ホルター心電図 四方山話

ホルター心電図 心電図解析や四方山話します

PR間隔 0.8秒の異変ー2度房室ブロックのように見えて、1度房室ブロックなのかな

2度房室ブロック(AVB)は、先行する洞結節による一定調律PP/RR間隔で、P波の後のR波が房室結節での伝導ブロック(途絶)により突然に1拍だけブロックが起き、RR間隔が延びるものですが、今回の心電図は2度AVBのように見えてそうもなさそうです

24時間全体を眺めてみると、洞調律P波に続くR波のブロックが起きる通常の2度AVBは見当たらず、P波に続くR波のブロックが無くてその代わりに、殆どがBlocked PACでまた数回のPVCによりR波がブロックされているようです

主な変化を起こしている心電図が下図です

PR間隔の長さが目立ちます

これに注目してみてみると、P波は一定PP間隔の洞調律ですが心拍数によってPR間隔は大きく変化してるように見えます

心拍数が100BPM越えると最小で0.2秒位、80BPMで0.3秒、70BPM以下になると0.8秒まで延びているようで1度房室ブロック(AVB)ですね(これだけ延びるのかな?って位延びてます)

PRが徐々に延びた後、或いは延びたままP波の次に出るべき洞性R波がブロックされてるので一寸見は2度AVBと見れますよね

洞調律によるRR間隔が延長するなかで、P波に続くR波が期外収縮だったり、P波がなく期外収縮のみだったり、RR間隔が2倍より短いなかでP波があってWenckebach周期がリセットされたりと、色々とバリエーションに富んでいるようですね

どのようなことが起きてるのかを見ていきましょう

 

 

1.上段の心電図(22:54:06)

中央にR0R1間隔で1.06秒の延長があります

この前後のPR間隔を見ると、その前P0R0では0.5秒で、その後P1R1では0.30秒、その後0.44秒と延長しています

これを見ると、元々0.36秒のPP間隔があるところに徐々にPP間隔が延長して0.50秒まで延びたところで次のR波が抜けて0.36秒の間隔に戻る現象です

PP間隔が その中でR波が突然なくなり元に戻る現象、これはWenckebach型2度AVBのように見えますね

なので、R0 とR1の間にP0P0間隔で発生するP波がどこにあるかと探しても見当たりません

よく見ると、そのようなP波ではなくR0のT波上にP’がありますね

P’P1の間隔を調べると、P0P0の基本的調律を基準とするPACのリターンサイクル(リターンサイクル = P0P0 + 2×洞房伝導時間)となってることが判ります

そしてその後に出るはずのR波がありません

するとこれは、Blocked PAC ですね

PR間隔のWenckebach型延長のリセットが、2度AVBによるR波のブロックによるのではなく、Blocked PACによってなされる現象が起きていることになります

 

2.中段の心電図(18:33:22)

こちらは先ほど同様P0P0が一定で0.84~0.86秒で、P0R0も0.28秒と一定です

途中P1の前でP0が一つ抜けて、その前後のPR間隔も一定の0.28秒です

そこにはP0の代わりにPVCと見られるものが有って、その後のRR間隔は代償性休止期になっています

タイミングを考えると、PVC発生とほぼ同時にP0がAV伝導しPVCの逆行性VA伝導と接合部で衝突し(赤い✖)刺激が消滅してるようです

これは、P波が出ているがPVCにより洞性R波がブロックされてることと見えます

 

3.下段の心電図(00:57:46)

こちらもP0P0が0.84秒で一定の調律ですが、PR間隔は徐々に延びていき0.84秒となった後、間入性のPVCらしきものがでてP0R0が0.36秒に短縮しています

これも一寸見、Wenckebach型2度AVBとみると、中の洞性R波がブロックされる代わりに間入性PVCらしきものがでています

このPVCは、その直前のP0とのタイミングを考えると、PR間隔から見てP0のAV伝導によるものではなさそうで、RR間隔の延長による補充収縮でQRS形状から見てPVCと推測できます

ではPVCの前にある2拍のP0はどうなってるのでしょうか

P0のAV伝導によるR波がないので、刺激がAVで途絶してると思われます

その機序は、1番目のP0のAV伝導の仕方の捉え方により、以下の様に2通り考えてみました

 ①ブロック(遮断)されたか ――― 図中 青色の矢印

 ②衝突(消滅)したか ――― 図中 紫色の矢印

P0R0が0.84秒まで延びた次のP0は、R波に隠れています

そしてそのP0P0間隔後に次のP0が発生しPVCが入って来ています

①AV伝導のブロック(遮断)の場合

1番目のP0はAV伝導路の潜行伝導によりブロック(遮断)され、2番目のP波はPVCからの逆行性VA伝導と衝突し(青色✖)刺激伝導が消滅しました

②AV伝導の衝突の場合

1番目のP0は伝導時間を延長したままAV伝導し、PVCからの逆行性VA伝導と衝突し(紫色✖)て刺激が消滅します

2番目のP0によるAV伝導は、AV結節が1拍目の伝導の不応期によりブロック(遮断)されて伝導できないことになります

以上のどちらの場合でも、PVCの逆行性VA伝導刺激とP0からの順行性AV伝導刺激が衝突して伝導を途絶させることで、延長していたAV伝導時間がリセットされ、次に発生するPR間隔は短縮して元に戻る、というWenckebach型AV伝導時間変化の機序が働いているのではないだろうかと推測します

 

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今回取り上げた3つの心電図について話を纏めると、

2度AVBのように見えるRR間隔の延長は、通常の洞性R波のブロックによるものではなくて、Blocked PACによるもの、代償性PVCによるもの、補充収縮PVCによるものが発生していました

殆どが、Blocked PACによるPR間隔のリセットですが、その前後のPR間隔はWenckebach型だったりMobitz2型でした

このような心電図を2度AVBと言えるのか、或いは1度AVBと言うのかははよくわかりません

それにしても、PR間隔が0.84秒まで延びるということがあるのですね

文献を調べると、0.3秒以上は顕著なAVブロックと言われるそうで、PR間隔が約0.6秒の報告が目づらしく、「1度AVB →  2度AVB → 3度AVB → 1度AVB」と変化した事例もあるようです

また、最長でも0.7秒位までは延長しうると言う識者もいました

なので、PR間隔が0.8秒はひょっとしてこれは見掛け上のPR間隔であって、実は推測したのとは異なる機序が働いているかも、 と言うことがあり得るかもしれませんね

このブログを読まれた皆さんはどう思いますか??



ペースメーカー移動 ~ P波の形状変化に隠されたものは

洞調律のようですが、P波が2種類の形状に交代で変化する心電図

おやおや?  ですね

 

交代のインターバルも数時間から10数秒だったり、PACやPSVT直後に発生したりと様々です

24時間中をずっとレビューしてはいませんが、かなりの頻度で交代が起きているようで、期外収縮直後を除いて、一定の洞調律は崩れずP波だけが変形してるようです

 

これは、所謂ペースメーカー移動が起きていることが疑われますね

必ずしも心電図のイベントが起きて発生してるようでもなさそうだし、その発生原因が分かりませんが、そこで何が起きているのかを見てみようと思います

(期外収縮直後に起こるP波形状変化については今回は取り上げません)

 

比較的頻繁にP波形状が交代する時間帯の心電図が下図です

ホルター心電図の誘導は、CH1:CM5誘導、CH2:NASA誘導です

最初の2段と次の2段は時刻が異なる各々連続する12秒の心電図(1段は6秒)

 

最初の2段ではCH1の2峰性P波が単峰性P波へ、CH2は2相性が単峰性へと変化しています

次の2段ではCH1の単峰性P波が2峰性P波へ、CH2では単峰性が2相性へと変化しています

このパターンが繰り返し発生しています

 

調律はPP間隔一定で、P波形状が変化してもPR間隔は変化せず、QRST形状も変化してないので、これは洞刺激による調律と考えられます

出現頻度や定常性から見て、単峰性P波が基本と仮定します

 

基本の単峰性P波、QRS波を詳しく見ていきましょう

CH1はP波形状は単峰性で幅0.1秒、高さ0.15mV(通常?)、QRST形状は完全右脚ブロック(CRBB)、PQ間隔 0.2秒、QTc間隔 0.46秒(ちょっと長め?)

