特定の時間帯、早朝午前3時と6時の時間帯でRR間隔が突然に且つ多様に変化し、
PACが形態変化しているホルター心電図があったので採り上げててみたいと思います
70歳、男性、ホルター心電図記録中に症状はありませんでした
基本調律は洞調律で、最大/最小/平均心拍数 135/57/85BPM
単源性PVCが0.03%、早期収縮のNarrow QRS(PAC)が0.19%、さらに特定の時間帯に集中してPACと長いRR間隔が発生していました
以前の記事で「PACの三変化」としてPACが、心房性~変行伝導~Blocked に変化する現象を採り上げました
今回は同じようなPACの2変化ですが、ちょっと様子が違っていて、RR間隔の突然の延長なども紛れ込み、自ずとその原因も違うだろうと思われるので、RR間隔の変化をプロットしたトレンドグラフとローレンツプロットを探りどんな現象が起きてるか、その原因を前回同様検討してみたいと思います
以後使用するRR間隔に関する用語について下記のように決めておきます
・RRインターバル:RR間隔をプロットしたグラフの呼称
・基本調律:RR間隔の大きな変化が起こる前後の最頻出モフォロジーによる調律(通常は洞調律)
・RR間隔:隣り合ったR波間の時間間隔
・RR/RR’/(例)AB:記号で表された波形間の時間間隔及びその値
(RR:基本調律のRR間隔/RR’:基本調律Rと期外収縮R’のRR間隔/(例)波形Aと波形Bの間隔)
また、使用する表示記号、名称等について、参照する図中に表示されるのでそれらを参照してください
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目次
1.RR間隔をグラフ化すると?
(1)RRインターバルトレンドグラフとは?
(2)RRインターバルトローレンツプロットとは?
2.RR間隔プロットのグループ化と心電図波形
㋑洞調律(Sinus Rhythm)
1-どんな波形?
2-プロットの特徴
㋺Isolated PAC
1-どんな波形?
2-プロットの特徴
3-PACセグメントと先行RR変化の関係
㋩Blocked PAC
1-どんな波形?
2-プロットの特徴
㋥RR延長(RR Prolong)
1-どんな波形?
2-プロットの特徴
3.先行RRの変化に伴うPAC形態の変化
(1)Isolated PAC-1~Isolated PAC-2グループへの変化
(ⅰ)通常のPACの連結期の変化は?
(ⅱ)Isolated PAC-1の連結期の変化
(ⅲ)Isolated PAC-2の連結期の変化
(2)Isolated PACからBlocked PACへの変化
(3)Prolong RR とPACの関係
4.先行RRと時間間隔セグメント変化の関係は?
5.心室性期外収縮のローレンツプロット
6.IsolatedPACとBlocked PACが交互に出てくるのは?
7.同じPAC三変化でもその発生要因は違っていた
1.RR間隔をグラフ化すると
RR間隔の不整の要因などを考えるためには洞刺激間隔(SS間隔)(延いてはPP間隔)を見る必要がありますがホルター心電図の解析装置にはその機能がない様です
(S波は波形がないので、またP波は電位が低く周波数成分も低いため検出できないと思われます
もしかして最近では検出機能を備えたものもあるかもしれませんが
なので、やむを得ずRR間隔からのアプローチということになってきます)
RR間隔をプロットしたグラフには、トレンドグラフ、ヒストグラム、レシオ、ローレンツプロットなどがあり其々の有効性がありますが、ここではトレンドグラフとローレンツプロットを採り上げます(この解析に使用した装置の仕様によってこの2つに制限されてしまいました)
(1)RRインターバルトレンドグラフとは?
下「図トレンドグラフ」の「RRインターバルトレンド」を参照ください

トレンドグラフは横軸に時間経過、縦軸に何をプロットするかで心拍数、RR間隔、PAC、Blocked PAC発生数の他に、PVC発生数、Pause、Afなどの表示機能を持つものもあります
RRインターバルの場合は縦軸にRR間隔 N をプロットしているので、その変化の大きさと時間関係(発生時刻や継続時間など)、RR間隔変化の推移が判ります
一般的な洞調律の場合(不整脈を除くと)、24時間全体で見ると心拍数は身体活動と共に緩やかに変化し、そのプロット数が多くなると太線様のラインができます
不整脈は縦軸の変化としてプロットされるので時間軸に対し数種類のグループが形成されます
また、心拍数とRR間隔は定数60の反比例関係にありますトレンドグラフ上は線対称をなす関係にあります(ただ、心拍数は移動平均値で、RR間隔は瞬時値で表現されていると思われます)
(2)RRインターバルトローレンツプロットとは?
