ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 四方山話します

アーチファクトを減らそう ~先ずは皮膚・電極インピーダンスを理解しよう~

ホルター心電図では、混入するノイズによってはアウト!!という事態も起きかねませんね(せっかく24時間も装着してたのに至極残念な結果となることもあります)

何とかノイズを低減したいものですよね

ホルター心電図では、混入してくるノイズのうち中でも、人工的なノイズ所謂アーチファクトは容易に発生する構成だし原因が分かり難く結構厄介ですね

これまで、当ブログではアーチファクトについて「心電図に混入するノイズの話 その1~5」まででその種類と実際例を見てきました

これから、ノイズ低減のためにどう対処すればいいかをまずは、測定系の皮膚や電極周辺で発生するアーチファクトの成因を基本的なところから取り上げてみます

心電図を導出電極で発生するノイズなので、これは避けては通れませんね

如何にこれを低減するかという話になるので、発生する原因をぜひ理解したいところです

大まかに言って、測定したい心電図以外の信号はすべてノイズ=雑音として見ていいですよね

そして、人工的な要因で発生するノイズをここでは「アーチファクト」と言いたいです

なので、生体自体から発生する信号である筋電図、脳波、眼振、などはここでは考えません

 

ノイズを考えるためには電気的な知識として、インピーダンスと差動増幅器について基本的なことを知っておかなければ理解が進まないと思いますのでこれから数回に分けて取り上げてみたいと思います

 

 

さて、ホルターで使用される心電図電極はディスポーザブル電極です

その形状、材料等により種類がありますが、ここでは、下の模式図のようなごく一般的な心電図ディスポーザブル電極を見てみます

 

構成は、フォームバッキングに導出電極として銀-塩化銀電極を取り付け、皮膚との接触面を導電性ゲルで満たしたものを皮ふに貼り付けたものを考えます

 

アーチファクトと謂えどもある種の電気信号なので、測定系を電気的に考える必要があります

皮膚や電極を電気的に考えるにはどうするの?? って話ですよね

そこで登場するのが、等価回路という考え方です

これは、皮膚や電極の測定系の電気的特性を計測し、それと特性が同じようになる抵抗成分、容量成分、電磁誘導成分を持つ素子で電気回路を構成し、これを等価回路と呼びます

等価回路を構成する容量及び誘導素子は、周波数をもつ交流信号を回路に加えたときに抵抗値を持ちます(交流抵抗と呼ばれます)

もともとの抵抗成分(直流抵抗と呼ばれます)と、交流抵抗成分を合わせてインピーダンスと呼びます

 通常はインピーダンスの容量成分(容量インピーダンスと呼びます)、電磁誘導成分(誘導インピーダンスと呼びます)は、加わった周波数によって変化します

例えば、容量インピーダンスの大きさは周波数に反比例し、誘導インピーダンスは周波数に比例して大きくなります

一方、直流抵抗成分は周波数にかかわらず一定の値を取ります

 

皮膚や電極を信号源に対する等価回路は、その系の電気的特性により何通りかが考えられていますが、そのうちの一つで下図のような回路*を考えてみます

 インピーダンス等価回路(「星宮 望氏:「生体用電極の問題点」,心電図 Vol.4 No.1 1984」より抜粋)

 

皮膚・電極の模式図に対応して、下図のように皮膚・電極インピーダンス等価回路が考えられます

皮膚には皮膚インピーダンス、電極側には電極インピーダンスを構成します

インピーダンスは、直流抵抗成分と容量成分の並列回路で構成され、増幅器の入力に対し直列につながっていると考えられます

また、電極側には「分極電圧」と言う直流成分があります

分極電圧とは、金属電極と電極ペースト間で発生する直流成分です

そして、皮膚側には心電図の信号源があり、電極導子側にはホルター心電計の入力が接続されます

ホルター心電図の記録をする場合、この等価回路を使って測定系を見てみると下図のようになります

下図は、1つのチャンネル(1つの誘導)についてみたものです

測定回路

1つのチャンネルには、誘導したい部位にECG⊕信号入力とECG⊝信号入力用の電極が貼られ、さらに基準電位用に(言ってみれば、ニュートラル信号のようなもの)不関電極を貼ります

⊕⊝電極は、心電図信号源から先には皮膚と電極によるインピーダンス等価回路Zs⊕とZs⊝を各々通り差動増幅器の⊝入力と⊕入力に接続されています

(ここで、不関電極の皮膚・電極インピーダンスについては、基準電位として各入力共通の電位なので、考慮しなくていいと思うので省略します)

 

ここまでで、インピーダンスについての基本的な理解は進んだと思いますが、アーチファクトの発生について考える場合に、もう一つ心電図信号を増幅する差動増幅器の特性についても知っておいた方がいいと思いますので、次回それについてみて見ましょう

 

 

ホルター心電図の誘導法については、下記ブログ参照してください


himonzy-papa.hatenablog.com

 

次回は、これらのインピーダンス変化が心電図信号を増幅する差動増幅器に対しアーチファクトに関してどういう影響を及ぼすかについて見ていきたいと思います