ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 四方山話します

発作性心房細動はこんなふうに始まり終わるのかぁ

ホルター心電図では得意な適応である「発作性心房細動 PAf」について見てみましょう
なんで得意かって言うと、
先ず、発作性心房細動ですが、これは「発作性」というぐらいで、慢性でも持続性でもない心房細動でいつ、どのぐらいの間 起こるかわからないので安静心電図では捕まえきれない場合が多いと思います
なので24時間生活の中で心電図記録するホルターでこれを捕らえれば、どの時間帯で、どのくらいの継続で、どんな頻度で、どんな心身状態のときに起きてるかが比較的容易に捉えることができるので、得意な検査と言ってもいいのではないでしょうか
もちろん、24時間では捉まえきれない場合も多いとは思いますが、PAfが短時間で頻繁に発生してる場合被検者の動悸などの訴え(行動記録表或いは行動記録表などによる)も多いように見受けられので、発生してればかなり診断治療に有効かと思われます

 

慢性ではないのでホルター心電図記録中に心房細動を起こすわけですが、その始まりや終わり方にはさまざまあるようです

洞調律から突然細動が始まって洞調律に何事も無かったかのように終わる例もあれば、徐々にPAC単発や連発を繰り返しながら次第に細動になってゆくような事例など

 

では実際に記録したPAfの事例を見てみましょう

まずは、洞調律から突然PAfになって、突然洞調律に戻る例です

68才男性、記録中では夜中の0時頃から3時間ほど一回だけ発生しました

下図は、PAf始まりの心電図です

P波は見えなくなり小さなP波がぽつぽつと出てくるようです

細かなf波が基線上に現れてきました

RR間隔も不整になり心拍数HR125bpmほどになってる心房細動ですね

PAf開始 CH1:CM5、CH2:NASA

下図は、約3時間後のPAf終わりの心電図です

心房細動後には約1秒ほどの、休止期を経て何事も無かったかのように洞調律に戻ってます

この長い休止期は下で書いてますが、「オーバードライブサプレッション」という現象と思われます

リズムはこの後も安定的に洞調律でした

 

PAf終了

 

次の例は、24時間にPAfが何度か発生し、その始めと終わり方が色々と出てくる例です
被検者は、70才、男性、バイタル、既往歴など不明で、夕方16時頃から24時間記録しました
まず、24時間のトレンドグラフを見てください

ホルター解析のトレンドグラフの中でも、RRインターバルトレンドは、心房細動をや不整脈などの連結期の変化を端的に表してるので、特に心房細動のトレンドには特徴的なものが有ります

下図の2段目がRRインターバルトレンドです

インターバル検出の詳細なアルゴリズムはわかりませんが、RR間隔を縦軸に横軸に時間をプロットしていったものです

心拍数が大きくなればインターバルは短い方へ、心拍数が小さくなればインターバルは長い方へプロットされま、心拍数トレンドグラフと対応すると、プロットの上下関係がRRトレンドグラフとシンクロしてますね

PACやPVCが頻発すれば、インターバルは連結期は短く休止期は長いので、基本心拍数のインターバルの上下にプロットされます

洞停止や洞房ブロック、Ⅱ°房室ブロックなどでRRインターバルが延長すれば、基本心拍数のインターバルプロットの上方(このグラフの縦軸のとり方の場合)にプロットされることになります

では実際のものを見てみましょう

インターバル1秒の付近が太線状になってるので基本的には60bpmぐらいの心拍数ですね

その上方にある太線状のプロット、1.8秒ぐらいで推移してますが約30bpmの徐脈です

上下に、同様の太さと濃さのプロットは、30bpmと60bpmが交互に現れることを表してます

その下0.5秒ぐらいのところにあるプロットはPACに発生によります

(PAC単発のトレンドグラフとRRインターバルトレンドグラフを対応させてみて下さい)

 

トレンドグラフのある時間帯で、基本となるインターバルに対しランダムに変化するプロットがあります

これが、心房細動のRRインターバルトレンドグラフのパターンです

基本となるインターバルがあって、かなりの頻度でランダムなインターバル変化が起こってることが分かりますね

その時間帯の心電図では、はっきりしたP波が無くて300BPM以上で不明瞭な基線の振動(細動波:f波)があり、心室性ではないQRSによるRRインターバルが不整になってます

f波と思しき波は比較的ゆっくり規則正しく出ており一見粗動波(F波)にも見えますが、f波間で基線に戻る様子も見えることから、粗動波F波の場合だったら基線に戻ることなく波が現れると思いますので、これは細動波(f波)と考えられます

    *細動波と推定しましたが、この知見にもしかして誤りや不足があればご指摘をお願いします

 

図のPAf1、PAf2、PAf3の時間帯で突然に、ある継続時間をもって心房細動が発生してるので、発作性心房細動PAfということになります

 トレンドグラフ

【 PAfの心電図 】

  下図の心電図は、2誘導記録でCH1:CM5、CH2:NASA、紙送り25mm/s

  1段当たり6秒で連続した24秒の心電図です

 

  ①時間帯PAf1の終わり

    16:45記録開始から約1時間でPAf1終わりの心電図

    80bpm位のHRで突然停止し(理由は?)、約2秒後に洞調律が再開してます

    この機序は、オーバードライブサプレッションという現象のようです

    これに関する知見がなくて正確なことはわかりませんが、f波(心房細動波)が洞結節に

    逆行して連続して刺激をリセットしたため洞機能が抑制されるためということらしいです

    洞結節が分極してるところに逆行性刺激が次々とに入りマイナス側に電位を引っ張っている間に

    刺激が突然停止したため、脱分極に向かうも少々時間がかかってるというイメージでしょうかね

    PAf終了後は、ほぼ洞調律に戻り(でもRR間隔が少しずつ短くなってますね)、

    偶にPACが出てますね

    f波は出なくなったけど、洞調律が不整のままだったり、PACが多発するような事例も

    多いようです

 