下「図 RRインターバルローレンツプロット」を参照ください

ローレンツプロットは、横軸にある時点のRR間隔 Nをとり、縦軸にはそれに続く直後のRR間隔 N+1をプロットしてあります
そして、グラフは心室性調律(PVC)と心室性以外の調律(所謂洞性及び上室性)の2つに分られています(それが使用している解析装置の仕様になっています)
■PVC(心室性期外収縮)の場合は、
横軸「N」はPVCに先行する基本的な調律のRR間隔を、縦軸「N+1」はPVC直前とのRR間隔(つまり連結期)をプロットします
なのでPVCの連結期のグループが表示されます
■PVC以外(洞性調律、上室性調律)の場合は、
隣り合ったRR間隔が連続的にプロットされます
基本的調律はある程度の変動幅を持った1本の直線(y=x)で明確に示されます
RR間隔が変化数する場合は、例えばPACであれば、
RR間隔(先行)~ RR間隔(PAC連結期)~ RR間隔(PAC休止期) ~RR間隔(後行)が連続的にプロットされるので、
まず、横軸「N」にPACが起きる前の先行RR間隔、縦軸「N+1」にPACの連結期を、
次に、横軸「N」でPACの連結期、縦軸「N+1」でPACの休止期を、
次に、横軸「N」でPACの休止期、縦軸「N+1」でPACが起きた後の後行RR間隔を、
各々連続的にプロットします
不整脈などによるRR間隔の大きな変化があると、それらのプロットは基本的な調律から大きく外れて異なるグループを形成することになります
また、(後から検討することになりますが)RR間隔が変化して基本的調律に戻るまで2~3ステップを経るため小グループが形成されます(図中 (a), (b), (c))
念のためですが、グラフが表していることは、横軸は縦軸が直線近似し比例関係にあるものの、これが因果関係ではなく、パラメーター(横軸も縦軸もある同じ変数をもつ関数)の存在を示すものであるということを確認しておきたいと思います
2.RR間隔プロットのグループ化と心電図波形
この解析におけるRRインターバルトレンドグラフとローレンツプロットを観察すると、基本調律によるものと、RR間隔の大きな変化に対応した主な3つのグループが形成されています
各々を ㋑洞調律、㋺IsolatedPAC、㋩Blocked PAC、㋥RR Prolongと名付けておきます
グラフ上でのグループ分けとそこに属する実際の心電図(代表例)を以下に示しします
各々のグループについて、どんな波形でそれらの特徴について見ていきましょう

㋑洞調律(Sinus Rhythm)
1-どんな波形?
基本調律がこれで表されます
RR間隔(RR)が凡そ0.5~0.8秒(75~120BPM)のトレンドグラフのプロットで最も多く集合している太線で表され、比較的緩やかに変化し、生活活動と共にその大きさが変化する基本的な調律です
ローレンツプロットでは 、y = x 上に展開される最多のプロットグループで太い線で表されていて、その長さは最大~最小心拍数を表し、その太さは変動幅を表しており、これは整の調律を意味していて、波形形状からもこのグループが洞調律と言えるでしょう
PRは0.2~0.3秒位で1度房室ブロックとなっています
2-プロットの特徴
ローレンツプロットは隣り合ったRR間隔をプロットするので、心拍数の変動により自律神経活動を間接的に評価するものと言われています
日常生活の中で心拍数は活動の身体的あるいは精神的負荷などに応じて暫時変化し、基本的にはy=xの直線上にプロットされます
そして、短い時間でのRR間隔の変動はy=xの直交方向にプロットが膨れて幅を持ちます
また、RR間隔を長い時間でみた変動はy=xの最大値と最小値の間にプロットされます
RR間隔が短い方のエリアに比べ長いエリアでは副交感神経が優位となりその変動も大きくなるようで、垂直方向の変化は大きくなるのが通常のようです
㋺Isolated PAC
1-どんな波形?
