2度房室(AV)ブロックでも分かりやすいのもあれば、なんだぁこれ!みたいのも結構出てきますね
今回はそのような心電図の中でも、ちょっと複雑な心電図でブロック比率(何回のP波でR波ブロックされるか)が決めきれないものなどを見てみたいと思います
話は前後しますが、先ずは今回の心電図がどのようなものかを下に表示したものからざっと見ておいてください
同一患者の24時間記録中の4つの時間帯の心電図を今回は検討してみたいと思います
ではどのようなQRS波形が出てるかと見ると、下図モフォロジー分類からQRS幅が狭い(心室性以外と思われる)ものは2種類(S1、S2)あります
形状はCH1:CM5誘導はRS型、CH2:NASA誘導でrsR'型
モフォロジーS2はRs型、CH2でrs型
S1はP波があってQRS幅は狭くPQ間隔長いので1度AVブロックと不完全右脚ブロックを伴う洞性QRSと思われます
S2の波形は、P波ははっきりと見当たらないようですが、QRS幅は狭いので洞性又は上室性のようですが、詳細については追々考えていきます
又、モフォロジーの発生頻度と時間帯は
S1が基本調律と見られます
S2は特定の時間帯に多く発生してるようで、下図のRRインターバルとR波の脱落(ブロック)のトレンドグラフにはっきりと表れています
平均心拍数が100bpm以下の時間帯、すなわちR波の脱落(ブロック)が多く発生してる時間帯(つまり、RR間隔が延びてる時間帯)にS2モフォロジーの出現頻度が多くなることが分かりますね
では時間帯毎の心電図を見ていきましょう
始めは15時35分ごろの心電図で、心拍数は約50bpm前後で比較的安定していますね
最初の3拍は、PP間隔が一定の洞調律だがPQ間隔は徐々に伸びて、4拍目のR波が脱落してます
次のPQ間隔は元に戻り短くなる(PQ1>PQ2)が、その後PQ間隔は徐々に伸びてR波が脱落します
そしてこれを繰り返します
所謂Wenckebach型Ⅱ度AVブロックでブロック比率は4:1(P波4回発生してR波が1回ブロックされる) ですね
次の4,5拍目と6,7拍目
PP間隔は一定でPQ間隔はWenckebach型で延びるが、3:1でR波がブロックされる
そして、ブロックされた時のPP間隔は短くなってBlocked PACとなってますね
そのReturn Cycleの次のPQ間隔は元の長さに戻ります
2度AVブロックでR波がブロックされるのではなくて、不応期にかかるBlocked PACとは目面しいですね
次に19時45分ごろの心電図です
2種類の波形(図でRとR’で表示)が現れました
QRS幅やQRSTベクトルや形状、PQの存在などから見て両方とも洞性リズムのようです
出方を見ていくと、R波の間隔が長い(RR')場合通常のQRS様(R’)だが、それより短い(R'R/RR)場合はRBB様の変行伝導QRS波形(R)になっているようです
変行伝導の原因は、短いRR間隔が不応期にかかってるためでしょうかね
ここでは、RR間隔が1.84秒以上だと通常形状のQRSに戻ってますが、上の15時35分の心電図ではRR間隔が1.9秒あっても変行伝導のQRSが続いていました
これは、相対的不応期が微妙に変化するということでしょうかね
さて、PP間隔は一定に出てそれに対応するようなR波のPQ間隔が逐次延長し欠落を起こし、その後PQ間隔が通常に戻るというパターンですね
ブロック比率3:1(P波3回にR波が1回)や4:1のWenckebach型2度AVブロックですね
下の図は 2Ⅰ時35分の心電図になります
P波は一定間隔です
長いRR間隔の中にP波だけが見えてるのでAVブロックの様です
でもPQ間隔が短いところがありますね
詳しく見ていきましょう
各々のP波に対応するRの場合は洞調律が通常伝導(Wenckebach伝導?)してるようですが、4拍目と6拍目PQ間隔(PQ')が洞調律にしては短いですね
ここはPP間隔から見て、このP波は洞調律に依るものですが心室へは伝導してないようです
とすればのこのR波は房室結節からの補充収縮と考えられます
これはRR間隔が2.2秒もあるので相対的不応期を脱してるので通常伝導のQRS形状となってるようですね
この後に続くPP間隔は先行するPP間隔よりちょっと長くなってるのが気になります
これは、「2:1AVブロックの場合に、PP間でR波が抜けた時のPP間隔より、PP間隔を挟むときのPP間隔の方が少し短くなる=心室時相性洞不整脈」と言う現象があるようで、これを拡大解釈すれば、このちょっと延びたPP間隔が説明できるような気がしています
その後は、洞調律でWenckebach型のAVブロックを繰り返し、3:1比率になってるようです
因みに、この補充収縮は先行するPQ'間隔が各々違っているので房室解離してると推測できます
それと補充収縮による逆行性伝導の刺激は、P波から下行する刺激によってリセットされるので、PP間隔は影響を受けないでしょう
次に4時17分の心電図です
こちらも一定間隔のPP間隔があって時々R波が欠落するのでAVブロックでしょう
通常形状のQRS波は、こちらもPQ'間隔が異なっているので房室結節からの補充収縮と推測できます
RBB状のR’は先行するP波と対応してますね
この時間帯は2:1~3:1のAVブロックと接合部補充収縮が混在するものになっています
最初に戻って考えてみると、多数の調律ではモフォロジーS1では、PQ間隔と相対的不応期が長くなってるようで、RBB型状の不完全右脚ブロックのような変行伝導形状となってます
2度のAVブロックが多発する時間帯になると、RRの連結期が延びるので相対的不応期を脱してるのでモフォロジーS2の通常形状のQRS波形となります
このことがRRインターバル(間隔)トレンドとモフォロジーヒストグラムに表されていますね
2度のAVブロックといえど、単純なものでは相曽素少なく、Blocked PACが混じったり、補充収縮が出てきたりと一筋縄ではいかないことが多いようです