちょっと歪んだ鋸歯状に見えます

CH1とCH2では少し形状が異なっていて、波高値(波形のピーク-ピーク間の大きさ)は同程度です

発生頻度は30秒~1分ほどの時間で24時間中に数回発生してました

 

一見300bpmの心房粗動(AFL)波に見えますが、CH間で波高値が同じ大きさ、ひげ状のパルス波が重畳した波形形状、FL波伝導比やFL波-R波間隔の変動、そして何となく違うかなという違和感・・・・

これらのことによりAFLは否定できるかなと思われます

 

これは波形形状や周期性から見て、測定系の外から飛び込んできた電気的若しくは機械的なノイズに思えます

その大きさから見て、測定系の+/-入力インピーダンス又は入力レベルのアンバランス、加えて他のCHでも同様のことが起こっていて、CH間で共通した誘導位置、つまりマイナス側に飛び込んだような信号と推測できます

 

日常生活の環境下で使用され5Hzのノイズを発生すると考えられるのは、低い周波数のモーター等の動力によるものがありそうです(モーターであれば300rpmとなります)

洗濯機或いはマッサージ器のモーターによる電磁誘導や機械的振動が考えられますね

具体的には、洗濯機の接近やマッサージ器使用によりモーターの電磁誘導や回転、器械的振動などが測定系に飛び込んで5Hzのアーチファクトが発生したということになるでしょうか

(2)パルス状アーチファクト(0.6Hz) (図B)

短時間で発生した周期が0.6Hzのパルス状波形です

QRST波にパルス状波形が重畳しているだけなのでこれがアーチファクトだと容易に推定できますね

CH1だけの発生なので、恐らく+側の電極だけに(マイナス側にも同様に発生していればCMRRにより出力されないでしょう)原因がありそうです

波形形状から見て、電極-皮ふ間インピーダンスの瞬間的な変化による分極電圧の発生がありそうです

原因は、電極リード線引っ張りによるか電極自体への押圧又は引圧が考えられます

(3)パルス状アーチファクト(0.2Hz) (図C)

上記2つの波形とは違い、一見、周期的なVPC様のWide QRSに見えものが有ります

単発なのか或いは連結期がばらついているので副収縮かと見えますが、しかしなんか変だということで・・・・

アーチファクトかもしれません

これはじっくりと以下で検討してみましょう

2.パルス状アーチファクト(0.2Hz)(図C)は何でしょうか

(1)どんな波形が見える?

 - 心電図の基本的な波形は、周期 約0.5秒(120bpm)の洞調律

 - PVCと紛うパルス波は0.9~1.4秒周期でその幅が約0.3秒

   入力換算で1~3mV(ピーク to ピーク値)の信号

 - 1.4~1.5秒周期の基線ドリフト

(2)どのような波形か

①基線にはドリフト

基線には、凡そ1.4~1.5秒周期のドリフトで心拍数120BPMから見ると、心拍呼吸比率が3くらいなので呼吸変動とも考えられます

非周期性であれば発汗や他の皮膚インピーダンスの緩やかな変動が考えられるますが、どうかよくわかりません

②パルス波

パルス波は、幅約0.3秒で最大3mV程の波高値で2相性

これが生体以外の信号と仮定すると、直流成分の瞬間的な変化と捉えられます

基線が飽和するほどの大きな直流変動をきたすものではなく、小さい電位の瞬間的な変化は電極間インピーダンスの変化というよりはその大きさから分極電位の変化と考えた方がいいかもしれません

分極電位が変化するのは電極と皮ふ間の距離の変化による電極表面積の変化と考えられ、2相性になってることから電位の相対的変動が起きていると推測できます

③心電図波形への重畳

各波形の重なり具合を見ると、生体からパルス波や基線ドリフトが発生してるのではなく、心電図波形の後にこれらのアーチファクトが加わり単純に加算され重畳していると考えられます

生体信号(心電図R波)はCH1で約1mV、CH2で0.5mVであるが、パルス波では、CH11で2mVでCH2で3mV(最大比)

CH2の電位がCH1より大きくその頻度も多いことから、CH2の方が分極電位変動が大きいような状況でしょう

(3)パルス波形がPVCではなくアーチファクトと考える理由

このパルス波形はPVCのQRSTに該当する部分が見られるけど、T波が同相で小さいように思われます

そして、洞調律のR波と心室性R波が同時相で出た場合は融合収縮の波形となると考えられますが、洞調律によるR波とパルス波形が重なった時相では単純加算され重畳しているように見えます

とすると、このパルス波は心室由来ではなくそこ以外からの波形、アーチファクトと推測できますね

パルス波のS~T波の部分は分極電圧の2相性変化と思われます

(4)アーチファクト発生の原因は?

①基線ドリフト

基線ドリフトは、約1.4秒~1.5秒周期で0.7㎐、心拍数120BPMの頻脈時で呼吸数対比を3とすれば呼吸による電極間距離の変動によるものが疑われます

又、パルス波の長い方の周期に近いので、このパルス波の発生原因に同期してることから何らかの関連がある可能性を重視したいと思います

②パルス波

一方、パルス波は、0.9秒~1.4秒周期で約1Hz、0.3秒幅の瞬間的なパルス状で1~3mV程の大きさです

つまり、増幅器出力が飽和するような数秒以上に渡る長時間の過大電圧が入力されてはいないと思われます

 

以上の点からの発生要因を具体的に推測すると、

■CH1,CH2のマイナス電極側で発生

アーチファクトは、同じタイミングと同じ位の大きさでCH1及びCH2で同時に起きていることから、各CHで同じような場所、つまりCH1,CH2のマイナス電極側で発生していると考えられます   

■電極の位置変動

電極と皮ふ間の距離が変化するような外部からの機械的変動が加わっていて、電極と皮ふ間の距離の伸び縮み、つまり、電極の上下/左右/前後の変動によるものと考えられます

■電極間の違い

動きとしては、マイナス電極が約1.4秒周期で少し引っ張られているところに、約0.3秒間の強い押圧又は引圧が加わっているようです

そして、CH2のマイナス電極の方がその強さが大きいと考えられます

③アーチファクトはどのように起きたのか?

約1Hzで電気的に動作するものが生活環境(家電製品や機械的振動)ではインジケーターやアラームの点滅表示などがありますが、これが心電図のアーチファクトになるとは考えにくいですね

アーチファクトの周期が正確に一定ではないので、何らかの電気的信号及びそれによる機械的振動ではなく、任意でリズミカルに人為的に動作したことによる変動

例えば、リズムに合わせた或いは呼吸に合わせた身体の大きな動作などが想像できますね

3. 心室性期外収縮(図D)

この波形はどうでしょう?

これまで見てくると、何となくアーチファクトに見えないことはないですか?

でも、アーチファクトではないと今でははっきりとと言えますよね・・・・・・

4. アーチファクト(ノイズ)をどう捉えるか

ホルター心電図では被検者の行動に伴って多くの種類のアーチファクトが発生します

むしろ、胸痛や動悸、めまいなどの症状があったから直接的、間接的にノイズが発生することがあるとも言えます

そういう点では、ノイズは心電図解析の必要悪(社会悪)であり、解析する側からすれば天敵のようなものといっても過言ではないでしょう

それに対しどのように対応すれば、すんなりと事が運ぶものでしょうか?

 

その波形は殆どがそれと判るように出現しますが時として判断に困る形状がでたりしますよね

ホルター心電図の解析では、ノイズの混入を身体症状の結果として捉えて、そこに何の兆候や変化が表れているのかを探る必要があると思います

そのためには、波形の中からノイズを取り除いて心電図そのものを取り出さなければならないでしょう

 

それには、行動記録表などに基づいて、「なぜこのような波形になったか」という視点で波形自体を観察すること、各種トレンドグラフやヒストグラムでの異常性の確認などにより、ノイズ除去フィルターのような解析ロジックを持って臨むことが大切なのかなあと思ったりします

加えて、多くの解析を行いつつ、解析ロジックの中で論理と経験に基づく信号対ノイズの弁別比(所謂S/N)を向上させることが肝要かと思います

wide QRSー変行伝導か心室起源なのか、どっち?