波形については、「図 波形計測 Isolated PAC-1/,-2」を参照してください
PACは、RRインターバルトレンドグラフで凡そ0.4~0.8秒のRR間隔の連結期(RR’)を持つ期外収縮のグループです
経時的な発生頻度については、「図 トレンドグラフ PACトレンド」を参照してください
波形をよく見ると図に示したように、発生する時間帯によってはPACのRR’が長短2種類のものが有るようです
これを、「Isolated PAC-1」,「Isolated PAC-2」と名付けておきます
この違いがなぜ起きるかは後述3.で検討することにして、ここでは波形がPACであることを確認するため、図 Isolated PAC-2を取り上げてみます
波形を見ると、これはR’の前後に一見P波(P’)が見えなくてR’の形状が洞調律と同じなので接合部起源の上室性期外収縮(PAC)かなと疑いました
そこでPACのP’Pでもあるリターンサイクル(RC) を経験式で求めてみると、
PP 0.84秒 + PR 0.28秒 = 1.12秒 = RC
ではP’がどこにあるかと、PAC直後のPから手前に1.12秒戻って探してみると、ありました
T波の立上がり付近です
実測でP’P = 0.10秒でした(計測誤差範囲?)
P’の起源は、P’R’が先行のPR 0.28秒より短くないことと極性が正と見ると心房起源(形状がはっきりしていないですが右房かな?)と推測できませんか
また、P’R’が0.42秒とかなり延長している点が気になりますがこれは後で検討することにします
ここで、R’を伴うPACをR’のないPACと区別するために、単発の上室性期外収縮を「 Isolated PAC」と呼ぶことにします
で、この波形は2種類のPACのうちの一つで 「IsolatedPAC-2」としています
残り1種類のRR'が延長したPACについても上記と同じように見ると、RCが0.82秒でそこから推測するとP’はT波の頂上に位置しているようです
このPACを、「Isolated PAC-1」 としています
図のローレンツプロット上に、この2種類のPACが図中 破線表示でIsolated PAC – 1、Isolated PAC - 2に分けて表示しています
この2種類のIsolated PACは、
・Isolated PAC-1は、
03時台と06時台以外の時間帯に発生
先行RRが凡そ0.4~0.7秒以下ではRR’が0.3~0.5秒に変化
PP’は0.4秒ぐらいでP’R’が0.3秒前後に延長
・Isolated PAC-2は、
03時と06時台に特長的に発生
先行RRは0.8秒位、RR’は0.6秒前後、
PP’は0.4秒ぐらいでP’R’が0.4秒位に大きく延長
先行するRRの変化に伴う連結期(RR’)の違う2種類のIsolated PACは、ローレンツプロットグラフ上で、RRの0.4~0.8秒の変化に伴いRR’が凡そ0.3~0.5秒に変化するグループと、0.6秒台に変化する2つのグループに分かれて表示されていることが解りました
この発生機序については、後で検討したいと思います
2-プロットの特徴
Isolated PACのRR間隔の変化は、「図 RRインターバル ローレンツプロット」中の(㋺)Isolated PACプロットで表され、そのグループは
・RR(洞調律)~(a)~ RR’(連結期)~(b)~ R’R(休止期)~(c)~ RR(洞調律)
と変化して更に各グループを作り、(a) →(b)→ (c) とプロットが移動していきます
(a)と(b)は、y=xを中心とする線対称付近に集まりに近く、(ⅽ)は(a)の上方に直線に並行に位置する関係となることがわかります
3-PACセグメントと先行RR変化の関係
Isolated PACのPP’、P’R’、RR’などの時間間隔セグメントの先行RRとの関係を調べるために、それらを波形からサンプリングして、RRを横軸にグラフ化してみると、RRの変化に伴って各セグメントが直線近似できる比例関係にあることが判りました
但し、PP’だけは例外でほぼ一定であることも判りました
これが今回検討しているPACの連結期の変化にとって重要なファクターであることが後で解るようになります
㋩Blocked PAC
「図 波形計測 Blocked PAC」 を参照してください
1-どんな波形?