CH2も数値は違いますがCH1と同じ形状です

 

次に2峰性P波はどうでしょうか

CH1のP波形状は2峰性で大きさ0.05と0.1㎷、CH2は2相性の双極性で±0.5㎷、

幅は共に0.1秒で、QRST形状や他の要素は基本P波と同じです

 

では、これからP波が形状変化する機序を考えてみたいと思います

下図を参照してください

 

 

図 上段の基本調律のP波を見てください

通常のP波生成機序ですが、

洞結節から出た刺激が右房(RA)と左房(LA)へ伝導し、右房が興奮(RA波)し続けて左房が興奮(LA波)します

時系列でみると双峰性の変化ですが各誘導ではその合成として単峰性として現れています

 

ではP波形状が変化するのはどんな場合かを考えてみましょう

 

 RA波とLA波の合成なので、その幅(持続時間)、位相差(時間差)、各々の形状変化などにより合成波は変化すると思われます

 具体的に考えてみると刺激伝導系と心房興奮の変化でしょうか

 異所性期外収縮が最も起き易そうですが、PP間隔が一定であることが前提なのでここでは考えないことにします

 とすれば、洞刺激発生以降の洞房伝導系と心房興奮での変化となります

 

これを 1. P波の幅が変化する場合 と 2.P波の幅が変しない場合 に分けて検討してみましょう

 

ここでは、これらのメカニズムを推測するのに対し、洞房伝導や心房興奮の動作をあまり理解していないので、これらを「脚伝導」と「心室筋興奮」に似せて検討してみることにします

 

1. P波の幅が変化する場合

 1) 洞房伝導の異常

   伝導遅延か伝導途絶(ブロック)

   これがどちらかの心房で起きると、正常側から異常側に刺激が遅延伝導し(脚の伝導遅延やブロックのように)P波形状の変化と幅の増加が起きると思われます

 

 2) 心房興奮の異常

   これが何れかの又は両方の心房で起きると、(心室異常伝導のように)P波形状変化と幅の増加が起きると思われます

 

この2点については、P波の幅が増加するので、図の心電図のP波が発生する要因ではなさそうですね

 

では、P波の幅が同じで形状変化をするP波について推測してみましょう

ここはベクトルで考えると理解しやすいと思います

 

2. P波の幅が変化しない場合

  P波の幅が変化しないことは、RA波の開始とLA波の終了が単峰性P波と同じであること、つまりその範囲内で形状変化を起こすことです

 

  図、2段目の2峰性のP波ベクトルを見てください

  ベクトルは、①始め通常通り先にRA側に発生し、次に②LA側で大きなベクトルが左軸に偏位し、その後③戻りますがややや左軸に偏移が残っていますね

 

  これをCH1:CM5誘導とCH2:NASA誘導の波形変化で表してみると、図のよう推測できませんか

  CM5誘導では正の2峰性で、RA波が+に最大になった直後にLA波が-に最大となるので2峰性となります

  NASA誘導では正負2相性で、RA波が+に最大からずっと遅れてLA波が-に最大となることで2相性となります

 

  各誘導でLA波の最大時間が遅れるのは、LAからの距離の関係と思われます

 

3. P波形状変化の機序

  では何故LA波が左軸編位、つまり―側に発生するのでしょうか

  これは、通常の洞房伝導によるLA波ではなくLA自体から刺激が発生したと考えられませんか

 

  これらの機序を推測すると、洞刺激によるRA波の発生と同時か少し遅れたタイミングでLAに刺激が起きLA波が発生し(この洞房伝導したLAへの刺激はブロックされると思われる)、RA波とLA波の合成が形状変化したP波となって現れると推測されます

 

 これは所謂「P波のペースメーカー移動」ですかね

  その原因は、主に

   ・洞結節機能不全

   ・自動能の亢進

   ・薬剤の影響

   ・自律神経の影響

  と言われています

 

  「ホルター心電図で評価する場合は、”P波の向きが周期的に変化していれば移動性ペースメーカー」と判断します。”・・・ と言うコメントもありましたので、ここは「ペースメーカー移動」と言うことにしたいと思います

  また、移動性ペースメーカーは、P波が3か所以上の異なるところから起きる場合を言うそうです

 

STレベル低下と心拍数の関係性をみると・・・?悩ましくなる

  1. STレベルの低下した形状変化が特徴的で、且つ1日の中で数回にわたり大きく低下するホルター心電図がありました

     

    50才、女性で被検者の医学的情報はなく胸痛の訴えが1回ありました、
  2. 今回はこの心電図を検討してみたいと思います

     

  3. 先ず心電図変化自体が何であるか、次に1日での変化(心拍数との関係)を検討します

    下図のような心電図です

  1.  

       CH1ST最大低下時と胸痛時  

 

     CH1ST低下時とCH1 ST最大上昇時    

   

  1. STレベルの変化

    この心電図のCH1のSTレベル低下は形状が上昇型、下降型、水平型のいずれでもなく 湾曲した盆状の特徴的な形をしているように見えます

    CH2の低下は、水平型のように見えます

    この特徴的な形状とくれば、ひょっとしてジギタリス効果によるST変化ではないかと疑えませんか

    では、そうだとすればジギタリス効果による心電図の特徴的な変化があるかどうかを確認してみましょう

 

    ジギタリス効果による心電図変化については、以下の「心電図com」ブログ記事に分かり易く書かれているので参照してください

          「ジギタリス効果とは? | 心電図.com 」

 

  2.ジギタリス効果による特有の心電図変化があるか?

    ①STレベル低下

     緩やかに変化する非対称で下降型のST変化や盆状型のST変化が現れるということです

     この心電図はCH1で盆状型のST変化になっていますね

     但し、CH2は水平型下降のように見えます

    ②QT間隔短縮

     この胸痛発作時のQT間隔は、大よそ0.40秒

     QTcは0.41秒でほぼ正常範囲内で短縮とは言えない?

    ③PR間隔延長

     胸痛発作時のPR間隔は、0.14秒で正常範囲内と思われます

    ④U波

     T波の直後に陽性のU波が見られます

   以上のことから、ジギタリス効果特有のST変化形状とU波の存在がありますが、QT間隔短縮やPR間隔延長は見られない心電図となっています

 

  次にSTレベルトレンドの変化について見てみましょう

  3. トレンドグラフを見る

 心拍数は日中で平均70~80BPM、STレベルは平均-0.1mVでもともと低下気味ですが、大きい時で-0.2mV位に下がっています

 STレベルの変化は心拍数トレンドグラフと対比してみると心拍数が100BPM以上でSTレベルが -0.2mV以下に低下することがあり、これが24時間で数回発生しています

 STの変化は心拍数の変化に対してやや遅れて緩やかに変化する凹型で、10数分間継続しているので有意の(偽陽性ではない)ST低下と推測できます

 

  4. 悩ましいのは教科書通りではないST低下

   被検者の医学的情報、ジギタリス製剤の投薬の有無もわからない中での推測、悩ましいですね

 

    STレベル変化について、最初に推測したジギタリス効果によるのであれば、その時間帯でずっと 継続するように思われますがそうはなっておらず心拍数増加に伴って変化していますね

    物の本によればジギタリス薬の継続時間は1.5日から2日ということなので、その効果は心電図変化が常時持続するのではと推測しましたが、時間的に変化(或いは効果発生のムラ)が起こるものなのでしょうか?

