ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 四方山話します

QRS波形をベクトルで読み解く その4(左脚ブロック心電図)

「QRS波形をベクトルで読み解く その4」 は、前回が「右脚ブロック」とくれば、左脚ブロックですから(?)今回は左脚ブロックの波形から起電力ベクトルを推測してみましょう

図の2誘導は、CH1:CM5誘導でCH2:NASA誘導です

左脚ブロックも特徴的な形状していて、CH1ではRR'波形、CH2ではrS波形'が一般的です

早速、Q/R/Sセグメントに分けてみて見ましょう

考え方は前回と同じですね

各時相において、波形の大きさを各誘導にとり(各誘導に沿った緑の細い矢印)、それぞれの垂線(緑の点線)を下ろして交点をとり、基点からその交点までを結ぶと、そ大きさと向きがその時相における起電力ベクトルとなります

そして、このベクトルは基点に平行移動したものなので実際の起電力ベクトルの位置は、その時相で起きてる心室の収縮の最大値を取る場所と見なして推測します

 

下図を見てください

まず、①の時相です

CH1のR波の立ち上がりがCH2よりも早くで、①時相のCH2は0mv、CH1はR波立ち上がり始めで約+0.3mv位ですね

方向は、殆ど電気軸0度あたりですね

これは、左心室側が右心室側よりも早く興奮してることを表してますね

正常ならこの時相では、中隔は左室側から右室側に興奮するのですが、左脚がブロックしてるので中隔の興奮は、右室側から左室側向くことになります

で、起電力ベクトルは心室中隔辺りにあると考えると図の①の緑(太線)矢印のようになります

そのため、左室側で誘導する波形は中隔興奮のQ波がありません

もしあったら、それは左脚ブロックではないと考えていいようです

 

次に②の時相です

CH2のR波ピークで、CH1は既に立ち上がってるので+1mv、CH2は+0.3mv

先ほど同様、各誘導での波形の大きさをそれぞれの誘導にとり心室の起電力ベクトルを推測すると、R波のベクトルは下側、右室方向に向かってるのが分かります

ブロックでなければ左室側に向くのですが、左脚ブロックでは先に右室側が興奮するので、この時相では右室側興奮による起電力となり図の②赤矢印(太線)のようになります

なので、CH1のR波は立ち上がり途中、CH2はr波ピークの波形となります

教科書的な左脚ブロック波形であれば、この時相でのCH1のR波はもう少し右室側に向き大きさが小さくなりrR’のノッチがよく見られるのですが、ここでは現れてきてませんね

 

③はCH1のR波ピークの時点で、+1.5mv、CH2はS波で+0.8mv 位

この大きさを各誘導に取り同じように処理すると、③の時相の心室の起電力ベクトルとなります

CH1のR波ピークで、CH2のS波もピークだということは左軸偏位が起こって、なおかつQRS幅が広いので作業心筋を伝導して左室側に向いてることが推測されます

興奮は右心室から左心室へとの興奮が伝わってることとなり、ベクトルの最大の位置は左室側と考えていいでしょう

 

各々のセグメントで①~③の時相を見てみましたが、見慣れた左脚ブロック波形の起電力を連続してイメージすると、波形と心臓の刺激伝導、興奮の関係がよりよく理解できますね

下図に、QRS波形の起電力ベクトルの時間変化とCH1:CM5誘導での波形を図形化したので参考にしてください

 

LBB起電力ベクトル動画