洞調律のプロットから大きく変化して延長しRR間隔が凡そ1.4~1.5秒となるグループです
トレンドグラフでは03時と06時に特長的に発生していることが判ります
波形を見てみましょう
前後のR波はP波が見えていて洞性調律です
そこに先行RRより長く、またその2倍よりは短く、且つP波が(一見見えていない)ないとなればWenckebach型洞房ブロックや洞性不整脈あるいは呼吸性不整脈を疑いますが、先行及び後行のRRは洞調律で一定で変化してないことからちょっと違いそうです
そこで、
先行するPPが0.84秒でPRが0.30秒なので、0.88+0.28=1.16≒1.14秒
これを1.6秒のRRのなかに入れて見ると、どうも上記PACで出てきたリターンサイクルと同じようです
後続するP波の1.14秒前の時点をよく見ると、そこには早期のP’が見つかりR’が脱落してることが判ります
これは所謂 Blocked PACですね
P’があっても伝導出来ずR’を伴なわないPACです
ここで発生しているP’は、上記のIsolated PACと同じもののようですが、PP’が同じなのにも拘らずBlocked PACとなってています
これはなぜでしょうか? 後の6.で検討してみることにします
2-プロットの特徴
Blocked PACのRR間隔の変化は、「図 RRインターバル ローレンツプロット」中の(㋩) Blocked PACプロットで表され、そのグループは
・RR(洞調律)~(a)~ RR(Blocked) ~(b)~ RR(洞調律)
と変化して各グループを作り、(a) →(b)とプロットが移動していきます
(a)と(b)は、ほぼy=xを中心とする線対称に近い関係となることがわかります
㋥RR延長(RR Prolong)
「図 波形計測」中 「RR Prolong」を参照してください
1-どんな波形?
RRが急激に凡そ1.1~1.3秒に延長するグループです
トレンドグラフでは03時~06時にだけ発生していることが判ります
また、時間軸で見るとこのイベントの始まりと終わりでBlocked PACが発生していることも特徴的です
波形を見てみましょう
RRが急激に延長しそれが数拍かけて次第に元に戻る変化が起きています
この時間帯でのRR間隔、特にこの間のP波、R波及びPRがほとんど変化しない洞性調律で、変化のタイミング的に洞房ブロックには該当せず洞性不整脈のように見えます
RRの変化の仕方は、それが突然延長した後徐々に元の間隔に戻る様な動きをしていることが判ります
圧縮心電図などでこの変化を見ると、深夜3時から6時の間、同一時間帯で4~6秒周期の規則性が観察できます
それは、
・変化の周期を、4秒とすると1分間では15回の変化
・心拍数が約75BPMの場合は、周期の比率 75:15 = 5
・RRの変化が0.84秒~1.18秒なので、変動幅は0.34秒とかなり大きい
・R波波高値はRRの延長~短縮によりその大きさが少し変化
上記の計測から、
洞調律でPR間隔一定、変化の規則性(周期)、変化の周期と心拍数との比率が5、発生が夜中から明け方(睡眠時間帯と想像される)、R波波高値変化などを勘案すると、これは呼吸性の洞性不整脈だろうと推測できませんか?
2-プロットの特徴
Prolong RRの変化は「図 RRインターバル ローレンツプロット」中の(㋥) Prolong RRプロットで表され、そのグループは
・RR(洞調律)~(a)~ ProlongRR ~(b)~ ProlongRR ~(c) ~ RR(洞調律)
と変化してy=xの線対称としてこれをを取り巻くように各グループを作り、(a) →(b)→ (c)とプロットが移動していきます
(b)~ (ⅽ)は、呼吸によるRRの変化によっては複数のグループが作られ、y=xの水平と垂直方向の変動幅がかなり大きく表れます
3.先行RRの変化に伴うPAC形態の変化
ローレンツプロット上でグループ間の移行で起こる先行RR間隔の変化に伴うPACの形態変化について詳しく見てみましょう
(1)Isolated PAC-1~Isolated PAC-2グループへの変化
Isolated PACのグループは先行RRの変化に伴う2種類の連結期変化パターンが観察され、これをIsolated PAC -1と-2に分けました
先ず通常のPACで起きる連結期の変化と比べてみましょう
(ⅰ)通常のPACの連結期の変化は?