    それからCH2ではST低下はあるけれど、CH1に比べて盆状形状変化が殆ど見られません(CH2のSTレベル低下最大時では辛うじて見られますが)

 

    また、ジギタリス効果顕著の心電図例を見ると、四肢誘導の下肢(Ⅱ、Ⅲ、aVF)で ST 変化が現れやすそうなのですが、 CH2ではちょっと違和感があります

 

    以上の点からすると、この心電図変化はジニタリス効果によるものではなく、労作性狭心症では? と疑っていいのかもしれません

    さて、どちらなのでしょうか

    或いは、両方なのでしょうか

   識者の方のご意見をお待ちしております

RR間隔が不整、その陰に整った調律が見え隠れ!

24時間中のほとんどで、規則的にRR間隔が延びたり縮んだりして、それもよく見ると周期的に変化してます

それが下図の心電図です

ある時間の連続した24秒心電図です

ここでは洞調律による正常なQRS が出てると思われるので、洞調律の基本周期が一定であると仮定します

全体を俯瞰してみると、通常の PQRS が出た後、P 波は数拍で徐々に縮み、少し間隔が開いた後再び通常の PQRSが出て、これが繰り返されるようです

 

例えば、2段目の心電図で各々のP、R、にナンバリングし各々のPP間隔、PR間隔を測ってみると、

PP間隔:P0P0 >P0P1 > P1P2 > P2P3 > P3P4

PR間隔: PR0 < PR1 < PR2 < PR3 =< PR4

となっています

PP間隔の延び縮みを1つのパターンとしてみると、他の時間においても、そこに含まれるP波、R波の数に違いがありますがこのパターンが繰り返し周期的に現れています

そして延び縮みの程度も規則的に見えます

 

さらに、この心電図に特徴的なことは、PP間隔とPR間隔が同時に変化しているように見えることです

つまり、PP間隔が縮むと同時にPR間隔が延びる現象です

PP間隔は洞周期や洞房伝導時間によって変化し、PR間隔は房室伝導時間によって変化するので、この現象が同一の原因に起因してるとは考え難いと思います

各々違った原因があるという仮定で考えてみたいと思います

 

では この心電図を検討して見ましょう

先にPP間隔の変化についてその後PR間隔の変化について見て、その後 ラダー グラムで検討してみましょう

 

1)PP間隔の変化

PP間隔が規則的な延び縮みで不整になることがあると考えられるのは、

などではないでしょうか

このうち、規則的変化が周期的に起こるとなると、洞性不整脈や上室性期外収縮は考えにくいので対象から外しましょう

 

まず、呼吸性としてみましょう

この心電図ではパターンの周期は大体9秒位です

つまり6.7回/分の呼吸数ですね

脈拍との関連でみると、心拍数は呼吸数の約4倍が脈拍と仮定すると、約30BPMと推定します

この時点の心拍数を70BPMとすると、呼吸数は約18回/分位

呼吸周期は3.3秒位になると思われます

変化周期から推定される呼吸数6.7回に対し実際(心電図上)は18回位が予測されるので、

この変化が呼吸性とは考え難いと言えるでしょう

 

次にWenckebach型洞房ブロックかな?としましょう

 

PP間隔のには3つのパターンが見られます

 

①短縮するP波が複数(n)ある場合

PP間隔の短縮はP0P1から始まり徐々に短縮してPn-1Pnで短縮が止まりP0P0を越えない間隔の後P0に戻り 、再びP0P0と続くかP0P1と短縮するかという周期的な変化です

 

 PP間隔:P0P0 > PnP0 > P0P1 > P1P2 > P2P3 > P3P4 > ・・・ > Pn-1Pn

 

②短縮するP波が1回だけの場合

PP間隔の短縮はP0P1の一回だけでP0に戻る 

 

③PP間隔が変化しない(短縮しない)

PP間隔がP0P0と一定

 

このような 周期的な規則性のある変化が起こるのは、Wenckebach型の2度洞房ブロックではないかと疑われますね

 

2)PR間隔の変化

この心電図は、PP間隔の短縮と同時にPR間隔の延長も起こっています

延長の程度は徐々に大きくなってるので、所謂、Wenckebach型房室伝導延長が起こっているようです

 

3)ラダーグラムの作成

 

まず、洞調律の基本周期を求めてみます

以前のブログで取り上げたWenche2型ブロック洞調律周期の計算方法方法で行います

 

以下のブログ参照

 

ここでは、PP間隔が縮小してゆく範囲内にP波はP1~P4までで4つあるので、

 

洞調律の基本周期 = (P0 P1 + P1P2 + P2P3 + P3P4 + P4P0 ) / 6 = 3200mS/6 = 0.53mS = 113BPM

 

洞調律の基本周期、つまりPP間隔の基本周期は、この時点では0.53mS、113BPMが基本となっていることになります

洞調律の基本周期は一定と仮定しているので P0を起点に洞調律Sのタイミングを書き込んでいきます

この時洞房伝導時間PR0をどのように採るかですが、これは単発PACのリターンサイクル RC(RC= 2 PR0 + SS間隔) から計算することができますよね

この心電図では他の時間のPACからは0.08秒と仮定しています

 

*洞房伝導時間の求め方については該当する過去ブログを参照してください

 

これらをもとに、洞調律S、P波のタイミングでラダーグラムを書いて見ると下図のようになります

 

ラダーグラム

ここでは、始めに指摘していたように、1)PP間隔と2)PR間隔の2つについて検討します

 

1)PP間隔

まず、洞調律基本周期によるPP間隔 0.53mSがどこにあるかと探しても見つかりませんね

むしろ最長のPP間隔P0P0は、1.06mSとなっているではありませんか

一体どういうことでしょう!

・・・・・・そうです

P0P0は基本周期の2倍となっています

つまりここでは、洞調律間隔:PP間隔が2:1となっていて洞房伝導(SA)がブロックされている、つまりSAブロックが起きていると推測できるのです

 

このようなPP間隔が発生するには、一定間隔で発生するはずの洞刺激間隔に対してラダーグラムのように伝導系が機能する、つまり洞房(SA)ブロックが発生していると推測します

 

1段目の心電図を見てみます

PP間隔はP0P1 > P1P2 > P2P3 > P3P4 と短縮し、 P4P0ではP0P0(つまり 洞調律の基本周期の2倍)を超えない間隔で延長します

ラダーグラムから、この時の延長がSAブロックによるものと判ります

その後についてもラダーグラムから見てとれるのは、PP間隔の短縮により短縮したP波の1回~5回に1回の比率でSAブロックが起きているように見えると言うことです

 

ここで疑問が出てきます

「SA伝導の比率が何故変化しどこでブロックされているのか?」と言うことです

洞調律が一定なのにSA伝導時間が変化する原因は何なのでしょうか

そして、SA伝導系のどこで途絶するのでそうか

 

もう一つ問えば、「洞房伝導時間はなぜ延び縮みしているのか?」

 