 

 ②時間帯PAf2 PAfの始まり

  下図の、就寝中4:30から2回目のPAfが始まってるように見えますね

  下図2段目、このPVC、1発目と2発目ともに洞調律のPP間隔でP波が見えてるので代償性休止期の

  PVCですね

  2発目のPVCの後にはR波が1拍出て、その後間隔の等しいR波が3拍続きます

  その間には間隔が一定のP波が3拍見え(3拍目だけは4つ)、PQ間隔が同じで3:1で

  伝導してるように見えませんか

  R波の4拍目以降はPQ間隔がランダム(不整)となって洞調律の体をなしていませんよね

  RR間隔だけ見ると、よく見かける心房細動 Afのような心電図となりますね

  P波の出方に着目すると、この後もP波は同一間隔(多少変化してますが)で出ているようで

  (下図4段目 「レ点」に注目)、このP波は等間隔で出て且つPP間は基線に戻ってるので、

  心房細動f波や心房粗動F波とは何か違うように思えませんか?

  そこで、こう考えてみます

  心房の調律はP波で、300bpm位ですね

  なので心房頻拍PATとは考えられないでしょうか

  PVC後の最初の4拍のR波は3:1伝導で脱落を有するPATで、その後は、3:1~2:1伝導のPATだと

  考えられませんか

  「レ点」の後は、P波は基線に戻ることなくf波となり、PQ間隔が不整となりRR間隔も不正になって

  Afに移行したのではないかと?

 

 

  ③時間帯PAf2 PAfの終わり

   2回目のPAfは2時間継続して終わりました

   PAfの終了から次の洞調律まで約1.6秒の洞停止がありますが、オーバードライブサプレッション

   ですね

   その後は洞調律に戻ってます

   でも、そのRR間隔がほぼ少しずつ短くなっていきPACで少し戻ってますね

   このことは、実はPAf1の終わり方と同じだったんですね

   そしてPAfの最後のR波は洞調律のR波と同じに見えてきませんか

   (P波形状、PQ間隔、QRST波形状が同じように見えます)

   すると、最後に洞結節からの刺激でAfを止めたと・・・?

   この機序はちょっと想像がつきませんですね

   Afで疲れた心臓を一旦休ませて、徐々に本来に戻してゆくってイメージでしょうかね

   *これについてもし知見のある方に是非ご教示していただきたいと思います

 

 

  ④時間帯PAf3 PAfの始まり

   3回目のPAfは11時近くで発生し記録終了まで続きます

   トレンドグラフによると、PACはぐっと減りPVCが増えてるようですね

   PAfになるとPVCが増える?

   ひょっとして、変行伝導の可能性はある哉もしれませんね、よく見てみましょう

   これについては後で詳しく見てみますが、今はPAfの始まり方に注目しましょうか

 

   下図では安定した洞調律に続いて、4拍目で異所性P波によるPACが起こります

   P波がT波に乗るぐらいのタイミングなので房室結節は不応期直後でPQ間隔が延びて、

   右脚が相対不応期に架かって右脚ブロック(RBBB)状で変行伝導の様です

   次の洞調律による5拍目のR波が出るとその後に異所性P波が続いてます

   そこでR波が出ると思いきやP波が2発連続で出てきましたよ

   でも今度は、R波はブロックされて2連発のP波となりました

   R波の6拍目、7拍目、8拍目(下図2段目)もこれと同様なことが起きていて、P波の連発数は

   違いますが、PP間隔が同じで形状も同じでPP間は基線に戻ってるので、

   心房頻拍PATと思われます

   この後から、同じPATと思われる3、4段目ではP波に何らかに対応したR波が見られますね

   このP波に対応したR波がないのとあるのではなにがどう違うのでしょうか?

 

   それを考えるのに、先ずP波に対応したR波が出てる下図3、4段目のPAT(と考えられる)

   P波について見てみましょう

   3段目、4段目の図示を見てください

   「矢印」はP波が伝導したR波で、「×」はR波がブロックされたP波を表してます

   まず、洞性P波がでてそれに対応したR波(矢印)が出てます

   次に異所性P波P1がでてPQ間隔が相対的不応期により延びて、その先に対応したR波(矢印)が

   出てます

   このP1とR波の間にP2がありますが、房室結節(或いは心室側)でブロックされて

   これに対応するR波は出てませんね

   PATによるP3以降も同じような機序でP波~R波が繰り返されてます

   さて、話は前に戻って、これに対してR波の出ないPATはどういう機序でしょうか

   P波が出てるのにR波が出ないのは、房室結節でブロックされる場合が一番考えやすいですね

   であれば、3度AVブロック 又は 房室解離が突発的に起きたと

   同じPAT(と思われる)なのに、R波が出る場合とでない場合があるのは何故?

   途中で異なる2つの現象が起こる理由は、何故?

   この機序は、わからないというのが本当の所です

   *この機序について知見をお持ちの方があればぜひご教示いただきたいと思います

   

 

  ⑤時間帯PAf3 PAf途中

    PAfの途中としてますが、上図のPAf始まりと同じような動きですね

    洞調律に続く数発のPATの繰り返し、そして連続するPATによるランダムなRR間隔は心房細動に

    なってるといえるでしょう