下記のようなX Twitterでの投稿がありました

同一被検者で、異所性の早期収縮が3種類あり、その一つが上室性変更伝導か心室性かで、リプライも結構あって興味津々なので取り上げてみました

 

提示された心電図は下図です

 

PACやPVCかなあと言ってしまえば簡単ですが、それがどのように起きているかをあれこれ考えることが大事だと思い取り上げてみました

3種類の各々の波形について見ていきましょう
心電図の誘導は表示されてはいませんが、通常であれば上から順に「Ⅰ」誘導~「aVF」で続けて順に「V1」~「V6」誘導と思われます
また、10㎜:1mV、25mm/sでしょう

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目次
 1. 図(Ⅰ)心房からのPAC    
 2. 図(Ⅱ)PVC    
 3. 図(Ⅲ)PAC? PVC? どっち?    
  (1)R’の波形形状   
   ①四肢誘導   
   ②胸部誘導   
  (2)起電力ベクトル    
   ①四肢誘導    
   ②胸部誘導    
  (3) R’のタイミングパラメーター    
   ①P’R’間隔とR’の起源  
   ②R’の連結期  
   ③ P’のリターンサイクル    
 4. 図(Ⅲ)のR’は上室性の変行伝導なのか心室性なのか?    
  (1) QRST形状から見た場合    
  (2) 連結期から見た場合

  (3)結局、 変行伝導?心室性? どっち?

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以下の図は、波形上にA:心房、V:心室のタイミングラインを書いています
P、Rは洞調律によるP波、R波で、P’、R’は異所性刺激によるものです

 

 1. 図(Ⅰ)心房からのPAC

 

 洞調律の後に異所性P’(3拍目のP波)とR’が出ています
 P’について見てみると、P’R’間隔が洞調律のPR間隔とほぼ同じですが、逆相から始まる

 2相性に見えます
 また、QRS形状は洞調律と同じのようです
 なので、P’は房室結節上部起源だとも考えられますがP’R’間隔から見て、右房下部付近

 から出た刺激がAV順行伝導したものであろうと推測できます

 P’とその後に続くPによるP’P間隔は洞調律によるリターンサイクルになっていて、P’に

 よって洞刺激がリセットされたことが判ります

 

 2. 図(Ⅱ)PVC

 

 洞調律のPP間隔は一定に維持されてるところに、P’(3拍目のP波)が出現して、直後

 の幅広のR’の立上がりとオーバーラップしています
 PP’間隔がPP間隔がと同じなのでこのP’は洞周期によるものと判ります
 R’は幅が0.14秒以上あってT波が陰性なので心室性起源と推測できます
 ではその発生タイミングを考えると、洞結節から心房を経由しP’の刺激は順行性伝導し心室へと向かいます
 一方Pの直後に発生した心室からの刺激は接合部を逆行伝導し心房へと向かいます
 この上下方向の刺激は伝導路途中で衝突(Stimulation collision in Junctional )し消滅することになると考えられます
 場所は、タイミング的に房室結節下部辺りと推定されます
 その後のPP間隔は洞調律を維持していくので、このPVCは代償性休止期を持つものと

 判ります

 

 3. 図(Ⅲ)PAC? PVC? どっち?

 

  PP間隔が洞調律で一定のPの次に早期のP’(V1の3拍目)があります
  V1誘導だけにしか見えていませんが(どうも先ほどの心房起源のPACのP波に似てますね

  これをP’と仮定して話を進めます
  P’の直後にワイドのR’が出ています

  R’の起源はどこからと考えられるでしょうか
  今回取り上げたTwitterの話題はここにあったのです
  つまり、
  ・心房起源のP’で変行伝導のR’
  ・心房起源のP’で心室起源のR’(房室解離)


  どっちだと考えられるでしょうか?

  先ず、R’の波形パラメーターを見てみましょう

 

  (1)R’の波形形状

   ①四肢誘導

    Ⅰ誘導で、QRS幅は0.14秒程あり前半は傾斜が緩やかで、後半にはノッチがあり多誘導でS波が現れます
      PDW=0.03秒(<0.034)、IDT=0.06秒(<0.085)、MDI=0.43(<0.55)
      T波とR’は同方向
      (Ⅰ誘導で測定)

    I誘導を見ると立上がりが緩やかで心外膜起源かなと思いそのパラメーター(*)を   測ってみると、その値が微妙に小さいのでちょっと違うかな
    そしてV1で見てもそれほどの立上がりの偏向(傾斜)はなさそうですね

    又、T波はR’と同方向ですが心外膜起源の場合はこのような現象が起こることは誘導によっては起こりうる様です(*)

    (*)心外膜起源PVCの波形パラメーター
      ・PDW(偽性デルタ波幅):0.034秒以下 (胸部誘導)
      ・IDT(固有偏移時間):0.085秒以上 (V2)
      ・MDI(最大偏移指数):0.55以上

      ・T波の極性はR波と洞方向

       なぜこれが起こるかについては後日の記事で検討したいと思います

 

   引用:https://thoracickey.com/epicardial-mapping-and-ablation-of-premature-ventricular-complexes/

   Epicardial Mapping and Ablation of Premature Ventricular Complexes | Thoracic Key

 

   ②胸部誘導

    QS(rS)型
    V1で幅広く深いQSでV2~V4でrSが見られます
    T波とR’が逆方向(V1~V4誘導)

  (2)起電力ベクトル
   ①四肢誘導
    最初に10°位で左室に小さな起電力が、次に-30°位で大きな左室起電力が、遅れて-10°位に最大起電力が起こり、次に上方に向き40°位でⅠ誘導にノッチが現れます
   ②胸部誘導
    最初に30°位に初期の小さな左室方向の起電力が、次に45°位に大きな左室起電力が、その後60°位に最大の左室方向の起電力が起きています

   以上のようなことから最大の起電力ベクトルは、左室方向に、やや右上・右手前から左下・左後ろに向いていることが判ります

 

 次に、R’のタイミングパラメーターを見てみましょう

  (3) R’のタイミングパラメーター

   ①P’R’間隔とR’の起源
    P’の形状はPACやPVCの時のそれに比べて似て(逆相から始まる2相性)おり、心房起源と推測します
    P’R’間隔は0.12秒で、心房刺激からのAV順行伝導によるR’が推測できます
    この場合は、R’は変行伝導になっていることになります
    一方、R’が心室起源と考えると、心房からの順行AV伝導した刺激と心室からの  VA逆行伝導した刺激が接合部下部で衝突したか、タイミングによっては心室不応期に中り刺激がブロックされ消滅している可能性もあります
    R’の起源に対し、どちらに妥当性があるか?  ということになりますね

   ②R’の連結期
    連結期の長さにより、異所性早期収縮が心室性か接合部過の起源を推測するのに役立ちますね
    連結期のばらつきを見るには、「N-N-V」インターバルのローレンツプロット又はレシオ(*)があります

    R’の連結期は0.5秒で、そのN-VレシオはPACのN-Aレシオ 0.5に等しいですね
    因みに図(Ⅱ)PVCでのR’の連結期は0.9です

  (*)「N-N-V」インターバルのローレンツプロット又はレシオヒストグラム
    ローレンツプロットは、期外収縮の連結期(N-V)とその直前のRRインターバル(N-N)をプロットしたもので心室性の場合はN-VがN-Nに比例せずほぼ一定勾配で表示されることが一般的
    レシオヒストグラムは、N-VとN-Nの比をヒストグラムにしたもので、心室性の場合は、一定ではなくばらつくこととなります
    これらのことから心室性或いは上室性の区別が可能と言われています

    詳細については、後日のブログで検討してみたいと思います

 

   ③ P’のリターンサイクル

    PP’間隔は洞調律によるリターンサイクルとなっており洞結節がP’によってリセットされてることが判ります
    なのでR’が仮に接合部及び心室起源だったとした場合の逆行性VA伝導による逆行性P’は起きてはいないことが判ります(勿論心電図上にも表れていません)


 4. 図(Ⅲ)のR’は上室性の変行伝導なのか心室性なのか?