洞刺激間隔つまりRRが変化するとそれに伴って、上室の刺激伝導系の時間間隔セグメンである洞房や房室伝導時間、及び各々の不応期なども変化します
これは、洞結節及び上室の刺激伝導系が同時に副交感神経の影響を受けるので、各々のセグメントは影響の度合いが異なるもののそのコントロール下にあると言われています
(この件については、後で再掲します)
PACのローレンツプロットは基本的に、RRの変化に比例してRR’がほぼ直線的に変化し、その時の変化の程度は、近似直線の傾きの大きさとなります
これは通常、洞調律のPP間隔の変化に対し主にはPP’がそれに直線的に変化するためです
(P’R’も多少変化するはずですがPP’の変化がより大きいものと思われます)
(ⅱ)Isolated PAC-1の連結期の変化
Isolated PAC-1のグループの連結期のプロットが、上記(ⅰ)の通常の連結期変化に該当しています
但し、ここでは通常の場合とは少し異なること起きているようです
それは、上述したようにPP’はRRに拘わらず0.4秒のほぼ一定であることがわかっているので、このグループの連結期の変化は、主にRRに変化と同時に起こるP’R’の変化によるものであろうと推測されます
(ⅲ)Isolated PAC-2の連結期の変化
ところが、RRが0.8秒以上になると連結期の変化が少し違っているようです
(これらの計測のサンプル数が少ないため、以後は演繹的推測になっています)
Isolated PAC-2のグループがこれになります
グループ内のプロットはPAC-1同様に直線近似していますが、その傾斜が急に大きくなり連結期が大きく延びているように見えます
計測値で言えば、RR’が0.46秒から0.54秒に延長しています
これがなぜ起こるのかと考えてみると、
RR’の変化(この場合は急激な延長)は、PP’かP'R’が変化する必要があります
PP’はほぼ一定であることからIsolated PAC-1同様に、P’R’の変化(この場合は急激な延長)によるものだろうと考えられます
波形で見ると、RRが0.8~0.85秒になるとP’R’はそれまでの0.28秒から急に大きく0.40秒まで延長しています
では、P’R’のこの急激な延長についてはどう考えればいいのでしょうか
2通りの推測を考えてみます
(その1)
基本的にはP’R’の延長は、RRの増加と同時に起こる房室接合部での不応期の延長と考えられるので、それが急に大きくなった現象(その理由は?ですが・・・)とすることができるかもしれません
(その2)
しかし、もう一歩踏み込んで以下の推測をしてみます(ここからはほとんど実証のない推測となりますが)
それには房室結節の、FP(速伝導するが不応期は大きい)とSP(遅伝導するが不応期は小さい)の2重伝導路という考え方を引っ張り出します
通常は、心房からの刺激がFPから先に心室に伝導し、SPからの伝導はブロックされます
RRの延長と共にFPの不応期は大きくなり、PACのP’R’も大きくなります
ここで、FPの絶対不応期にP’が来るとFPの伝導はブロックされてしまいます
そうなると、SP(は不応期を脱していると仮定)からの伝導が起こり急激に伝導時間が大きくP’R’が延長することになります
この後はPACの休止期を経て通常の伝導に戻ります
・・・ 以上のような2通りのメカニズムを推測してみました
(2)Isolated PACからBlocked PACへの変化
「図 波形計測」の連続した12秒のなかで、Isolated PAC-2とBlocked PACが同一時間帯で交互に発生しています
ローレンツプロットで各々のグループを見れば、先行RRの違いであることは明らかで、先行RRが0.85秒位まではIsolated PAC-2で、それ以上はBlocked PACに変化しています
この変化については次のような現象を考えます
副交感神経の支配により、先行RRが大きくなるに伴い洞房や上室の刺激伝導系の時間ファクター、洞房や房室伝導時間、不応期などの各々が延びます
一方PP’だけはほとんど変化せずほぼ一定になっています
このことから、先行RRが0.85秒以上大きくなると房室結節の不応期がより延びて心室への伝導が途絶してBlocked PACとなると考えられます
(また、仮に房室伝導して心室でブロックとも考えられますが、心室の不応期はそれほど影響受けず延びないと思われるので心室でのブロックはなさそうです)
(3)Prolong RR とPACの関係
RRインターバルトレンドグラフで見ると、これらのグループの発生している時間帯(03時30分~06時30分頃)では時刻の経過と共にRRが徐々に大きくなっているので、ローレンツプロットの横軸(先行RR)がこの時間帯では時刻経過と見なせますね
ローレンツプロット上ではRRの連続的な延長と共にP’R’の大きな遷移は、
Isolated PAC ⇒ RR Prolong ⇒ Blocked PAC ⇒ Isolated PAC-1
へと変化しています
先行RRとRR Prolongグループ発生の間には何か関係があるのでしょうか
これを見ると、先行RRの変化に伴う各時間間隔セグメントの変化のような感じがしますね
ところで、RR Prolongの波形は、上記「1. (3) ㊁ RR延長(RR Prolong)」で検討したように、洞調律の呼吸性変化と考えました
なので先行RRの変化とは直接的には無関係だろうと考えたいところです
これをどう考えればいいのでしょうか?
4.先行RRと時間間隔セグメント変化の関係は?
上述で見てきたように、上室の刺激伝導路の各時間間隔セグメントの変化(間隔や時間、期間など)は、先行RR間隔の変化とは因果関係になく比例関係にありそうです
そのため、各セグメントの時間変化が起こるためのパラメーターの存在が示唆されます
それは何なのでしょうか?