でもここではこれ以上掘り下げないで次の機会に考えてみたいと思います

今は、とりあえず「SA伝導の進出ブロックのようなことがランダムに起きている」ということにしておきます

 

2)PR間隔

この心電図は、PP間隔の変化(短縮)と共にPR間隔も変化(延長)していました

そこのところを検討してみます

 

1段目の心電図ではPR0~PR4まで徐々に延長し、PR4で房室(AV)ブロックが起きてるようです

これだけ見ると、2度Wenckebach型AVブロックの様です

2段目以降ではPR4でAVブロックはなく伝導してます

ここでは何が起きているのでしょうか

P波発生のタイミングを比較すると、1段目のPR4は2段目以降のPR4に比べてRP間隔が短くなっていてT波頂上手前に位置しています

そのためR3の不応期に掛ったためAV伝導が出来なかっのではないかと推測できます

所謂、潜行伝導(Concealed Conduction)が起こってるのでしょうか

 

PR4の後に来るWenckebach型AV伝導時間延長は、SAブロックによりリセットされてPR0に戻っています

 

🔳最後に

この心電図は、SA伝導時間の延長によるPP間隔の短縮が1~5拍で起こり、短縮後にはSAブロックとなり、併せてPR間隔ではWenckebach型AV伝導時間延長も起きているということが推測できました

 

また、洞調律周期は113BPM=0.53秒と推定され、結構な頻脈と言う感じで、基本的な周期は一見53BPMと思われますが、RRインターバルや心拍数のトレンドグラフを見ると、0.53秒=113BPMと1.06秒=56BPMにプロットが多く集まっていて、日中の活動中だけとか睡眠中だけとかの時間や活動によるものではなく常に発生していることから基本周期が裏付けられると考えます

 

 

洞房ブロックのPP間隔変化の陰には、確かな洞調律あり

洞房ブロックのPP間隔変化を引き起こすその背景には、一定間隔の洞調律があります

洞調律による刺激が、洞房伝導時間遅延と途絶により洞房ブロックとなります

以前のブログでその原理を見てみました(下記参照)

 

 その背景には一定で発生する洞調律が潜んでいますが、今回はWenckebach型2度洞房ブロックにおいて洞調律の基本周期を探す方法について考えてみます

以下がWenckebach型2度洞房ブロックの模式図とラダーグラムです

 

 

図では、洞調律の基本周期T0です

始めに洞房伝導時間が少し遅延(t1)してP1、次にもう少し遅延(t2)してP2,さらに遅延(t3,t4)が続きP3、P4が出た後に洞房ブロックが発生してP5となります

各々のPP間隔をT1~T5とします

P4までの合計遅延時間をtとします

 

洞調律の基本周期T0を求めるのには、tを求める必要がありますが、心電図から見えるのはPP間隔 T1~T5だけです

では、tを使ってこれらを表すと

 T5 + t = 2×T0  です

tをT1~T5を使って表すと

 T5 + (T1-T0) + (T2-T0) + (T3 - T0) + (T4 -T0)  です

 

式を纏めると、

 (T1 +T2 + T3 + T4) + T5 = 6×T0

 T0 =( T1 +T2 + T3 + T4+5) / 6 

 

結局、T0はP0~P5までのPP間隔の合計をP波の数で除したPP間隔の平均値だったということになることが判ります(当たり前だと言われればそれまでですが)

 

これを一般化して書くと、

T0 = ( T1 + T2 + ・・・・・・ + Tn ) / n + 2

   n : 洞房ブロックが起きているP波の数

 

この式で、Wenckebach型2度洞房ブロックの洞調律の基本周期を求めることができますね

 

間欠的に発生する左脚ブロックー左脚の影?

24時間記録中に間欠的に左脚ブロック(LBBB)が発生したホルター心電図です

平均心拍 60BPMの洞調律で心室性期外収縮は散発、上室性心室性期外収縮は単発が頻発性です

 

 LBBBは、モフォロジー分類で総心拍数の約30%となり、夜間(睡眠時間帯?)に少し減少するものの24時間を通してほぼ発生しているようです

 

間欠的とは言え、ある時間帯に集中してる  とか生活中の負荷の大きさと関係してるとかでもなさそうで満遍なくでたりでなかったりの様相です

 

それでも、何らかの因果関係がどこかに見当たらないかと探してみると次のことが判りました

 LBBB波形が発生、消失するのは心拍数の急激な且つ微妙な変化で起きてるように見えます

つまりそれが先行するPP間隔の急激な変化により起きるようです

 

心電図を見てみると、

・通常QRS波形のPP間隔がPP:0.92秒

・LBBB波形になる時のPP間隔はPPL:0.86秒、

・LBBB波形が続く時のPP間隔はPLPL:0.92秒、

・LBBB波形が通常QRS波に戻る時のPP間隔はPLP:096秒、

これは、PPL < PP=PLPL <  PLP という関係になり、洞調律のPP間隔の微妙な変化がLBBBを引き起こしていると言えます

 

ではなぜこのような現象が起きるのでしょうか

 

先に見たように、PP間隔とLBBB発生/消滅に因果関係があるようで、PP間隔が先行する通常QRS波形のPP間隔より短くなるとLBBB発生し、先行するLBBBのPP間隔より次の通常QRS波形のPP間隔が長くなるとLBBBが消滅する、と言うことです

LBBBの原因としては、

  • 刺激伝導系 ⇒ 左脚伝導の遅延/途絶
  • 心室筋自体 ⇒ 左室心筋興奮の遅延

などが考えられますが、PP間隔が関係してくると言えば可能性が高そうな、左脚の遅延/途絶、つまり「不応期」について考えてみましょう

 

ラダーグラムは下図のようになります

何らかの原因で左脚の不応期が延びていた又は途絶してたとします

不応期の期間に次の刺激が来ると、右脚ではそのまま伝導しますが、左脚では伝導に時間が掛かったり伝導しなくなるので、心室の興奮は右室側から左室側へと伝導するLBBBとなります

その後、LBBBが連続する場合はPP間隔が元に戻った(PP間隔が延びた)としても不応期はさらに延びて左脚の伝導は遅延/途絶が継続してるものと仮定できます

次に、この不応期より長いPP間隔が来ると左脚枝の伝導は遅延せず通常のQRS波形に戻り左脚の不応期も元の状態に戻るのだろうと推測されます

 

PP間隔の変化によって引き起こされる左脚ブロックは「心拍数依存性左脚ブロック」が思い浮かびますね

 

上記の推測している項目については今後掘り下げて考えてみたいと思います

 

 

大動脈圧拍動による心電図変化の謎?

なかなか見ることのない、ホルター心電図に出会いました

75才、女性、深夜午前0時付近で10数分間だけ顕著な波形変化を起こしていました

それも2チャンネル誘導中、CH1だけに起きた変化でした

PVC、PACともに散発性で洞調律による右脚ブロックがドミナント波形でした

 

最初、ST上昇かと思いましたがよく見ていくと何か変だな? と言う感じがしてきませんか

それが下図です

  

2チャンネル誘導

  CH1:CM5誘導        CH2:NASA誘導

どのようにしてこの現象が起きてそれが何なのかを見て行こうと思います

 

1.心電図波形

ドミナント波形は、約60BPMの洞調律でQRS幅 0.14Sの完全右脚ブロックです

 

この波形変化はCH1誘導だけに、24時間中に1回だけ起こり、筋電図様のノイズと基線の少しの揺らぎが混入しながら発生し、10数分後に同様な経過で消失しています

 

これ以外の時間の心電図は、不整脈もST-T変化も特にはありません

  

 

 

2.最初に思いつくことは?

 まず目につくのは、ST-Tの上昇とT波の変形ですね

 STは約1.5mV~2mV位上昇し、T波はそのまま頭をちょっとだけ出してるような感じに見えます

 

 何が原因と考えられるでしょうか

 ①ST上昇とすれば左室前壁あたりの急性の心筋梗塞か或いは異型狭心症?

 ②T波前後の基線がそのまま上昇してるから、スパイクヘルメットサイン?

 ③特異性のない変化で拍動に同期したアーチファクト?

 ④これ以外の何か生体由来のもの

 

取りあえずこんなことが考えられますね

 

3.よく考えてみると

 ①ST上昇変化かな

  CH1の波形をよくよく眺めていると

  上昇の形状が心筋梗塞のようなものとは何か違う感じがしませんか

  基線の上昇がST接合部より少し後ろ側から発生し、ある高さまで来ると平坦となり、波形状もそのまま維持し、T波の少し後に基線以下まで下がり基線に戻る、と言う変化ですね

  梗塞ならばST接合部から凸型又は凹型傾斜で上昇するはずですが、ST接合部よりちょっと遅れた位置から直線的に急傾斜で上昇してますね

  そしてT波の前後は平坦でやや傾斜が付いて下降気味

  T波ははっきり見えてます

  その後同程度の傾斜は基線より下まで下降し、P波手前まで緩やかに基線に戻る、と言うような形状変化が見られます

  これはT波の前後だけにオフセット(直流成分の変化)が乗ってるような変化です

  これはやっぱりなんか変でしょう?

 

②次に、スパイクヘルメットサインですが、

  以下の様な波形がそれなんですが、R波に同期して基線がある区間だけ平坦に持ち上がるのはよく似た特徴ですが、これはR波の前後がその影響を受けるんですね

 

 

スパイクヘルメットサイン

(「心電図.com」より引用 ↓ )

spiked-helmet signとは? | 心電図.com

 

 

これは腹腔内の異常による重症度マーカーになっているような危険な波形なんですね

今検討している波形はT波前後にオフセットがあるので、明らかにこれとは違うと思われます

 

 

③では、アーチファクトでしょうか?

 変化の周期はR波に同期してるし、ノイズのランダムさもないし、周波数成分が混じってるようでもないし、T波の前後で矩形のパルス波が乗ってるようにも見えるし・・・

 所謂測定系以外から飛び込む誘導性のノイズ(交流や電波障害など)や測定系で発生するインピーダンス変化系のノイズ(基線動揺、基線飽和、電極ノイズなどの機械的ノイズ)とは違いますね

 

④残るは、生体から発するノイズ?

 R波に同期していて、尚且つT波区間だけ持ち上がるような生体の動きって何でしょうか

 

 そうです、動脈圧の変化がこの波形変化に一致してるように見えませんか?

 

 早速、この波形を大動脈圧の波形と比べてみましょう

 それが下図です

 

 

(心周期の血行動態図「循環器用語ハンドブック」から転載しています)

 

 図の中段に書いてあるのが、今問題にしている心電波形です

 R波とT波をそれぞれ一致させてみると、ST接合部のちょっと後から立ち上がるのが動脈圧上昇開始(駆出開始)時点で、T波頂上で動脈圧最大、T波の後ろまできて圧が下降し始めています

 大動脈圧の変化に一致してることが判りますね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4.波形変化の原因

 

 ではなぜこれが心電図上に現れてきたのでしょうか

 

 波形の変化は、T波の前で基線から直流的に電位が上昇して平坦となり、T波の後ろで基線の下まで下降しその後基線に戻るという動きをしています

 これを電気的に見ると、心電波形の下に書いたパルス状の電位の変化(矩形波)が心電波形に重畳してることが判ります

 これが心電波形の測定回路を通ると微分特性のため時定数により、パルスの平坦な電位は波形上に傾きが生じて所謂オフセット電位となりこのような心電波形が現れます

 

 ではこの矩形波はどこから出てきたのでしょうか

 生体の中、大動脈に関係してるのでは?と考えるても、このような高い電位の矩形波はどこからも出てきそうもありませんね

 

 とすると、これだけの高い電位は生体内からと言うより大動脈の動きに対し機械的に作用して発生したと推測した方がよさそうです

測定系で考えられるのは、皮膚上の心電図電極が一番怪しいですね

 

 これが、大動脈の周期に合わせてパルス状の直流電位を発生させている

電極が大きな直流電位を発生するのは、分極が起きている時が殆どでしたね

 

 つまり、皮膚上に貼った電極が動脈圧の変化(おそらく拍動によると思われる)に応じて分極電位を変化させ矩形波を作り出し、心電図波形に重畳した、と言うことになるでしょうか

 

 CH1だけに現れて、CH2に現れないということは上記の現象を裏付けていると思われます

 CH1はCM5誘導なので、+(胸部誘導V5の位置)か ―(胸骨柄)のどちらかで拍動を拾っていると思われますが、現有の知識ではどちらかですと言えないのが残念です

もっと勉強しなくっちゃ!

 

 

ST変化をホルター心電図ではどう見るか(解析編)

前回のブログでは、ST変化がどのように起きるのか(原理編)を見てみました

今回は、STレベルの変化をホルター心電図解析ではどのように捉えるかについて見ていきたいと思います

 

1.心疾患のホルターの診断基準

 

慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版)によれば、ホルター心電図の「ST変

化の判定基準」としての記載について要約すれば次のようになります

 

(1)ST低下は基準線に比し,

  ① 0.1 mV以上の水平または下行傾斜型のST下降を示し,

  ② 最大ST下降に到達するまでに1分を要し,

  ③ 0.1 mV以上の ST下降が30~60秒以上持続する,

 

(2)ST上昇はQ波 のない誘導で

  ① 0.1 mV以上のST上昇が30~60秒以上持続 する場合である.

 

ST 低下の計測は「S点またはJ点より0.08秒後の時点で行い,J 型のST低下は虚血性ST低下とは判定しない.」

と、なっています

 

*ST変化の計測およびグラフ変化の形状ついては、以下の「ST変化 原理編」を参照してください

 

実際には施設によって判定基準が異なってるようですが、以上のように記載されている点については STスロープの型、ST最小値までの時間、その継続時間等について見ていく必要があるようですね

 

ホルター心電図解析では、装置の性能上 基準点はPQ電位にして、計測点はR波ピークから時間設定となっているようです

装置によっては、基準点と計測点を手動で可変できるもの、可変できないものがあります

特に2次性変化(後述)の場合は、

可変できるものは、必要に応じて手動で可変して計測値の精度を確認できますが、可変できないものの場合は、計測値は相対的な変化として捉える必要があります

 

2.ST変化の要因による区別

(1)1次性、2次性変化

ST変化が起きる原因は、冠動脈疾患、肥大化、炎症などにより器質的に心筋に異常をきたすためであったり、また心筋以外からの他の要因で機能的に心筋が影響を受けて異常をきたす場合も考えられます

心筋自体又は外部要因による心筋の電気生理学的変化によって生じるST変化を「1次性変化」と言います

ここで取り上げているのは1次性変化の方ですね

 

また、ST変化は心筋の再分極過程の変化によって起こるので、脱分極過程が変化するとSTも変化することになります

これを「2次性変化」と呼びます

主なものに、脚ブロックや変行伝導、心室内伝導障害、デルタ波、Vペーシング等で起こり、虚血の診断が極めて難しくなるといわれています

また、薬の影響で起きるST変化も機能的という意味で2次性変化とみていいのだろうと思います

 

(2)偽陽性変化

ST変化が、器質的にも機能的の要因で起きるのでなく起こる場合です

言ってみれば、「有意性のないST変化」でしょうか

主には、体位変化、頻脈、Ta波、アーチファクトによる変形があり、ホルター心電図では心電図の誘導数が限られ、また基線変動が大きいことからその区別が難しいことが多いと感じています

解析装置では、偽陽性変化によるST変化と判断した区間削除又は1拍毎に削除する機能があります

しかし、有意のあるST変化、或いは症状のある時間帯のST変化の時には往々にして体位変換や体動等により基線にアーチファクトが混入しやすくなるので、その判断が難しくなる場合があり注意が必要です 

 

3.ホルター心電図ではSTをどのように解析するか

 

(この章の下方に解析例を参照)

 

ホルター心電図の解析装置にはSTレベルを解析するための各種機能が備わっています

基本は実波形(拡大波形)を見ることですが、これによりST変化発生を探しやすくするための機能です

この様な機能がすべての解析装置で同様に備わっているわけではなくて、機種によってその違いがあります

 

心拍数とSTレベルのトレンドグラフはどの解析装置でも標準搭載されていると思いますが、更にSTスロープ(傾斜)やスーパーインポーズ(重畳)表示機能が有れば、より細かな解析が可能となります 

また(3種の解析装置しか使ったことがないのでよくわかりませんが)解析装置によってはより詳細なST解析機能を備えたものがあるようです

 

(1)トレンドグラフ

 

①ST変化がどのように表現されるのか

計測値の経時変化(横軸に時間、縦軸に計測値)を表すのがトレンドグラフです

ST解析に使うトレンドグラフには、心拍数、STレベル、STスロープなどがあります

基本はSTレベルに対して心拍数を対応させ、STレベルの変化に対して日常生活中の負荷の程度を参照することができます

また、STレベルの上昇や低下の経時変化によりトレンドグラフには凹凸の形が生じ、その増減の変化の仕方によって形状が異なってきます

さらに、ST接合部からの計測点までの変化を表すSTスロープ(傾斜)を見ることにより、その変化が上昇型か下降型か等を知ることができます

 

②STレベルトレンドグラフ変化の形状を知る

 トレンドグラフの変化には、

   STレベルが上昇 → 凸型

   STレベルが低下 → 凹型

 があります

 更にSTレベル増減の変化する速さによって

   増減が急激 → ボックス型

   増減が緩徐 → U/逆U字型

 に分類できます

 

 心疾患に有意なST変化は急激には起こらず徐々変化してくるので、にボックス型ではなくU字型と言われています

 ボックス型は、急な体位変換や急激な心拍数変化によることが多いとも言われています

 

そして、日常生活中の負荷具合、或いは心拍数変化との時間関係も重要な要素になってくるので、心拍数トレンドグラフの変化との対応にも注意が必要です

つまり、有意の(労作性狭心症など)ST変化は心拍数の変化と同時に起きるのではなくて時間的に少し遅れて(タイムラグ)始まり心拍数の変化に遅れて戻る、U字型とも言われています

逆に、体位変化や洞性、上室性頻脈等の心拍数変化に対応するST変化は、心拍数変化と同時に急激に変化するのでボックス型となることが多いと言われています

 

③STスロープ トレンドグラフ

STスロープ(傾斜)は、ST接合点と計測点の単位時間の電位差、㎷/Sでつまり傾斜を測定していることになります

 

STレベルの上昇や低下において、その変化の仕方で傾斜が違って、ST接合部が計測点と同じであれば0電位、上方になればプラスつまり上昇型、逆に下方になればマイナスつまり下降型となります

冠動脈疾患のホルター検査ガイドラインに「0.1 mV以上の水平または下行傾斜型のST下降を示し」(上記)とあるように、このSTスロープの型が有意性の判断の必要となってくるので重要なファクターでもあります

 

(2)スーパーインポーズ(重畳)表示

ST変化をトレンドグラフではなく原波形そのもので表現する方法があります

R波頂点を起点に一拍毎に重ねて表示する方法です

実波形が時間的にどのように形状変化するその様子がはっきりとわかるので有用な表示です

 

4. 実際のトレンドグラフを見てみる

それでは、実際のSTレベル変化とその解析を見ていきましょう

 

(1)STレベル低下

 

  ■STレベル・スロープ トレンドグラフ

 

  ■スーパーインポーズ波形とトレンドグラフ

 

 

このST変化はCH1で見ると、心拍数の上昇に伴って一過性で大きく低下が起きています

この変化を詳細に見ていくと以下のことがわかります

  ・心拍数は60BPMから100BPMまで上昇  

  ・STトレンドグラフの型は、ST低下による凹型でU字型変化

  ・低下継続時間 7:48頃~8:03頃までで

  ・最大低下時刻    7:56

  ・最大STレベル変化 -0..17 mV

  ・心拍数上昇とのSTレベル変化の時間差(タイムラグ) -2分ぐらい

  ・重畳表示によるSTレベル低下と下降型スロープ(傾斜)

  ・最大STスロープ(下降型) ー1.5mV/S

 

このことからこのST変化は、心拍数の上昇に伴うST低下、つまり労作性の狭心症が強く疑われることになります

 

 

(2)STレベル 上昇

 次に、STレベルが上昇する事例を見てみましょう

 

 ■STレベル・スロープ トレンドグラフ

 

STレベルトレンドグラフ変化の型が凸型で、0.1mV以上大きく上昇変化するのは、2回ほどあり数分間継続してるようですね

(2回目のSTレベルトレンドグラフで計測値が途切れているのは、その付近で基線にアーチファクトが混入してるとみなしたためその時間の計測値を削除してることによります)

1回目(19:40頃)は心拍数が増えた後低下し始め、それと共にCH1のSTレベルが上昇、トレンドグラフは凸型で逆U字型、スロープは凸型でタイムラグもある

2回目(11:20頃)は心拍数が上昇(むしろ下降している)していないのにSTレベルが上昇していて、トレンドグラフは凸型で逆U字型、スロープは凹型

ここで特徴的なのは、心拍数の増減とSTレベル変化があまり関係ないように見受けられます

 

2回目のST変化を詳細に見ていくと以下のことがわかります

  ・心拍数は75BPMから60BPMまで低下  

  ・STトレンドグラフの型は、ST上昇による凸型で逆U字型変化

  ・上昇継続時間 11:21頃~11:24頃までで

  ・最大上昇時刻    11:23

  ・最大STレベル変化 0.22 mV

  ・STレベル上昇は凹型スロープ(傾斜)

  ・最大STスロープ(凹型下降部) ー1.6mV/S

 

これらのことから、このSTレベル上昇変化は一過性の安静時の狭心症、いわゆる異型狭心症が疑われる例ですね

 

5. 診断精度と有効性

 

ホルター心電図のST解析の精度と有効性については、慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版)に詳しく書かれていますので、以下に抜粋しておきます

 

「ホルター心電図による冠動脈病変の診断感度と特異度はそれぞれ62%および61%であった.