  R’に対する上記(1)、(2)、(3)のパラーメータを勘案して、それが上室性の変行伝導によるものなのか心室性によるものなのか?について検討してみましょう

 

  (1) QRSTから見た場合
   R’のQRS幅は0.14秒で図(Ⅱ)PVCでのR’と同じぐらいです
   V1はQSでrがなく、V2~V3誘導も四肢誘導のR’に比べ大きなS波でありT波が反対方向です
   四肢誘導ではR’とT波が同方向となっています
   これは起電力ベクトルがV1の方から胸部誘導中心点に向かって(右前から左後方へ)反対方向に強く発生していることが判ります
   移行帯がV5のようであることからは通常の伝導出ないと裾くできそうです
   又、傾斜及び幅から見て心室から刺激が発生し緩やかに伝導しているように見えます
   これが心室起源だとすれば、右室流出路(心外膜)付近となるでしょうか

   一方、変行伝導であれとすれば、左脚ブロック様の伝導であろうということになります
   その場合T波はR’とは反対方向となるのが一般的です
   通常伝導の上室性起源であれば図(Ⅰ)PACと同様にR’はRと同方向でT波も同方向となるように思われます

   また、R’の立上がりもR同様の傾斜になると思われますがそれよりも緩い傾斜に見えます

 

  (2) 連結期から見た場合

   連結期のN-Vレシオは、0.5とPACのそれと同じなので、この数値だけみればR’は上室性かなと思われますね
   PVCは0.9であり、他のPVCの連結期も確認して単一モフォロジーであれば、上室性起源だろうと疑われますがここははっきりとはしませんね

 

  (3) 結局、変行伝導? 心室性? どっち?

   以上の検討により、
   R’は、P’R’間隔などのタイミングパラメーターから見れば上室性起源の変行伝導と考えるのが優位ですが、QRST形状から見ると心室(心外膜)起源がより可能性が高いように思われます

   機序としては、
   心房から早期のP’が発生した後、心室起源(右室流出路と考えられる)による逆行性刺激と心房からの順行伝導刺激とが衝突した
   或いは、心房からの順行性刺激が心室興奮より少し遅れて心室に到達したため刺激がブロックされた
・・・という2つのストーリーも考えられます

 

心室で並列競合? ~ 副収縮

目次
1.それはどんな心電図? 
 (1)リズムを見る
 (2)R波は?  
2.タイミングチャートで考えてみる 
 (1)刺激のリセット  
 (2)刺激の消滅  
 (3)刺激の潜行伝導  
3.R’のパラメーターからわかること 
 (1)最小連結期   
 (2)最大連結期  
 (3)副収縮のメカニズム
4.副収縮という呼称(ついでの話)   

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単発や2連続の頻発する単源性のPVCが多発な心電図として見ていました

ところが、ざっとレビューしてみると普通の(?)PVCと何か違うかなぁ・・・という感じになりました

 

1.それはどんな心電図?

 

(1)リズムを見る

 

この異所性R波が心室起源と仮定して、連結期が長く且つばらついていてRRインターバルトレンドやヒストグラムでみると、規則性がなく上室性期外収縮と同様な先行RR間隔に依存するプロットになっていました

また、連結期や休止期を時間ごとに見てみると、代償性や間入性のようであったりなかったり、PP間隔との不連続性もありました

このように見ていくと、確かにP波とR’波には関連性がないようです

 

(2)R波は?

洞調律のR波(R)は電気軸がやや左に偏移しているようです

異所性のR波(R’)は、先行P波はなく右脚ブロック型です

起電力ベクトルは始め左室側(ほぼ0度)に向きその後右室側へ-130度~-170度位にR幅 0.16秒でゆっくり変化しています

これは、主ベクトルが-135度で左上から右下へ且つ後ろから前方向へ、左室側から右心室へ伝導し左室起源による右脚ブロック型と推測されます

そして連結期と休止期はバラバラの様です

 

なので、これらを「連結期」や「休止期」と呼べないということを知りましたが、ここでは話の便宜上使用することにします

 

2.タイミングチャートで考えてみる

 ではここで何が起きているのか?

 こんな時、タイミングに違和感のある時は、ラダーグラムですね

 心電図上に、ラダーグラムを書いて見ました

 

 それが、下図 タイミングチャートです

図 タイミングチャート

便宜上、CH1波形上に心房、CH2波形上に心室、その間は接合部のタイミングラインとして書いてあります

 

この心電図(図の1段目)では、洞調律のPP間隔及びRR間隔 は1.2秒で一定のリズムで出ています

心室性期外収縮R’は、連結期が0.8秒ですが、他は0.5秒~1.0秒と変化し代償性だったり間入性のように見えるタイミングです

そして、2連続するR’R’を見ると1.5秒で、特長的なことにどの時点でもその間隔はほぼ同じで一定です

そこで、その前後のR’~R’の間隔を見ると1.5秒の整数倍で発生してることが判りました

RRもR’R’もその間隔は違いますが各々一定の間隔で相互に影響を受けない独自の刺激能に由来すると言えます

これは所謂「心室性の副収縮(Parasystole)」ということになりますね

 

では、副収縮がどのように起きてるかを心電図上から推測して見ましょう

 

(1)刺激のリセット

図の2段目(2/4)の心電図に2連続するR’があります

始めのR’は、その逆行性刺激がVA伝導してP’を発生し洞結節をリセットしているようです

(リセットのタイミングは洞結節から刺激が出る野と同時だろうと推測できます)

このP’は、直後のT波の立上がりが変形してP’が重畳してる様子で分かるでしょう

 

(2)刺激の消滅

その次には副収縮の間隔で連続してR’があります

ここではR’の立上がりにPがあるので刺激はAV順行伝導し、一方R’からの逆行性刺激がVA伝導するので、接合部で刺激が衝突し消滅すると推測できます

その後は洞調律は影響を受けないのでRが続くことになります

 

図の3段目(3/4)の心電図には2つのR’があります

 

始めのR’は、逆行性刺激がVA伝導する一方、洞調律によるP(T波の立上がりに見える)からの刺激がAV順行伝導してるので接合部で衝突し消滅すると考えられます

(なので、その後の洞調律は影響を受けないでしょう)

 

(3)刺激の潜行伝導

次のR’は間入性のように見えます

ではどうなっているのでしょう

R’からの逆行性刺激がVA伝導しているはずですが、P’やPが見当たらず、尚且つその後のPも(T波の終わりに見えます)PP間隔で発生しているので、この刺激はタイミング的にAやVに影響を与えていないようです

ということは、刺激は発生したがAまでは逆行伝導していなかった、つまり接合部途中で消滅した、所謂潜行伝導だったのかと思われます(潜行伝導がどのように起きたのかは知り得ませんが波形上からの演繹的推測によりそのように考えました)

 

3.R’のパラメーターからわかること

連結期ヒストグラムやローレンツプロットを見るとR’のパラメーターを推測することができます

 

(1)最小連結期

最小連結期は0.4秒位と見られます

0.4秒は洞調律のT波の最終時点で相対不応期に位置します

 

(2)最大連結期

1.5秒位が最大ですが、洞調律はRR間隔の長いところで1.3秒が主なので、副収縮のR’R’間隔は1.5秒位かなと推測できます

 

(3)副収縮のメカニズム

副収縮には、進出ブロックと進入(保護)ブロックという機序が言われています

 

最小連結期が0.4秒位ということはRの絶対不応期終点に位置するのでR’は不応期以降に発生しているようです

また、長い連結期でRの不応期以外の所でR’の脱落がないことから、副収縮の「進出ブロック」は起きておらず、不応期以降で連結期が発生しています

 

また、副収縮の調律は一定であることから、洞刺激からのAV伝導による副収縮起源へのリセットは起きていないようなので、進入ブロックは継続して起きてると言えます

 

4.副収縮という呼称(ついでの話)

最後に思いつきでどうでもいいことを書きますが、

「副収縮(Parasystole)」

この呼称を一番最初に知った時、洞刺激の他に接合部や心室性起源の刺激が副次的に発生することなのかなと思いました

副次的というのは、RR間隔の隙をついてランダム(気まぐれ)に発生するものという印象でした

実際は”2つの立派な刺激能が競合もせず上手く機能して各々が中枢となっている”ということになっていました

これは、「副」ではなく字面通り「並行」収縮の競合する現象なのという理解となりました

このような、直感的には結び付かない専門用語は結構ありますね

自己解釈に陥らないよう気を付けて知識習得に励みたいと思いました

 

デルタ波の3変化ー融合収縮のメカニズム

目次
1.この先行収縮は何だ?
2.デルタ波の特徴は?
3.R’の発生をベクトルとタイミングから考えてみる
 (1)QRSベクトル
  <1> R(ドミナントモフォロジー)
  <2> R’(先行収縮モフォロジー)
 (2)R’の発生機序 
  <1> 先ずR’の先行収縮の要因を考える
  <2> Rのタイミングパラメーター 
  <3> R’タイミングのパラメーター
 (3)T波は陰性化するはずだが?
4.R’は何だったのか?