RRインターバルや心拍数のトレンドグラフで見られるように、生活の時間経過と共にRR間隔が変化していることと、RR間隔と各セグメントが同時に比例関係で時間が変化することから、
変化を起こす第一の要因は、今問題にしているRR間隔が安静時と思われる凡そ0.85秒(70BPM)以下で顕著になる「副交感神経の支配」によるものだろうと推測します
*「副交感神経」の理解について
(副交感神経が洞房及び上室のセグメントにに対する支配及びその影響のメカニズムについて詳細は持ち合わせておりません
なので、ここで言う「副交感神経の支配」という概念は抽象的意味合いで使用しており、またその「影響」とはその範囲と強度によって各セグメントの時間間隔、伝導時間、不応期などが時間変化を起こす程度を意味しています)
これを踏まえて、先に検討したRR Prolongの要因について、副交感神経の影響をベースにして以下の様に考えてはどうでしょうか
・房室接合部の伝導時間増加(P’R’)の増加 Isolated PAC-1 ~ Isolated PAC-2
・房室接合部の伝導ブロック Blocked PAC
・RR増大によるPACの抑制
・深い呼吸の発生による副交感神経影響大で洞調律変化の顕在化 RR Prolong
・PACの発生に伴うBlocked PAC ⇒ Isolated PAC-1
これで、Isolated ~ Blocked ~ RR Prolong ~ Isolated PAC-1 へと続く一連のRR間隔の急激な変化の要因について理解することができるのではないでしょうか
また、今回のちょっと不思議な感じの現象、
「PP’が先行PP(RR)の変化に拘わらず一定である」ことについて見ると、副交感神経の支配(影響)が余り及ばないためと考えることもできそうです
5.心室性期外収縮のローレンツプロット
図 RRインターバル ローレンツプロットの「心室性」のグラフを見てください
先行する洞調律のRRが0.45秒~0.8秒と変化するのに対し連結期(RR’)は0.4秒~0.5秒と余り変化していないように見えます
直線近似では、傾きが約0.3と小さくなっています
単源性PVCの場合は大体が、傾きはもっと小さく殆ど変化しない直線的になるようです
これがPVCのローレンツプロットの連結期表示パターンの特徴と言われています
その理由は、上室性の刺激伝導系の時間ファクター、例えば洞調律のRR、洞房や房室伝導時間などは、副交感神経の影響を受けやすく洞調律のRRが大きくなると他の伝導系も同様に影響を受けて各々のファクターは大きくなります
ところが、心室は自律神経、特に副交感神経の影響を受けにくいのでRR間隔が大きくなってもその影響が殆どなく、連結期は延びること無くほぼ一定になることが多いと言われています
(多源性や副収縮、他の状態により一定にはならずに特有のプロットパターンを形成することもよく観察されます)
このようなことから、PVCのローレンツプロットは、変行伝導や心房細動のwide QRSが上室性か心室性かを区別する一助となる有力なツールにしています
(PVCローレンツプロットの詳しい話は、別途後日行うこととしましょう)
6.IsolatedPACとBlocked PACが交互に出てくるのは?
先に「図 波形計測」でIsolated PAC-2とBlocked PACが交互に発生する現象を見ました
「2. (2) ② Isolated PAC からBlocked PACへの変化」で検討したとき、Isolated PAC-2 ~Blocked PACの変化は先行RRの延長に伴うP’R’の延長と房室結節の不応期の延長によりこの現象が起きると判りました
Blocked PAC~Isolated PAC-2 に戻る時は、その逆の現象となり、交互発生が起こると考えられ、その要因は先ほど見たように「副交感神経」の影響によるものと思われます
そのため、ホルター心電図では昼間にIsolated PACが、夜間にはBlocked PACが頻度が高く発生することは多く経験されているとの報告もありました
7.同じPAC三変化でもその発生要因は違っていた
PACの形態変化と言えば、
以前のブログで取り上げた「PAC三変化」は、PP’が変化して心室(接合部)での不応期に対するP’の位置する時点が変化して、IsolatedやBlockedのPACに変化しています
今回取り上げたPACの形態変化の原因は、PP’が一定でRRが変化したため房室結節の不応期に対するP’の位置する時点が変化して、IsolatedやBlockedのPACに変化していました
同じPACの形態変化でもその発生要因が異なっていることが判りました
ーーーーーーーーーー END ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー