2度房室ブロック(AVB)は、先行する洞結節による一定調律PP/RR間隔で、P波の後のR波が房室結節での伝導ブロック(途絶)により突然に1拍だけブロックが起き、RR間隔が延びるものですが、今回の心電図は2度AVBのように見えてそうもなさそうです
24時間全体を眺めてみると、洞調律P波に続くR波のブロックが起きる通常の2度AVBは見当たらず、P波に続くR波のブロックが無くてその代わりに、殆どがBlocked PACでまた数回のPVCによりR波がブロックされているようです
主な変化を起こしている心電図が下図です
PR間隔の長さが目立ちます
これに注目してみてみると、P波は一定PP間隔の洞調律ですが心拍数によってPR間隔は大きく変化してるように見えます
心拍数が100BPM越えると最小で0.2秒位、80BPMで0.3秒、70BPM以下になると0.8秒まで延びているようで1度房室ブロック(AVB)ですね(これだけ延びるのかな?って位延びてます)
PRが徐々に延びた後、或いは延びたままP波の次に出るべき洞性R波がブロックされてるので一寸見は2度AVBと見れますよね
洞調律によるRR間隔が延長するなかで、P波に続くR波が期外収縮だったり、P波がなく期外収縮のみだったり、RR間隔が2倍より短いなかでP波があってWenckebach周期がリセットされたりと、色々とバリエーションに富んでいるようですね
どのようなことが起きてるのかを見ていきましょう

1.上段の心電図(22:54:06)
中央にR0R1間隔で1.06秒の延長があります
この前後のPR間隔を見ると、その前P0R0では0.5秒で、その後P1R1では0.30秒、その後0.44秒と延長しています
これを見ると、元々0.36秒のPP間隔があるところに徐々にPP間隔が延長して0.50秒まで延びたところで次のR波が抜けて0.36秒の間隔に戻る現象です
PP間隔が その中でR波が突然なくなり元に戻る現象、これはWenckebach型2度AVBのように見えますね
なので、R0 とR1の間にP0P0間隔で発生するP波がどこにあるかと探しても見当たりません
よく見ると、そのようなP波ではなくR0のT波上にP’がありますね
P’P1の間隔を調べると、P0P0の基本的調律を基準とするPACのリターンサイクル(リターンサイクル = P0P0 + 2×洞房伝導時間)となってることが判ります
そしてその後に出るはずのR波がありません
するとこれは、Blocked PAC ですね
PR間隔のWenckebach型延長のリセットが、2度AVBによるR波のブロックによるのではなく、Blocked PACによってなされる現象が起きていることになります
2.中段の心電図(18:33:22)
こちらは先ほど同様P0P0が一定で0.84~0.86秒で、P0R0も0.28秒と一定です
途中P1の前でP0が一つ抜けて、その前後のPR間隔も一定の0.28秒です
そこにはP0の代わりにPVCと見られるものが有って、その後のRR間隔は代償性休止期になっています
タイミングを考えると、PVC発生とほぼ同時にP0がAV伝導しPVCの逆行性VA伝導と接合部で衝突し(赤い✖)刺激が消滅してるようです
これは、P波が出ているがPVCにより洞性R波がブロックされてることと見えます
3.下段の心電図(00:57:46)
こちらもP0P0が0.84秒で一定の調律ですが、PR間隔は徐々に延びていき0.84秒となった後、間入性のPVCらしきものがでてP0R0が0.36秒に短縮しています
これも一寸見、Wenckebach型2度AVBとみると、中の洞性R波がブロックされる代わりに間入性PVCらしきものがでています
このPVCは、その直前のP0とのタイミングを考えると、PR間隔から見てP0のAV伝導によるものではなさそうで、RR間隔の延長による補充収縮でQRS形状から見てPVCと推測できます
ではPVCの前にある2拍のP0はどうなってるのでしょうか
P0のAV伝導によるR波がないので、刺激がAVで途絶してると思われます
その機序は、1番目のP0のAV伝導の仕方の捉え方により、以下の様に2通り考えてみました
①ブロック(遮断)されたか ――― 図中 青色の矢印
②衝突(消滅)したか ――― 図中 紫色の矢印
P0R0が0.84秒まで延びた次のP0は、R波に隠れています
そしてそのP0P0間隔後に次のP0が発生しPVCが入って来ています
①AV伝導のブロック(遮断)の場合
1番目のP0はAV伝導路の潜行伝導によりブロック(遮断)され、2番目のP波はPVCからの逆行性VA伝導と衝突し(青色✖)刺激伝導が消滅しました
②AV伝導の衝突の場合
1番目のP0は伝導時間を延長したままAV伝導し、PVCからの逆行性VA伝導と衝突し(紫色✖)て刺激が消滅します
2番目のP0によるAV伝導は、AV結節が1拍目の伝導の不応期によりブロック(遮断)されて伝導できないことになります
以上のどちらの場合でも、PVCの逆行性VA伝導刺激とP0からの順行性AV伝導刺激が衝突して伝導を途絶させることで、延長していたAV伝導時間がリセットされ、次に発生するPR間隔は短縮して元に戻る、というWenckebach型AV伝導時間変化の機序が働いているのではないだろうかと推測します
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今回取り上げた3つの心電図について話を纏めると、
2度AVBのように見えるRR間隔の延長は、通常の洞性R波のブロックによるものではなくて、Blocked PACによるもの、代償性PVCによるもの、補充収縮PVCによるものが発生していました
殆どが、Blocked PACによるPR間隔のリセットですが、その前後のPR間隔はWenckebach型だったりMobitz2型でした
このような心電図を2度AVBと言えるのか、或いは1度AVBと言うのかははよくわかりません
それにしても、PR間隔が0.84秒まで延びるということがあるのですね
文献を調べると、0.3秒以上は顕著なAVブロックと言われるそうで、PR間隔が約0.6秒の報告が目づらしく、「1度AVB → 2度AVB → 3度AVB → 1度AVB」と変化した事例もあるようです
また、最長でも0.7秒位までは延長しうると言う識者もいました
なので、PR間隔が0.8秒はひょっとしてこれは見掛け上のPR間隔であって、実は推測したのとは異なる機序が働いているかも、 と言うことがあり得るかもしれませんね
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