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洞調律で、PR間隔が短くR波の立上がりが緩やか、その後幅急峻な立ち上がりとなる幅広い波が連続して出現していれば、これはデルタ波かなと容易に想像しますよね

ところが、これが数拍毎或いは交互に、尚且つRR間隔や形状などが少しずつ異なる、というような心電図がありました

こうなると、デルタ波なのか、心室性期外収縮との心室融合なのか・・・・

判らなくなりませんか?

そういう心電図、あります

それが「図A:3種類のR波」です

図A 3種類のR波
デルタ波状の先行収縮が3種類発生している

1.この先行収縮は何だ?

ここには、洞調律によるQRSがデルタ波形状を持ち、それが2:1で頻発するするR波が(Ⅰ),(Ⅱ),(Ⅲ)と3種類あります

今後、洞調律によるR波をドミナントモフォロジ-としてR、デルタ波形状のR波をR’と呼びましょう

そして、R波形の違いがよりはっきり現れているCH2を主に見ていくことにします

 

図(Ⅰ),(Ⅱ),(Ⅲ)のR’に共通しているのはのデルタ波特有の立上がり前半の穏やかな心室の先行収縮とその後半に続くAV伝導の通常波形の急峻な立上がりの融合収縮ですかね

図(Ⅰ)のR’ではPR間隔が短い先行収縮はデルタ波のようだけど、(Ⅱ)や(Ⅲ)ではP波が見えてなくてRR’間隔がRR間隔より短くてちょっと様子が違っていますね

先行収縮は緩やかでその後急峻になる形状は同じですが、これがデルタ波であるかどうかはまだ解りませんね

 

この発生機序を考える場合、以下の2つの要因を考える必要があるでしょう

   ■先行収縮の発生がどこからなのか

   ■後続の収縮の発生はどこからなのか

これを検討することでR’がデルタ波なのか或いは別のものなのかを区別することができそうです

 

その前に、デルタ波の一般的な特徴を見ておきましょう

2.デルタ波の特徴は?

デルタ波は、一般的には心房~心室間による副伝導路経由の先行収縮とAV伝導経路経由の通常の心室収縮が融合して発生するのでその特徴は、

 ・先行収縮によりPR間隔が短縮しているように見える(0.12秒以下)

 ・先行収縮と通常収縮の融合点ではR波の傾きが異なる(デルタ波)

 ・R波の幅は広がっているように見える(0.12秒以上)

 ・T波が陰性化する(・・・場合が多い)

3.R’の発生をベクトルとタイミングから考えてみる

では、R’がどんな波形で、その先行収縮がデルタ波のなのか、そうでなければ何なのか、その要因と発生機序を見ていきましょう

 

まず、RとR’をQRSの起電力ベクトルで見ていきましょう

図B:ベクトル図で、R及びR’に対応するP波をP及びP’と呼ぶことにします

 

図B ベクトル図
R’の起電力ベクトルと電気軸

 (1)QRSベクトル

  <1> R(ドミナントモフォロジー)

Rは通常にAV伝導して心室のベクトル(①)が出た後、S波はCH2が大き目(SCH2> SCH1)でベクトル(②)は左軸上方に向いて、電気軸では0°~ややマイナスとなり左脚前枝ブロックが疑われます   

  <2> R’(先行収縮モフォロジー)

R’は3種類のモフォロジーで、Pの有無や形状に多少違いがありますがデルタ波類似の先行収縮による緩徐な立上がりが見られる点は同じです

 

立上がりの初期成分は緩く、ベクトルは下方からやや右軸側に向かい(①)これが先行収縮による起電力と思われます

 

その後ベクトルは左室側に向き(②)、遅れてS波はCH1が大き目(SCH1>SCH2)で(③)は右軸下方に向いて右室側に向かいます

電気軸は-130°前後です

 

一見、変行伝導か右脚ブロックか起きてるかなぁとも思いますが、QRS幅がそれ程拡がってはいないので、不完全右脚ブロックのような右室側で伝導遅延が起きているかなと推測します

ドミナントのRが左脚前枝ブロックかな?なので、それと関係があれば、最初に左室側が収縮し、その後右室側が収縮するということが起きるのかなあ、とも考えられます

(何故、変行伝導やそれが交互に発生するのかは、右脚不応期に関係してるかもしれませんがはっきり言って今はわかりません、 今後の検討としたいと思います)

また、R’の先行収縮の立上がりについて見ると、CH2に比べCH1が殆ど目立ちません

これは、このベクトルがCH1:CM5誘導に対し垂直方向に向かうためと思われます

 (2)R’の発生機序

各々のR’モフォロジー発生の時間帯は別々ですが、同一時間帯でも3種類見られることもありました

RとR’が発生するP波をそれぞれP、P’とします

  <1> 先ずR’の先行収縮の要因を考える

R’の先行収縮がどのように起きているかは先に書いたように、図(Ⅰ)と図(Ⅱ),(Ⅲ)に分けて考えることが必要でしょう

 

 (a)図(Ⅰ)ではR’には先行P’(先行PPと同じ間隔)があり洞結節刺激からの副伝導路による先行収縮が発生し、その後に通常のAV伝導による通常収縮があるので、デルタ波の特徴に合致した波形と見ていいでしょう

 

図(Ⅱ),(Ⅲ)については、PP間隔に対して早期収縮が起きているのでその要因は、図(Ⅰ)とは異なり上記1.で書いたように下記の2つが考えられます

 

 (b)先行収縮の発生が心室副伝導路(デルタ波)経由であれば、刺激発生は心房からの早期刺激による

 (C)先行収縮の発生が心室自体(期外収縮)のよるものであれば、刺激発生は洞接合部からの早期刺激による

の何れかが起きていることになります

 

(b),(C)について図(Ⅱ)でその発生要因を考えた場合、推測できるラダーグラムが、図C:先行収縮の起源 となります

図C 先行収縮の起源
先行収縮が心房からの副伝導路経由場合と心室内から発生した場合のラダーグラム

図は、RとR’の発生タイミングの違いを分かり易くするために、PP間隔の位置に合わせて波形を重ねて表示しています

緑色がRで、黒色がR'です

 

先行収縮の要因が、

(b)副伝導路(心房起源)と考えた場合

心房から出た刺激は、先に副伝導路経由で心室に刺激が到達し先行して心室を収縮させ(Vd)デルタ波となり、その後に房室伝導した刺激が心室を通常収縮(Va)させます

このことから先行収縮は左室側から起こり、ケント束は左室側と推測できます

 

(C)心室内(接合部起源)と考えた場合

心室内から出た刺激は、先にその周辺の心室を先行収縮させ(Vd)、その後に接合部からの刺激が心室全体を通常収縮(Va)させます

この場合は、R’の立上がりがデルタ波同様の形状となり、所謂、偽牲デルタ波になるだろうと推測されます

 

以上の(b)、(C)、2つが先行収縮のの要因として推測可能ですね

 