これらはトレッドミル運動負荷心電図の診断感度(67%)と 特 異 度(75%)よ り 低 かった」

とは言え、

「慢性冠動脈疾患におけるホルター心電図検査の目的に適した疾患ならびに病態は、冠攣縮性狭心症、冠動脈有意狭窄の判明している労作性狭心症や無症候性心筋虚血例で
ある」

「ホルター心電図では,虚血性変化の診断,日常生活における一過性ST変化の頻度,その出現時間帯,ST下降度,心拍数との関連,あるいは,いかなる状況において出現し
たか,などを知ることが可能である」

「発作時心電図による確定診断にはホルター心電図が有用である」

「冠攣縮性狭心症で胸痛を伴うST変化が確認されるのは20~30%程度であり,無症候性冠攣縮が多く存在する」

「ホルター心電図は診断後の治療評価にも用いられる」

「本疾患における一過性心筋虚血のほとんどは深夜から早朝にかけて発現し,その心電図変化をとらえるにはホルター心電図がもっとも有力な方法であり,ホルター心電図適応の最たる疾患と考えられる」

 

というように、診断精度については今一つという感じですが、長時間にわたる一過性の変化や生活中の出現状況に把握には最も有力な方法と言われているので、その利点や欠点を見極めながら使用する必要が有ると言えますね

 

この後は、実際のホルター心電図に見られたST変化の例を取り上げてみたいと思います

 

 

 

ST変化の謎を覗いてみよう(原理編)

ホルター心電図は不整脈のようなリズム解析が得意ですが、一方冠動脈疾患や心筋疾患による心電図の波形形状変化の検出にも、特に一過性の変化の検出に有効であろうと思われます

そこではST接合部やT波の形状(大きさ、増減、伸縮など)変化をどの様に解析するかがポイントとなってきます

その場合でも、先ず心電図のST変化がどのように起こるかについて知っておく必要があるので始めにその原理について見ていきましょう

その後、ホルター心電図で行うST解析について見ていきたいと思います

 

1.ST変化とは?

1)形状変化

ST変化とは、QRの終端又はS波からT波に到る接続部分をST接合部と言い、そこからT波までの間で種々の原因により形状変化が起こることを言います

変化には、その高さ(上下)、長さ(伸縮)、形(凹凸、傾き)などがありますが、主には、そこが基線より上に又は下にずれ、どのような形になるかが注目されます

上下のずれの大きさは、電位(mV)又は大きさ(mm)で表され、STレベルとも呼ばれています

形の変化には、上昇、下降、凹型、凸型などがあります

 

2)心筋の変化

ST部分は、心筋細胞活動の脱分極が起こりプラトーが終わるまでの、第0相から第2相に対応する部分です

心筋が虚血(可逆性の変化)、傷害や梗塞(壊死)により傷害されると細胞活動の各相の細胞電位、継続時間、曲線の形状変化などが起こり、その状態に応じてST部分が上昇、低下及び形状変化することになります

これは主に、虚血や梗塞、炎症或いは肥大化によります

 

2.STレベルの計測方法

ST部分を計測するということは基準点に対しその上下変化の大きさを、つまりSTレベルの計測となります

計測の基準点の考え方には2つほどあるようです

一つは、前のT波の終わりから次のP波までの基線としますが、

もう一つは、ホルター心電図で多く採用されているPQ間の基線を基準点とするもので、

これは基線変動などが少ないことや検出精度の問題から採用されてるようです(聞いた話ですが・・・)

 

計測点については下図を見てみましょう

S波の終端とT波が始まる基線の接合点がST接合部となります

(R波頂点から大体80mS位先の点)

そこからT波側に80mSの点がSTレベル計測点となります

(接合部から大体80mS先の点)

この基準点と計測点の電位差(mV)をSTレベルとしています

(通常記録紙上1mV=10mmに採っているので、STレベル1mVの変化は1mmの変化となります)

 

形状変化については代表的なものを図示しています

 

                            図 ST計測点

 

3.ST部分の形状変化と主たる病変

ST部分の形状変化の観点から、その変化と主たる原因は以下の様に分類されます

 

大体は、虚血の場合ST低下、梗塞の場合はST上昇し、傷害の程度により形状の変化が起きるものと理解しています

 

1)ST低下

ST低下は主に心内膜側の虚血によって起こります   

  • 原因:心筋虚血、心内膜下梗塞、心室肥大
  • 変化型:上昇型、水平型、下降型

 

2)ST上昇

ST上昇は主に心筋の梗塞によって起こります

異型狭心症は、虚血でありながらST上昇を起こすため「異型」と呼ばれるのだと思います

  • 原因:急性心筋梗塞、急性心膜炎、心筋症、異型狭心症
  • 変化型:上方凸型、水平型、下方凸型

 

4. ST部分の形状変化を心筋細胞の変化から考えてみる

では、ST部分の形状変化がどのように起きるのか、心筋細胞活動電位の点から考えてみましょう

(以下に書かれたことは、既知の知見を基に心電図変化の機序を演繹的に個人が推測してるものですので、内容に憶測、独断、飛躍、曖昧さなどが含まれていることを承知の上読んでください)

 

心筋活動による細胞の電流変化と心電図変化、及びその測定回路は下図のようになります

その詳細については、以前のブログ「T波の機序・・・・・」を参照して下さい

 

 

 

話を簡単にするため、イラストで書いてあります

 

                              図 ST原理 

 

1) 心筋細胞と計測回路

心筋を心内膜側と心外膜側の2つの細胞とみなしその両端に計測回路をつなぎ、細胞の電流変化を電圧に変換しています

その出力が心電図となります

その時、細胞から計測回路までの間には等価的に微分回路(低域遮断フィルター)を形成していると考えられ、回路直前にそれを入れてあります

微分回路は直流成分を通さず変化分だけを通すので、電流変化のないところでは電圧変化は0電位となるので細胞電流の変化と出力の電圧変化では直流部分では波形に差が出てきます

 

心筋細胞の興奮は心内膜側から脱分極し心外膜側へと伝播します

この時の細胞電位の変化が電位差となって電流が流れます

 

(a)は通常の細胞電位の変化による電流と電圧の変化です

心内膜側から脱分極を始め心外膜側に向かい、その後再分極は心外膜の方から早く始まります

この時、図のように時間のずれで細胞間に電位差ができます

脱分極開始の第0相では内膜側から外膜側に向かって矢印のように電流が流れるのでそのままの電圧変化が現れR波となります

第2相のプラトーでは電位差がないので基線になります

第3相の再分極過程では、心外膜から先に電位が減少するので電流は心内膜側の電位が高くなり電流は心外膜側に向かって流れます

0相の時より変化が小さく時間も長いので図のような形となり電圧変化はT波となります

 

2) STレベルの低下

では、STレベル低下における心筋細胞の活動電位について見ていきましょう

ST低下は殆どが心筋内膜部の虚血によるとされています

虚血の心筋の活動電位は、非虚血の心筋に比べ第4相の分極状態で通常より電位が上昇し基線が上がった状態で、脱分極電位は通常より電位が低くなり、第2相のプラトー時間が短くなる、と言われています(図(b), (c), (d))

 

と言うことは、細胞の活動が通常に比べて活発ではなくなるというイメージですよね

 

脱分極前の分極状態では内膜側が外膜側より電位が高く電流は内膜側から外膜側に流れた状態となります

この直流電位が計測回路を通ると電位は上がってますが電位変化はないので出力電圧は基線状態となります

第0相脱分極後の第2相プラトーでは、心内膜側の電位が心外膜側より小さくなるため電流は心外膜側から心内膜側に流れることになります

これは、先ほどとは逆の方向に電流が流れることになるのでマイナスの電流となり、電圧は基線より下がりST低下となります

第3相の再分極過程では、心内膜側が電位が大きいので通常状態と同じように電圧はプラス側となりT波を生じます

第4相の分極状態では、心内膜側の電位が高く心内膜側から心外膜側に電流が流れ基線が上昇したままとなるが、計測回路で電圧は基線に戻るようになります

 

そこで、ST低下の上昇型(図(b))、水平型(図(c))、下降型(図(d))はどのように発生するかは図のように考えることができるでしょう

 

プラトー期間の心内膜と心外膜の電位差が、上昇型では徐々に小さくなるような傾き方、水平型ではほ電位差が変化しない状態、下降型では電位差が徐々に大きくなるような変化によって、つまり心内膜側のプラトー電位の傾き(心外膜側との電位差)とプラトー相の継続時間によってST低下の型が決まると推測されます

 

3) STレベルの上昇

ST上昇は、水平型、上方凸型、下方凸型の3種類あるとされています

ST上昇は心筋の慣壁性梗塞又は虚血によると言われていますね

心筋の活動電位を見てみましょう

図(e)を見てください

これは上方凸型のST上昇ですね

 

心筋が慣壁性に傷害を持つた部分はその外側の心筋に比べ電位が低くなるので、分極状態では電位が通常より低くなり基線より低い電位となります

心内膜側の電位は心外膜側より低いので心外膜側から心内膜側に向かって電流が流れるので電圧はマイナスとなり基線より下がることになります

但し電流は微分回路を通るので定常状態では基線になっています

脱分極第0相からプラトー相にかけては、心外膜側は心内膜側に比べて電位が小さくなるので、プラトー相では心内膜側から心外膜側に向かって電流が流れ、時間と共に大きくなっていくのでその電圧はST部分では上方へ凸に上昇する形となります

 

ST上昇の下方凸型や水平型は同じように考えれば、心内膜と心外膜のプラトー相の電位と傾きやその継続時間によってその型が決まることは、ST低下の場合と同じですね

 

ST上昇については、その現象のより詳しい検討を後日にしてみたいと思います

 

 

 

代償性休止期の期外収縮かと思えば連結期がばらばら? 副収縮かな

ちょっと目面しい波形に出会いました

期外収縮のようで何となくそうでもなさそう

その起源はどこ?

下の図です

 

 

 基本は83bpmの洞性周期です

 これに6秒に一回ぐらい期外収縮が起きてます

 

その起源は?と眺めると、心室性? 上室性?

 

 

 

 

 

*期外収縮の発生個所推定のラダーグラムについては以下のブログに細かく検討してるので参照してください

 

では下図のラダーグラムを使ってよく見ていきましょう

ラダーグラムの期外収縮の扱いは、取りあえず心室起源で、逆行性VA(室房)伝導時間はPQ間隔と同じ時間と仮定しています

 

下図のようになって、そうすると次のことが分かってきますね

  • 休止期は代償性?
  • 期外収縮期の連結期が一定ではないね
  • 期外収縮の発生間隔が整数倍のように見える
  • QRST形状が上室性起源に近い?

 

細かく見ていきましょう

  • 代償性休止期のように見えているが?

期外収縮の休止期がPP間隔をリセットしない代償性になっているということは、先行する洞刺激が期外収縮からの逆行性刺激伝導(VA伝導)によってリセットされず洞刺激周期が継続してるということですね

つまり、洞刺激による順行性刺激伝導(AV伝導)は期外収縮からVA伝導による逆行性刺激により影響を受けないということです

これを現象としてみれば、VA伝導は洞結節までの伝導路途中で刺激が消滅する、つまり両方向からの刺激が伝導路途中で衝突(Conflict)して刺激が消滅するということななります

 

ラダーグラムによれば、房室結節接合部の途中で衝突が起き、AV伝導とVA伝導開始の時間差が大きいほど接合部の下方で衝突が起きることになります

 

  • 連結期が一定でなくばらついてるが?

  期外収縮は一般的には、波形が同じであればその起源は同時であろうとされ、その連結期(期外収縮のR波とその直前のR波の間隔)も同じであろうとされています

  この心電図では、各々の期外収縮のR波形状はほぼ同じなので(q波、s波にP波が重なっている場合は少し違っています)、連結期は一定のはずですがここではばらついていますね

 

  • 発生間隔が整数倍で一定

なので、洞調律とは無関係に(周期的関連性を持たずに)発生してることが判ります、更に期外収縮のリズムを測ってみるとR′R′間隔の整数倍で発生してることも判ります

 

これは所謂「副収縮(Parasystole)」が起きているようですね

期外収縮のリズムはR′R′間隔の整数倍とはいえ、何故発生したりしなかったりしてるのでしょうか

 

下図のラダーグラムを見てください

 

 

  期外収縮R′が洞調律に影響を与えず発生できるのは図の通り、予想されるP波に対してその前後にとったPQ間隔の時間の範囲内であれば、刺激のAV伝導とVA伝導が房室接合部で衝突して消滅します

 

 

 そしてこの範囲以外で発生すれば洞調律に影響を与えることになります

この各伝導が衝突することができる期間 Conflict Period(CPと呼んでおきましょう)は、P波の時点を中心にその前後にPQ間隔時間の範囲となり、

 CP = P +/- PQ間隔

で表すことができますね

但し、VA伝導時間はAV伝導時間と同じということを仮定しています

ここではPQ間隔は0.18秒なので、R′R′の整数倍の時点がP波前後のCP内にあれば整数倍のR′が発生できます

それ以外の整数倍の所でR´が発生していないのは、R波直後からの不応期間中(図中「ERP(有効不応期)」約0.4秒)が生じるためと推測されます

 

しかし、先ほどの心電図中「02:24:12」にあるR′′を見てください

R′R′の整数倍の位置がP波の発生から0.18秒以内にあるのに拘らずR′が発生していません

これはどのように考えたらいいのでしょうか

ERPは終わっているのに期外収縮も発生していないようだし、この時だけ刺激がでなかった??

副収縮で活性化しているFocusから1回だけ刺激がでなかった、と考えるよりは刺激が出たが周辺に伝導出来ずR′として発生できなかった、と考える方が蓋然性が高いような気がします

幸いなことに、副収縮発生には「進入ブロック」と「進出ブロック」が存在することになっています

 

・「進入ブロック」(保護ブロック)は他からの刺激によって副収縮の刺激がリセットされないこと

・「進出ブロック」は刺激が他に伝導しないこと

 

なので、このR′′は刺激が発生したものの周辺には伝導できず「進出ブロック」が起きたと考えると話はうまく進みますよね

(なんだか、辻褄合わせの経験的な帰納法推論のような気がしますが・・・)

  • 副収縮の起源はどこから?

ホルター心電図は2チャンネル誘導なので起源推定が一層むづかしくなりますね

期限がどこかを推定するのに次のことを考えてみます

 ・期外収縮発生のタイミング

  ラダーグラムからわかるように、上室性や心室性のどちらでも成立します

 

  ・QRST波の形状

  CH1:CM5誘導については、その形状、波高値、R幅はほとんど同じ 

  CH2:NASA誘導では、R′波高値増高、s波減高に変化している

  ST陰性化はP波の影響と思われる

  このことから、心室性起源とすれば心室筋ではないHis束からプルキニエ繊維付近かなと

 

・電気軸

  R′では+90°近くまで右軸方向に傾きs波減高してるので、左脚後肢主体の興奮かなと思えます

 

以上のことを考えてみると、期外収縮はHis束から脚枝伝導へと通常の様に伝導してると思われるので、上室性でそれも房室接合部起源と推測できませんか?