ではここで、上記(b)か(C)の何れが図(Ⅱ)に起こっているだろうと考えられるでしょうか

図(Ⅱ)と(Ⅲ)は、

  ■先行収縮のタイミングや形が連続的に変化していること

  ■先行収縮の大きさが異なること

が特長的なので、ここで起きている先行収縮は、副伝導路(心房起源)と考えた方が波形形成の要因により近いと思われます

なぜならば、先行収縮が心室内起源ならばそのタイミングや大きさや形はほぼ同じであろうと思われますが、そうはなっていないようです

従って、この先行収縮は心房起源による副伝導路がその機序であろうと推測することができるでしょう

 

よって、この後先行収縮について検討する場合は、これに基づくこととして考えてゆきます

 <2> Rのタイミングパラメーター

Rは洞調律で大よそ70BPM前後です 

PR間隔 0.16秒、R幅 0.06秒、 S 幅 0.04秒

 <3> R’タイミングのパラメーター

図(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)のR’モフォロジーが発生するためにはどのようなタイミングで刺激伝導と心室収縮が起きなければならないだろうかと、演繹的推測で考えたのが図D:タイミングチャートです

図D タイミングチャート
R’の3種類発生における先行収縮のラダーグラム

 

(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)、各々のモフォロジーの違いを分かり易くするために、RとR’を重ねて表示しています

PP間隔の通常位置に合わせてR’を表示しています

緑色がRで黒色がR'です

(上記したように、図(Ⅱ)、(Ⅲ)での刺激は心房起源と仮定しています)

 

図(Ⅰ)PR間隔 0.10秒、 R幅 0.08秒、S 幅 0.06秒、RR’間隔 0.04秒

洞結節からの刺激が心房(RAからLA)を経て心室(Va)に到る直前に、LAから副伝導路経由の刺激が心室の一部(Vd)を早期収縮させ、その後通常伝導による収縮となる融合収縮となります

PR間隔が短くその分R幅(前半成分)が大きいのでデルタ波の存在がはっきりと判りますね

RR’間隔は、デルタ波との融合収縮にPP’間隔より少し短くなる(R頂点の位置より少し手前側にR’頂点が位置してる)ようです

   

図(Ⅱ)PR間隔 なし、R幅 0.06秒、S 幅 0.04秒、RR’頂点間隔 0.12秒

R’に対応するP’がなくRR’間隔が離れているので、R’は早期収縮していると考えられます

先行収縮がが大きいのでデルタ波の存在が考えられ、そのため刺激発生点は洞結節からではなく副伝導路に近いLA周辺から発生しそこから副伝導路経由で心室へ伝導してると推測できます

刺激がLAからRAに伝導することで通常伝導が少し遅れて心室に達するため心室融合が少し遅れるためデルタ波は(Ⅰ)より大きくなるものと推測できます

 

逆行性のP’が発生してるはずですが心電図上に現れてないのは、デルタ波の立ち上がりに掛ってるため隠れているのでは?と想像します

 

図(Ⅲ)PR間隔 なし、R幅 0.04秒、S 幅 0.06秒、RR’頂点間隔 0.12秒

先行収縮は(Ⅱ)に比べ小さく無いように見えますが、拡大すると見えてきますね

これも、早期収縮で(Ⅱ)同様の機序で発生していると考えていいでしょう

しかしながらデルタ波がかなり小さいことから副伝導路経由の収縮発生のタイミングが通常伝導による発生時間と近いことが推測されます

(先行収縮と通常収縮の融合するタイミングが速いということになります)

つまり、刺激発生点は副伝導路に対し(Ⅱ)よりも遠位に位置しているはずと考えられます(大まかに言えば、よりRAに近い場所?)

 (3)T波の陰性化するはずだが?

デルタ波が含まれるR波は刺激が副伝導路経由で通常伝導よりも先に興奮するので(心室性調律のように)その領域ではT波の陰性化が起こると推測できます

デルタ波のエリアが小さければそれがキャンセルされて通常伝導のようなT波になるのではないかと思います

4.R’は何だったのか?

デルタ波を持つがタイミングや形状が異なる3種類のR’モフォロジーについて検討し、その発生を演繹的に推測してみました

 

・先行収縮は副伝導路経由によるデルタ波で、AV伝導の通常収縮との融合収縮(図(Ⅰ))

・先行収縮の刺激発生がPP(間隔)より早期で場所が異なるためその形状や大きさが異なってくる(図 (Ⅱ),(Ⅲ))

 

つまり、

図(Ⅰ)洞調律によるR’+ デルタ波

図(Ⅱ)心房期外収縮(副伝導路近位)によるR’+ デルタ波(大)

図(Ⅲ)心房期外収縮(副伝導路遠位)によるR’+ デルタ波(小)

   ・・・・・これらの融合収縮は、デルタ波? 心室期外収縮?

 

心室の融合収縮の機序についてては仮定に基づく推論が多く、今後さらにはっきりと且つ詳細に考察してみたいと思っています

PACのR波三変化:ローレンツプロットで紐解いてみる

上室性期外収縮(PAC)が多発している24時間心電図で、早期発生のP波によるR波が通常のAV伝導したり変行伝導となったり、或いはBlocked PACとなったりするR波の三変化の心電図がありました

それが何の要因で起こるのかについて、これからローレンツプロットを使っての紐解きを施行してみたいと思います

 

目次
1.PACで三変化するR波   
2.PP’間隔とR’変化の関係   
(1)PP’間隔の違いによるR’の変化   
(2)PACの発生頻度   
(3)PP’間隔のデータをどう集めるか   
3.RRインターバルのローレンツプロット  
 (1)RRインターバルのヒストグラム及びローレンツプロットとは?    
  ①RRインターバル ヒストグラムとは?   
  ②RRインターバル ローレンツプロトとは?    
 (2) ローレンツプロットによるRRインターバル変化のパターン分類  
4.PACのBlocked への変化を考える 
(1)RRインターバルからPPインターバルを推測する
(2)PP’間隔と脚枝不応期 
(3)不応期にヒステリシス現象?

 

 

1.PACで三変化するR波

どんな心電図かというと、図A:PP’間隔とR’の三変化 です 

洞調律(安定的なPP間隔 )のP波をP、早期収縮のP波をP’とし、PによるR波をR、P’によるR波をR’として、PP’間隔とR’の変化を考えてみます

(P波とP波の間隔、或いはR波とR波の間隔をその種類を問わず「PPインターバル」或いは「RRインターバル」と言うことにします)

 

R’は次の3種類の変化をしています

   ・通常の刺激伝導によるPAC(「単発」と言うことにします)、

   ・右脚の伝導ブロックによるにPAC(「変行伝導」とします)、

   ・AV間で伝導途絶によるR波の脱落を起こすBlocked PAC(Blockedとします)

 

同じようなPACなのに、このようなR波(R’)の変化がなぜ起こるのか?

それは、波形を見ると判るように、P’がT波頂上付近に位置し各々のPP’間隔の違いによるR’の変化、その要因としては刺激伝導が脚枝の不応期のどのタイミングに掛るか、ということによる、という答えが定番ですね

 

2.PP’間隔とR’変化の関係

(1)PP’間隔の違いによるR’の変化

図Aで波形を実測してみると

・洞調律の周期によるPP間隔は 0.70秒で、PR間隔は0.14秒です

・PP’間隔とR’の関係は、次のように考えられます

― 単発ではPP’間隔は0.44秒で、刺激伝導のタイミングが脚枝の不応期を脱して通常伝導しているのでR’はほとんど変化しません

― 変行伝導ではPP’間隔が0.40秒で僅かに短くなり、右脚の不応期に掛る右脚ブロック型の変行伝導となります

― BlockedではPP’間隔が0.38秒で更に短くなると、その位置によって左右脚枝でブロックが起こりR’が脱落します

上記のように、PP’間隔が短くなってくるとその間隔に従ってR’が変化しています

一方

・PR間隔とP’R’間隔は各々同じで 0.14秒

・RR’間隔 は自ずとPP’間隔となります

・PACの後のリターンサイクルもP’P間隔とRR’間隔は各々同じで 0.86秒になっています

 

(2)PACの発生頻度

図Aの時間帯では、PACが24秒間で8回も起きています

24時間を通して発生頻度はどのようになっていいるのでしょうか

図B トレンドグラフをみて下さい

RRインターバルトレンドグラフには、単発又は変行伝導のPACとBlockedのPAC(と思われる)が明らかに表示されています

発生頻度は、拍数では大よそ、単発 1340回(1.4%)、変更伝導(1.4%) 1300回、Blocked 500回(0.5%)で、時間帯では睡眠時間帯(及び安静時間帯)を除きほぼ同様に発生し、心拍数が約70BPM以上でています

Blockedはその中でも心拍数が高くなると発生しているように見えます

 

(3)PP’間隔のデータをどう集めるか

PP’間隔がR’変化の要因であるだろうことは判りました

ではこのことが、特定の時間帯だけではなく24時間全体を通して見た場合でも言えるということを確認する必要があります

先ほどはある時間帯での実測でしたが、これを24時間について行うのはかなり困難ですね(実際的ではありません)

そのためにホルター解析装置機能には、「インターバルヒストグラム」と「ローレンツプロット」という機能があります

24時間にわたりインターバルを計測しそれをグラフとして出力できる機能です

 

しかし今使っているホルター解析装置では、残念なことにR波についてだけの出力となっています

*P波の認識が精度よくできないためと思いますが、最近のホルター解析装置にはP波認識ができるものが有るかもしれません

RR’間隔だけではなく、PP’間隔やR波形状毎のヒストグラムやローレンツプロットがあれば相当役立つのですがね

 

なので、24時間のRR’間隔とR’の変化をPP’間隔の推定も含めながら、RRインターバルヒストグラムとローレンツプロットを使って見ていこうと思います

 

*ただ、ローレンツプロットの知見が自分にはほとんどなく、グラフの書き方ぐらいしか知りえていませんので、以下のローレンツプロットに関する推考は現有の知見と仮定とを基に演繹的な推測の連続となっています

 

*また、ローレンツプロットにはRRインターバルに関する多くの情報が含まれていて心拍変動や不整脈について有効な解析ができるので、後日にテーマを変えて検討してみたいと思います

 

3.RRインターバルのローレンツプロットとは?

 

 図C:RRインターバルのヒストグラム及びローレンツプロット がそれです 

  (1) RRインターバルのヒストグラム及びローレンツプロットとは?

RRインターバルをパラメーターにしたグラフには、トレンドグラフ、ヒストグラム、ローレンツプロットがあります

トレンドグラフは経時変化を表し、ヒストグラムとローレンツプロットは記録全体での発生頻度やプロットで、心拍変動のばらつきや傾向がわかり、不整脈や心房粗細動によりそのパターンが大きく変化することでその存在や変化の程度を知ることができるグラフです

① RRインターバル ヒストグラムとは?

各拍毎のRRインターバルの発生頻度を、横軸に間隔、縦軸に発生頻度をプロットしヒストグラム表示したものです

RRインターバルトレンドグラフが経時的な間隔の変化を見るのに対し、ヒストグラムは記録時間全体の間隔の発生頻度を見るものでそのばらつきや出現傾向を知ることができます

ヒストグラムは、心室性以外の間隔(N-N)によるもの、つまり洞性及び上室性と心室性の間隔(N-V)によるものに分かれています

図Cのヒストグラム 「N-N」グラフで言えば、

頻度の多いRRインターバルは大よそ0.7秒(約86BPM)と大よそ0.9秒(67BPM)にピークがあり、その変動範囲が0.5秒(120BPM)~1.1秒(55BPM)にあることが分かります

これは、心拍数或いはRRインターバルトレンドグラフによる時間変化と符合するものですね

それと、間隔0.35秒と1.2秒を中心としたプロットが少ないながら見られるので、つまりPACによる短縮やRR延長があることを知ることができます

 

「N-V」グラフではPVCの連結期が表示され洞周期との関係を推測することができます

 

 ② RRインターバル ローレンツプロトとは?

ローレンツプロットは、ある一拍のRRインターバルを横軸に、それに続く次のインターバルを縦軸にとり、全心拍をプロットしたものです(図C RRインターバル計測点 参照)

これによりRRインターバルの変化に応じてプロットの集団の大きさ(長さや幅)や傾き或いは数種類の形状のパターンの変化が起こります

 

プロットするグラフは、心室性以外の間隔によるもの(N-N-N)と心室性の間隔(N-N-V)によるものに分かれています

 

(2) ローレンツプロットによるRRインターバル変化のパターン分類

24時間のRRインターバルプロットは、その変化の程度により大よそ6つの集団で括ることができそうです

各々の集団がどのようなRRインターバルの変化に対応しているのかを検討してみましょう

今回はR ‐R’‐ R間隔とP ‐ P’‐ P間隔に注目するので図C ①~④の集団についてだけ見ていくことにします

①の集団

期外収縮を除く洞調律変化の最大集団として、「y=x」の直線にある幅のばらつきとx変数の変化範囲が生じます

図C の①がこれで、RR間隔の変動範囲は大よそ0.5秒~1.1秒となっています

②から④の集団は、①から大きくずれているので、期外収縮やRRインターバルの大きな変化により発生していることが推測できます

 

②の集団

②は単発及び変行伝導の先行RR間隔とRR’間隔(期外収縮の連結期)のプロットです

PACが発生するのは先行RR間隔が0.7秒(86BPM)~0.95秒(63BPM)で変動幅は0.2秒位、それに対しRR’間隔はほぼ0.35~0.45秒で、先行RR間隔の変化に対し RR’間隔はあまり変化してないようです

RR’間隔が短いおおよそ0.35付近の範囲では次のことが起きてるように見えます

つまりPP’間隔が短くなってP’が脚枝の不応期に掛るようになると、AV伝導時間が延びてP’R’間隔が延びるのでRR’間隔も延びるでしょう

このことを②の集団で直線補間では、0.35秒付近でその傾斜が緩くなり、RR間隔の短縮に対しRR’間隔が同様に短縮していないということが推測できます

(図Cの②でRR’間隔0.35秒付近で実際に観測されるように見えませんか?)

 

そして、先行RR間隔(=PP間隔)が0.7秒より短くなるとRR’間隔(=PP’間隔)が存在しなくなり、つまりR’はBlocked になり④の集団へと遷移してることが分かります

 

③の集団

③は、RR’間隔(連結期)とR’R間隔(休止期)のプロットです

RR’間隔は②同様0.3秒~0.4秒で、それに対しR’R間隔は0.55秒~0.85秒と変化しています

RR’間隔の変動幅は②同様にR’R間隔に比べあまり変化してません

(R’R間隔が洞周期によるリターンサイクルだということを考えれば②同様の変化になると推測できます)

 

ここで、②と③の集団の関係について考えてみます

②と③のをプロットは、RR’間隔がが共通で各々先行RR間隔(=PP間隔)とRR'のリ ターンサイクル(=PP間隔+2×洞房(SA)伝導時間)となります

そのため③は①を中心とした②の線対称の位置で縦軸はRR間隔に「2×SA時間」を乗せた(加えた)ものがRR’間隔となるでしょう

③のRR’間隔の0.35秒より短い範囲については②と同じようなことが起きていると推測されます

つまりPP’間隔が短くなってP’が脚枝の不応期に掛るようになると、AV伝導時間が延びてP’R’間隔が延びるのでRR’間隔も延びるでしょう

P’P間隔のリターンサイクルは変わらないのでそうなるとR’R間隔は短くなってきます

 

このことを③の集団で直線補間してみると、RR’間隔の0.35秒より短い範囲でその傾斜が急になり、RR’間隔の短縮に対しR’R間隔がより大きく短縮してることが推測できます

(図C③で、RR’間隔が0.35秒以下ぐらいでそのように見えますが果たして・・・・)

 

④の集団

④は先行RR間隔とBlocked PACによるRR間隔のプロットとなります

先行RR間隔が0.6秒~0.75秒で発生しBlockされたRR間隔が1.1秒~1.3秒となっています

BlockされたRR間隔も先行RR間隔によるリターンサイクルの変化に基づくので

同様の変動幅となります

 

ここまでで判るように、②と③.のローレンツプロットだけではR’の形状が単発なのか変行伝導なのかを知ることはできません

 

また、PP'間隔を考える場合、RPインターバルはRR間隔によって変化するため、PPインターバル=RRインターバルとならないので、PPインターバルそのもので考えなければならないでしょう

 

さて次に検討したいことは、

②と④を比べて、R’がBlockedとなる変化を考えてみたいと思います

 

4.PACのBlocked への変化を考える

ローレンツプロットで直接知れるのはRR’間隔(連結期)の変化だけですが、知りたいのはPP’間隔の変化なので、それを推測してみましょう

 

(1)RRインターバルからPPインターバルを推測する

PP’間隔についてみると、PR間隔が変化しなければ基本的にはRR=PP間隔、RR’=PP’間隔となるので、②は先行PP間隔とPP’間隔の関係を表すことになります 

 

④はRR’間隔がプロットされないのでP’及びR’を仮定しPP’間隔を推測することになります

それは、④の先行RR間隔に対し②の直線補間を外挿することでPP’間隔を推定することができるでしょう(図C 外挿区間)

つまり、④の先行RR(=PP)間隔 0.6秒~0.75秒をこれに当て嵌めると④の採りうるPP’間隔は0.3秒~0.4秒と推測できます

 

これで②と④の各々の先行PP間隔とPP'間隔の範囲が分かったことになります

  ・②ではPP間隔:0.7秒~0.95秒  PP’間隔:0.35秒~0.45秒

  ・④ではPP間隔:0.6秒~0.75秒  PP’間隔:0.3秒~0.4秒

 

PP’間隔が各々近いところに位置していて僅かな変化でBlockedが起こるのは、PP’間隔の長さによる、つまり不応期との関係にあると言う前提で、次にそれを見ていきましょう

 

(2)PP’間隔と脚枝不応期

まず、PP間隔、PP’間隔と不応期の関係を考える場合は、次のことを前提及び仮定しています

 ・PP間隔とPP’間隔の変化は直線関係にあり連続して変化する

 ・PP間隔と不応期の時間変化は狭い時間範囲で見ると直線関係にある

 ・不応期より短い時間内に発生したP’はBlocked に変化(遷移)する

 

そして、PP間隔の変化による、②単発/変行伝導と④Blocked のPP’間隔の変化を表示したのが図D:PP’間隔と脚枝不応期(模式図)の青色と橙色の2つの直線です

(図Dはあくまで模式図なので実際の時間スケールとは異なります)

図を見て、おやっ?と思うのが、

R’が単発/変行伝導からBlocked へ変化する場合とBlocked から単発/変行伝導へ変化する場合のPP’間隔は、連続した直線関係にあるとの仮定なのである1つの時間となるはずですが、図では一つではなくある範囲の重複する時間幅を持っていることです

つまり、R’がBlocked に変化するPP’間隔は0.35秒以下であり、Blocked からR’が発生できるのはPP’間隔が0.4秒以上となっています

この現象はどのように考えればいいのでしょうか

簡単には、このR’の変化(遷移)が起こる付近で、PP’間隔か不応期のいずれか又は両方かが非直線的な変化を起こしていることが推測できます

 

上記②の集団の説明で書いたように、RR間隔に対するRR’間隔の変化が0.35秒付近で直線補間の傾斜が緩むことを考えれば、PP間隔に対応したPP’間隔の変化はこの付近でも直線関係を維持していると推測できるので、上記の非直線的変化が起こるのは不応期であろうということが言えそうです

 

(3)不応期にヒステリシス現象?

そういう仮定で不応期の変化を考えると、通常はPP間隔と不応期は直線的関係ですが、PP間隔が短くなって(②の直線)0.75秒以下になると、PP間隔の変化に対し不応期はより短くなる傾向となり直線の傾斜は下向きにより急になるでしょう

また、PP間隔が長くなって(④の直線)0.7秒以上になると、PP間隔の変化に対し不応期はより長くなる傾向となり直線の傾斜は上向きにより急になると推測できます

 

不応期のこの変化を図示したのが図Dの不応期の直線です

このような不応期の変化の仕方によって、PP’間隔が0.35秒~0.4秒の範囲では、同じPP’間隔でも不応期より短い時間となる場合(Blocked となる)や、長い時間となる場合(単発/変行伝導となる)が起こることができるでしょう

 

結果、上記で書いた、R’の変化(遷移)が起こるPP’間隔は、変化の仕方により重複する時間幅を持っていることが言えます

以上のことは、物理で言う「ヒステリシス現象」で、脚枝不応期でもこれが起きているんですね

 

ヒステリシスとは、

「加える力を最初の状態のときと同じに戻しても、状態が完全には戻らないことで、ある物質や系の状態が現在の力のみならず、その過去に加えられた力の影響を受けて変化する現象で履歴現象や履歴効果とも呼ばれる」もので、

不応期について言うと、

不応期とPP間隔の時間変化の関係で、PP間隔が0.7秒から0.75秒の範囲では、その変化する方向(短くなるか長くなるか)により、範囲外では直線関係にあった傾斜(不応期)が上下に変化する、つまり、

不応期の変化にはその時以前のPP間隔の変化が記憶されていて、PP間隔が短く(長く)なれば不応期もより短く(長く)なるという生体のヒスシテリシス現象が起きている

ということは想像に難くないことでしょう

 

S波拡幅に隠れる異常波形―何だろうと思っていると”えっ!ブルガダでは??”

〈はじめに〉

ここに書いた記事は、心電図の異常波形の要因について、既知の知識や解釈に基づいて演繹的に推論したり独自の仮定に基づく推測を行っている部分が多く、医学的エビデンスに欠ける部分もあろうかと思います

自分の理解のために多くの仮定を含んだ解釈であるということをご理解の上お読みください

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洞調律で一見何の問題もなさそうな心電図

それがこの波形

上段が24時間の殆どを占める基本的な波形

下段が、ちょっと変だなあと思わせる時間帯の波形

で、ST部分に注目

 

 S波がやや深いのはいいとして、ST接合部がよくわからず

 T波開 始位置まで延びているではありませんか



 このS波、なんか違和感感じますね

 S波の幅と深さが拡大する心電図といえば、虚血性によるもの、

 又は脚ブロックや心室肥大の機能的な要因によるST低下?

 QT時間の延長? 或いは別の要因? 

 

 

判りませんね

なので、先ずは波形を詳細に見てみましょう

 

その前にちょっと注意しておかなければならないことがあります

ST計測に関することです

下図を見てください

ホルター心電図解析装置の性能上、P波やST部分、T波を正確に検出できません

(ひょっとして現在では高い精度でそれらの検出ができてるのかもしれませんが・・・)

そのため、解析装置でのSTレベルの検出についてはすべての計測の検出の基準はR波(ピーク)となります

ここでは、ST計測の基準レベルは、PQ間のR波頂上から-60mSの点で、計測点はR波頂上から+100mSのところで検出しているデータとなっています

基準レベルの点や計測点は、解析装置によって任意に設定できるようになっていたり固定だったりします

手作業によるSTレベル計測では、PP間の基線を基準レベルにとり、ST接合点を見つけてそこから60mSや80mSなど(解析者によって任意)の点を計測点としていると思います

厳密に言えば、上記の2方法に測定値の差が出るとは思いますが、解析装置による測定値は絶対値としてみるのではなく、STレベルの相対的変化や経時的変化を見るようにしたほうがいいように思います

ST接合点は、S波とST部分が変曲する点(傾きが変化する点)といわれているので、

このS波が拡大しST部分に繋がってるような場合は変曲点が見つからないので、S波最深部を接合点とし、計測点はそこから80mSとすることができると思います

 

では、各セグメントの計測値の変化を見てみましょう

S波幅 60 ⇒ 140mS、 

STレベル +0.12 ⇒ -0.24mV、 

S波深さ -0.45 ⇒ -0.45mV、 

ST部分継続時間 60 ⇒ほぼ0mS、 

T波時間 約220 ⇒ 180mS、 

T波高 0.6 ⇒ 0.3mV、 

QTc 440mS(Bazett式)変化なし

つまり変化は、S波深さは変わらず、ST接合点(変曲点)やST接合部分が見えなくなってT波となだらかにつながり上昇型のままT波開始点に到るということです

また、S波ピークではU字型に変化しているので通常と異なる機序が働いてるかなと予感させますね

 

では、このS波の幅の拡がり(拡幅)がどのようなことで発生しているのかを検討してみましょう

S波は(Ⅱ誘導では)、ミクロ的にみれば心筋活動電位の(最後に脱分極する心筋)外膜側の第1相によるもの、またマクロ的に見れば心室興奮の最後の方で現れる心室基底部や心室壁深部の興奮の表れと考えることができると思います

通常では、おおよそ幅0.2S、深さ0.5mVとなっています(基線レベルで測定)

異常の有無は、STレベルの高低やS波幅、12誘導心電図胸部誘導のR波とS波の大きさの比率やなどから確認します

つまり、S波の変化は部分的な心筋細胞の活動電位レベルの変化、或いは心筋の起電力ベクトルの変化によって現れるので、その原因とすれば、虚血性STレベル低下、右脚ブロックや心室肥大等の機能的要因、QT延長(ST部分の延長)等が主たるものと考えられ、或いはまた別の要因があるかもしれません

 

 1.虚血性STレベル低下による拡幅ではないか?

虚血性ではSTレベルの低下が起こり、S波の拡幅のように見えます

心筋の活動電位で見ると、虚血の場合の分極状態では心内膜側の心筋の電位が上昇し脱分極で心外膜側より電位が低いためSTレベルが下がるのでしたね

  

   ST低下については下記のブログ記事を参照してください

 

問題の波形変化、STレベルは確かに大きく低下し上昇型のようになってていますが、ST接合部が見当たらずT波開始点がそのようにも見えるし、その幅が広がっているところがちょっと変ですね

つまり、所謂S波がないように見えるのです

本来であれば、STレベルの低下があった場合でも、S波があってST接合部となりT波に向かうという変化が起こると思うのですが、この波形にはそれがなくR波がマイナスになった後S波はちょっと平坦になりに、そこからT波に向かって上昇していっているように見えます

この波形ができるためには、(後の方で検討してみますが)心筋の活動電位で考えると、心外膜側の1相がオーバーシュートしてから2相へと緩やかに戻りプラトー状態がないような変化が起きているのでは?と推測できます

問題の波形変化は虚血による心筋電位の変化としては実際起こり難そうなので、このSTレベル低下と拡幅は虚血性によるものではないだろうと考えた方がよさそうです



 2.機能的な原因による拡幅ではないか?

右脚ブロック、心室肥大や変行伝導等による機能的変化では、S波増大と拡幅が起こりますよね

これらは刺激伝導系の変化により右脚ブロックによる右室側への遅延伝導或いは心室壁、や心基部、心室壁深部での起電力増加によるものと考えられます

問題の波形変化では、刺激伝導系は変化なくそれに起因する波形ではなさそうなので、これらのことが原因とは考えにくいと思われます

また、機能的なS波拡大にしてはCH1:CM5とCH2:NASAの波形形状と大きさがほぼ同じと言うのも違うかなっていうところですね

 

 3.QT延長によるものではないのか?

S波が延びているので一寸見、QT延長かなあ?と思って見てました

QT延長は、原因は遺伝性QT延長や電解質異常によるQT延長が主ですが、その心電図変化パターンは、

 ①殆どがS波とT波の幅は正常で、ST部分の延長が ― 低Ca血症

 ②T波の幅が拡大 ― 低K血症

 ③ST部分の低下とU波増高

ということです

が、よく観察すると、QT延長の各タイプに該当していないようだし、この心電図のQTcが440 mSなのでQT延長とは言えないような感じですね

 

 4.上記以外の原因ではないのだろうか?

S波の大きさは変化なく拡幅だけが起きてピークではU字型に形状変化しT波開始点まで直線的に上昇していると言うことは、STレベル低下のような虚血性の心筋活動電位変化ではなくて、刺激伝導系による機能的変化による心筋起電力の変化のようなものでもなさそうです

しかし、起電力ベクトルで考えてみるとはっきりするように、通常の刺激伝導系によるS波(電気軸 -135度位)が電位はかなり大きく且つ遅延しながら心筋活動していることが判ります

他の心筋部分では通常通りの活動電位で、心基部或いは心室壁深部(電気軸 -135度位)の心筋ではS波の形状変化から下図のような活動電位の変化が起きていると推測できます

   *心筋の活動電位と起電力ベクトルの対応関係については、別記事で詳細に検討してみたいと思います

 



 心外膜側において活動電位の1相から 2相へは直ぐに戻らず緩徐に傾斜しながら低下し、T波に接続すると仮定すると、問題の心電図のS波の変化のようになることが判りますね

 言ってみれば心外膜側の電位が緩徐に 低下するような伝導遅延が起ていると考えられませんか



 

  ここまでの検討では、その原因がなぜ起こるのか、自分の持ち得る現有知識ではちょっと見当がつかないと言うのが本当の所でした

 

 

 

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                            ↓

しかしながら、そこでは何が起きてるかなあってずっと思っていたところ、その疑問を解決できるような下記の文献がタイミングよくXツイッターで紹介されていました

 

【3チャネルホルターモニタリングにおける一過性上行ST節低下およびS波の拡大—ブルガダ症候群における右心室流出路におけるドロモトロピック障害の兆候:5例の報告】

【Transient ascending ST‐segment depression and widening of the S wave in 3‐channel Holter monitoring—A sign of dromotropic disturbance in the right ventricular outflow tract in the Brugada syndrome: A report of five cases - PMC

】

 

この文献は、ホルター心電図で、S波が拡幅しSTレベル低下の有った波形を上下(誘導極性)反転してみたところブルガダ型波形異常であった5例についての報告でした

 

例示として、下図のようなホルター心電図の波形変化に対し、12誘導心電図でブルガダ型異常波形が確認できたということです

この文献のホルター心電図の誘導は、CH1:NASA誘導、CH2:CM5誘導、CH3:Modified CC5なので注意してください

  

これは、ホルター心電図のCM5:CH2誘導を極性反転させた波形はaVR に近似するというものです

そしてaVR 誘導は、胸部誘導の上位肋間誘導に近い波形であり、右室上部や基底部等の起電力を見る方向なのでそこでの活動電位変化がよりはっきりと表れてくるということです

(下図参照)

 

 

次に、問題の心電図波形をこの文献に従って追随してみましょう

 

波形(CH1:CM5誘導)を拡大し極性反転して表示すると下図のようになりました

この問題の波形はそれだけ見れば、この文献と同じようにブルガダ型波形異常ではないだろうかと疑えますよね

 

胸部誘導上位肋間でのブルガダ型心電図波形の特徴的なST上昇は、Cove型で0.2mV以上でその原因は右室流出路の伝導遅延によるとも言われています

 

 CH1:CM5誘導で記録した、問題の心電図波形をみると、STレベル -0.24mV、S波深さ -0.45mvであり、T波開始点までの直線的な上昇が見られます

 これを極性反転すると、上記文献に見られるようなST上昇のCove型、0.2mV上昇、T波陰性化等のブルガダ型心電図異常と見ることもできそうです

 

 

 

 

ブルガダ症候群について調べると、そのリスクは以下の様です

・遺伝

・男性中高年

・食後や睡眠時等の安静時(副交感神経優位)

 

問題の波形のホルター心電図の被検者は、46才、男性、PVCなし、PAC(単発)9回

STレベル低下は22時から00時で発生し、この区間の最小HR73BPMです

(下図 STレベルトレンドグラフ参照)

 

そして、被検者病歴、家族歴、現有症状、ホルターの目的、12誘導心電図等の被検者に対する情報は先に書いたこと以外知りえません

なので、ブルガダ症候群に対するリスクやブルガダ型波形に対する12誘導心電図等での確認などは行っていないのでこれがそうだとは言えないのですが、この文献に追従すればブルガダ型波形異常の可能性も排除できないのではないか、と言うことが言えるでしょう

 

ST変化について、心筋虚血や梗塞ということだけではなく、今後はこういう観点でもホルター心電図解析を行っていく必要があると感じました